中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。
2021年12月10日
ポライビー、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対し適応拡大申請
- ポライビーとR-CHPの併用療法は、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する新たな治療として20年ぶりに標準治療と比較し有効性を示す
- 未治療のDLBCL患者を対象とした第III相臨床試験(POLARIX試験)の成績に基づく申請
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー®点滴静注用30 mg、同140 mg」[一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)]について、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL: diffuse large B-cell lymphoma)に対する適応拡大の承認申請を本日、厚生労働省に行いましたのでお知らせいたします。
代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「DLBCLは、非ホジキンリンパ腫の3割を占める最も多い病型ですが、R-CHOP療法以降、20年にわたり新しい治療法が登場してきませんでした」と述べるとともに、「ポライビーとR-CHP併用療法が、標準治療と比較し病勢増悪までの期間を延長したことは、未治療のDLBCL治療の転換点になり得ると考えています。この新たな治療レジメンを一日でも早く患者さんへお届けできるよう、承認取得に向け進んでまいります」と語っています。
今回の承認申請は、未治療のDLBCL患者さんを対象に、ポライビーとR-CHP併用療法とR-CHOP療法の有効性、安全性および薬物動態を評価したランダム化第III相二重盲検プラセボ対照試験であるPOLARIX試験(GO39942)の成績に基づいており、日本からも本試験に参加しています。
オンコロジー領域のリーディング企業である中外製薬は、革新的な医薬品によりがん治療におけるアンメットメディカルニーズを充足し、患者さんおよび医療関係者に貢献できるよう引き続き取り組んでまいります。
【参考情報】
ポライビーとR-CHPの併用療法、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象とした第III相臨床試験において標準治療と比較して有意な改善を20年ぶりに示す(2021年8月10日 当社プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210810113000_1137.html
POLARIX試験について
POLARIX(NCT03274492)は、未治療のDLBCL患者さんを対象に、ポライビーとR-CHP療法(リツキサン®[リツキシマブ]、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびプレドニゾン)の併用とR-CHOP療法(リツキサン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)の有効性、安全性および薬物動態を評価したランダム化第III相二重盲検プラセボ対照試験です。879人の患者さんを1:1にランダム化しました。
- ポライビー+R-CHP+ビンクリスチンのプラセボを6サイクル投与後、リツキサンを2サイクル投与する群
- R-CHOP+ポライビーのプラセボを6サイクル投与後、リツキサンを2サイクル投与する群
主要評価項目は、Lugano Response Criteria for malignant lymphomaに基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)です。POLARIX試験は、The Lymphoma Study Association(LYSA)およびThe Lymphoma Academic Research Organisation(LYSARC)共同で実施しています。
LYSAおよびLYSARCについて
The Lymphoma Study Association(LYSA)はリンパ腫研究を国際的にリードする協働グループです。新薬のヒトにおける最初の臨床試験から、参照すべき治療戦略の策定を目的とするものまで、幅広い臨床試験を実施しています。LYSAは、3カ国(フランス、ベルギー、ポルトガル)に分布する120以上のケアセンターとのネットワークを有し、多数の研究チームと国際的に協働しています。
Lymphoma Academic Research Organisation(LYSARC)は、LYSAの実行機関であり、リンパ腫に関する国際的臨床研究プロジェクトを実施しています。
ポライビー(ポラツズマブ べドチン)について
ポライビーは、ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体(ADC: antibody-drug conjugate)です。CD79bタンパク質は、一部の種類の非ホジキンリンパ腫(NHL: non-hodgkin lymphoma)に影響を与える免疫細胞であるB細胞の大部分に特異的に発現しており、新たな治療法開発の有望なターゲットとなっています1,2)。ポライビーは、がん細胞の細胞膜上に発現するCD79bに結合し、抗がん剤の送達によりこれらのB細胞を殺傷し、正常細胞への影響を抑えると考えられています3,4)。ポライビーは、Seagen社のADC技術を用いてロシュ社により開発されており、現在、数種類のNHLの治療薬として検討されています。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)について
DLBCLはNHLの中で最も多い病型で、NHLの約3分の1を占めます5)。DLBCLは進行の速い中悪性度のNHLです6)。一般的にはフロントラインでの治療に反応する一方で、約40%の患者さんが再発するか、難治性となるものの、その場合の救援療法の選択肢は限られており、生存期間も短いとされています6)。世界では毎年約150,000人がDLBCLと診断されると推定されています7)。
救援療法:主に造血器腫瘍において、治療の効果が得られない場合(治療抵抗性)、あるいは再発・再燃した場合に用いる治療を、救援化学療法もしくは救援療法と呼びます。がんの種類によって治療内容は異なりますが、その多くは複数の薬(抗がん剤など)を組み合わせた治療となります。救済療法、サルベージ療法と呼ばれることもあります8)。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
以上
[出典]
- Dornan D, et al. Therapeutic potential of an anti-CD79b antibody-drug conjugate, anti-CD79b-vc-MMAE, for the treatment of non-Hodgkin lymphoma. Blood 2009;114:2721-29.
- Pfeifer M, et al. Anti-CD22 and anti-CD79B antibody drug conjugates are active in different molecular diffuse large B-cell lymphoma subtypes. Leukemia 2015;29:1578-86.
- Ducry L, et al. Antibody-drug conjugates: linking cytotoxic payloads to monoclonal antibodies. Bioconjug Chem 2010;21:5-13.
- ADC Review. What are antibody-drug conjugates? https://adcreview.com/adc-university/adcs-101/antibody-drug-conjugates-adcs/[インターネット:2021年11月確認]
- World Health Organization Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. IARC Press; 2008.
- Maurer JM, et al. Event-free survival at 24 months is a robust end point for disease-related outcome in diffuse large B-cell lymphoma treated with immunochemotherapy. J Clin Oncol 2014;32:1066-73.
- Globocan 2020. World Fact Sheet. http://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/900-world-fact-sheets.pdf[インターネット:2021年11月確認]
- 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「救援療法」https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/kyuenryoho.html[インターネット:2021年11月確認]
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