中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2021年02月25日

ロシュ社、I型脊髄性筋萎縮症(SMA)乳児に対するEvrysdi(リスジプラム)試験結果のNew England Journal of Medicineへの掲載を発表

News Summary

本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が2月25日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2021-02-25.htmをご覧ください。

 ロシュ社は2月25日、症候性のI型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児を対象としたピボタル試験であるFIREFISH試験の用量設定パート(パート1)から得られたEvrysdi™(リスジプラム)のデータが、2月24日にNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたことを発表しました。Evrysdiの投与開始12カ月時点で、90%(19/21名)の乳児が人工呼吸器の永続的な使用を必要とすることなく生存、33%(7/21名)が最低5秒間支えなしで座位が保持可能なことが示されました。これらの所見は、本疾患の自然経過では通常みられないとされています。また、高用量コホートでは投与開始12カ月時点で、Evrysdiの投与により運動神経のSMN(survival motor neuron)タンパクレベルがベースラインから中央値で1.9倍増加していることが示されました。

 探索的な有効性解析の結果、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の粗大運動スケールの評価では、投与開始12カ月時点で、7名(33%、7/21名)の乳児が最低5秒間支えなしで座位が保持可能なことが示されました。本マイルストンを達成した7名の乳児全員が、本試験の検証パート(パート2)で選択された高用量(41%、7/17名)で投与されていました。またHammersmith Infant Neurological Examination Module 2(HINE-2)の評価では、投与開始12カ月時点で高用量コホートの9名(53%、9/17名)が首が座るようになり、1名(6%、1/17名)が立ち上がる(体重を支える)ことができるようになりました。

 低用量と高用量のコホートのいずれにおいても12カ月間にわたり嚥下能力を維持し、86%の乳児(18/21名)が12カ月時点で単独または給餌チューブと併用することで経口摂取が可能でした。また、投与開始12カ月時点で、90%の乳児(19/21名)が人工呼吸器の永続的な使用を必要とすることなく生存していました。3名の乳児が、それぞれ治療約1カ月、8カ月、13カ月の時点で致死的な合併症を経験しました。別の1名の乳児は、データカットオフ後の、治験薬の最終投与から約3.5カ月後に死亡しました。治験責任医師はEvrysdiとの関係は認められないと判断しています。

 また、I型SMAの乳児を対象として利用される尺度であるCHOP-INTEND(Children’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders)を用いて運動機能を評価しました。その結果、21名中11名の乳児(52%)のCHOP-INTENDのスコアが40ポイント以上改善しました。CHOP-INTENDの尺度範囲は0~64までであり、スコアが高いほど運動機能が良好であるということになります。

 最もよくみられた有害事象は、発熱(52%)、上気道感染症(43%)、下痢(29%)、咳嗽(24%)、嘔吐(24%)、便秘(19%)、肺炎(19%)などでした。全体では、臨床データのカットオフ時点で24件の重篤な有害事象が報告されました。最もよくみられた重篤な有害事象には、肺炎が3例、気道感染症、ウイルス性気道感染症、急性呼吸不全および呼吸窮迫がそれぞれ2例、含まれています。

 FIREFISH試験のパート1に登録している乳児21名について、解析時点の治療期間の中央値は14.8カ月でした。登録時の年齢の中央値は6.7カ月であり、症状の発現は生後28日から3カ月の間でした。

【参考情報】
リスジプラム、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初の経口薬として国内で製造販売承認申請(2020年10月15日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20201015170000_1032.html

リスジプラムが脊髄性筋萎縮症に対する希少疾病用医薬品に指定(2019年3月27日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20190327150001_831.html

FIREFISH試験について
 FIREFISH試験は、I型SMAの乳児を対象とした2パートからなる非盲検のピボタル試験です。パート1(21名)は乳児におけるリスジプラムの安全性プロファイルを評価し、パート2における用量の決定を主な目的とした、用量漸増試験です。パート2(41名)は、リスジプラムを2年間投与した後、非盲検下継続投与期間に移行する、ピボタルな単群試験です。パート2の登録は2018年11月に完了しました。パート2では、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の粗大運動スケールで評価した、投与開始12カ月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合を指標として、有効性の評価を行いました。
 ロシュ社は、SMA財団およびPTCセラピューティクス社の協力のもと、リスジプラムの臨床開発を進めています。

リスジプラムについて
 リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製された、経口投与が可能な臨床開発中の薬剤です。運動神経および筋肉機能をよりよくサポートするために、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生が増加するように設計されています。2020年8月に米国で承認を取得しています。欧州ではオーファンドラッグ指定を受け、2018年12月には欧州医薬品庁(EMA)より、SMAの治療薬としてPRIME(PRIority MEdicines)指定を受けています。日本では2019年3月に希少疾病用医薬品指定を受け、2020年10月に製造販売承認申請を実施しています。

脊髄性筋萎縮症(SMA)について
 SMAは、遺伝性の神経筋疾患であり、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示します1。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患です2。乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人です3。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患です4

出典:

  1. Farrar MA and Kiernan MC. The genetics of spinal muscular atrophy: progress and challenges. Neurotherapeutics. 2015;12:290-302.
  2. Cure SMA. About SMA. 2018. Available from: https://www.curesma.org/sma/about-sma/. Accessed February 2021.
  3. 難病情報センター. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/. Accessed February 2021.
  4. Kolb SJ and Kissel JT. Spinal muscular atrophy. Neurol Clin. 2015;33:831-46.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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  • Tel:03-3273-0554
  • mailto: ir@chugai-pharm.co.jp
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