中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2023年09月06日

  • 医薬品
  • 研究開発

クロバリマブ、生命にかかわりうる希少な血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬としてFDAが承認申請を受理

  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)において疾患コントロールと良好な忍容性を示したグローバル第III相COMMODORE 2試験の結果に基づく承認申請の受理
  • 承認された場合、クロバリマブは米国のPNH患者さんに対し、在宅での自己投与が可能な初めての4週ごとの皮下投与による治療薬となる
  • 日本、中国、欧州においても承認申請が受理されており、他国の規制当局に対する申請も進行中

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として開発中の新規抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブの生物学的製剤承認申請(BLA)を米国食品医薬品局(FDA)が受理したことをお知らせいたします。この申請受理は、PNH患者さんにおいてクロバリマブの疾患コントロールと良好な忍容性を示したピボタルな第III相COMMODORE 2試験の結果に基づいています1。また、クロバリマブの一貫したベネフィット・リスクプロファイルを示した第III相COMMODORE 1試験の結果も、申請を支持するデータとして提出されました2

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「当社の強みである抗体エンジニアリング技術を駆使して創製されたクロバリマブの承認申請が、日本、中国、欧州に加えて米国においても受理されたことを大変嬉しく思います」と述べるとともに、「クロバリマブは、在宅での自己投与が可能な4週ごとの皮下投与による治療薬となることを目指しています。長期に亘る治療を要するPNHにおいて、患者さんや介護者の方々のニーズにより柔軟に対応できる治療選択肢が増えることは大きな意義があります。世界各国のPNH患者さんに本剤をお役立ていただけるよう、ロシュと連携のうえ邁進してまいります」と語っています。

 PNHは生命にかかわりうる希少な血液疾患であり、世界で約2万人が罹患しています3。赤血球が自然免疫系の一部である補体系によって破壊され、貧血、疲労、血栓、腎疾患などの症状が生じます4。補体系カスケードを阻害するC5阻害剤はこの病態の治療に有効であることが示されています5。クロバリマブは、中外製薬のリサイクリング抗体®技術により抗体を繰り返し抗原に結合するよう改変した新規C5阻害剤であり、低用量で持続的な補体阻害が可能となり、4週ごとの皮下投与を実現しています6,7

 今回のBLAは、補体阻害剤による治療歴のないPNHを対象としたCOMMODORE 2試験の成績に基づいています。クロバリマブを維持期において4週間ごとに皮下投与した場合、2週間ごとに静脈内投与する標準治療薬のエクリズマブに対し病勢コントロールに関する非劣性が確認され、両薬剤間で安全性は同様でした1。本試験における有害事象(AE)は、クロバリマブ投与群の78%、およびエクリズマブ投与群の80%に発現し、最も多く認められたAEは注入に伴う反応でした1。BLAには、既存のC5阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんにおけるクロバリマブの良好なベネフィット・リスクプロファイルを支持する第III相COMMODORE 1試験のデータも含まれています2COMMODORE 1/2試験のデータは6月に開催された欧州血液学会(EHA)ハイブリッド会議で発表されました1,2

 PNHを対象とした国際共同第III相COMMODORE 1/2試験のデータは世界各国の規制当局への提出が進められており、日本および欧州では承認申請が受理されています。中国ではPNHを対象にクロバリマブを評価した中国における第III相単群COMMODORE 3試験の肯定的なデータに基づきBreakthrough Therapy指定による審査プロセス経由で承認申請が行われ、中華人民共和国 国家薬品監督管理局(NMPA)によって受理されるとともに、優先審査品目に指定されています。COMMODORE 3試験のデータは2022年の米国血液学会(ASH)総会で発表されました8

 クロバリマブは現在、PNHおよびその他の補体関連疾患に対する、5つの第III相試験と、より早期段階の3つの臨床試験を含め、広範な臨床開発プログラムが行われています1,2,8,9,10

【参考情報】
クロバリマブ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し国内で製造販売承認申請(2023年6月14日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20230614153000_1306.html

発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し、クロバリマブの皮下投与による病勢コントロールと良好な忍容性を示す新たなデータを欧州血液学会で発表(2023年6月12日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20230612170001_1305.html

クロバリマブ、生命にかかわりうる血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し、4週ごとの皮下投与により疾患コントロールを達成(2022年12月20日抄訳プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20221220163000_1267.html

COMMODORE 1、2試験について
 COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんを対象にエクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。本試験の二つの主要評価項目は輸血回避および溶血(LDH値により測定される進行中の赤血球破壊)のコントロールでした。本試験に登録された成人被験者*は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。18歳未満の被験者は記述的解析群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与されました11

  • *治験実施計画書改訂前に登録された18歳未満の2名を含む

 COMMODORE 1試験は、既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象にクロバリマブの安全性を評価するランダム化非盲検第III相臨床試験です。本試験はクロバリマブの安全性、忍容性、薬物動態および薬力学が評価されました。本試験にはエクリズマブによる治療を受けている18歳以上の患者さんが登録されました。非ランダム化群には、エクリズマブによる治療を受けている小児(18歳未満)の患者さん、ラブリズマブによる治療を受けている患者さん、エクリズマブによる適応外の用量(PNHに対して承認されている900mg/回より多い用量、2週間より高頻度での投与のいずれかもしくは両方)を受けている患者さん、既存の治療薬に対して効果が見られない特定のC5遺伝子変異を有する患者さんも含まれています12

クロバリマブについて
 クロバリマブは、中外製薬が開発したリサイクリング抗体®技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体®は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。クロバリマブは既存薬とは異なる部位でC5に結合することから、既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者さん(日本人PNH患者さんの約3.2%)において有効な治療選択肢となり得ます6,13
 現在、PNHのほかに、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)の開発を行っています。また、海外ではロシュが鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)、ループス腎炎に対して臨床試験を実施しています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
 PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です14。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和3年度末の医療受給者証保持者数は、959人でした15

 上記本文中に記載されたリサイクリング抗体®は、法律により保護されています。

出典:

  1. Roth A, et al. The Phase III, Randomised COMMODORE 2 Trial: Results from a Multicentre Study of Crovalimab vs Eculizumab in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) Patients Naïve to Complement Inhibitors. Presentation at European Hematology Association (EHA) Annual Congress; 2023 June 08-13. Abstract #S181.
  2. Scheinberg P, et al. Phase III Randomised, Multicentre, Open-Label COMMODORE 1 Trial: Comparison of Crovalimab Vs Eculizumab in Complement Inhibitor-Experienced Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemogobinuria (PNH). Presentation at European Hematology Association (EHA) Annual Congress; 2023 June 08-13. Abstract #S183.
  3. Grand View Research. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria (PNH) treatment market size, share and trends analysis report by treatment and segment forecasts, 2018 – 2025. [Internet; cited August 2023]. Available from: https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/paroxysmal-nocturnal-hemoglobinuria-pnh-market.
  4. National Organization for Rare Diseases. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. [Internet; cited August 2023]. Available from: https://rarediseases.org/rare-diseases/paroxysmal-nocturnal-hemoglobinuria/.
  5. Bektas M, et al. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: current treatments and unmet needs. Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy 2020; 26:12-b Suppl, S14-S20.
  6. Fukuzawa T, et al. Long lasting neutralisation of C5 by SKY59, a novel recycling antibody, is a potential therapy for complement-mediated diseases. 2017; Sci Rep 7, 1080.
  7. Nishimura J, et al. An Optimized Crovalimab Dose and Regimen Reduced the Formation of Drug-Target-Drug Complexes in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria From the Phase I/II COMPOSER Trial. Poster presented at: American Society Of Hematology (ASH) Annual Meeting; 2020 December 5-8; Atlanta, GA, USA. Abstract 1550.
  8. Liu H, et al. Results From the First Phase 3 Crovalimab (C5-Inhibitor) Study (COMMODORE 3): Efficacy and Safety in Complement Inhibitor-Naive Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH). Presentation at: ASH Annual Meeting and Exposition; 2022 Dec 10-13 Abstract #293.
  9. COMMUTE-p (NCT04958265). [Internet; cited August 2023] Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04958265.
  10. COMMUTE-a (NCT04861259). [Internet; cited August 2023] Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04861259.
  11. COMMODORE 2 (NCT04434092). [Internet; cited August 2023] Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04434092.
  12. COMMODORE 1 (NCT04432584). [Internet; cited August 2023] Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04432584.
  13. Nishimura J et al. Genetic variants in C5 and poor response to eculizumab. N Engl J Med. 2014 Feb 13;370(7):632-9.
  14. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.
  15. 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)衛生行政報告例 / 令和3年度衛生行政報告例 統計表 年度報(2023年8月アクセス)

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
  • 投資家の皆様
  • インベスターリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0554
  • mailto: ir@chugai-pharm.co.jp
  • Facebookのシェア(別ウィンドウで開く)
  • ポストする(別ウィンドウで開く)
  • Lineで送る(別ウィンドウで開く)
  • メールする(メールソフトを起動します)
トップに戻る