中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2020年12月09日

エンスプリング、視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬として台湾で初めて承認を取得

  • 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対して、台湾で初めて製造販売承認された治療薬
  • 成人および青年期の視神経脊髄炎スペクトラム障害に対する皮下注製剤
  • 中外製薬独自のリサイクリング抗体技術を初めて適用
  • 2本の国際共同治験で、NMOSDの再発リスクを有意に減少

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:小坂 達朗)は、当社の100%子会社である台湾中外製薬股份有限公司(本社:台北市、董事長:陳 栄華)が、当社創製のEnspryng®について台湾衛生福利部食品薬物管理署(台湾FDA)より、「成人および12歳以上の青年期の抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)」について輸入販売承認を取得したことをお知らせいたします。

 代表取締役社長 COOの奥田 修は「これまで台湾では承認された治療薬がなくアンメットメディカルニーズの高い疾患であるNMOSDに対し、当社創製のエンスプリングが承認されたことを心より嬉しく思います」と述べるとともに、「中外製薬独自のリサイクリング抗体技術を初めて適用したエンスプリングは、IL-6を標的とするNMOSD治療薬です。本剤が台湾のNMOSDの方々に一日も早く貢献できるよう、台湾中外製薬と協働してまいります」と語っています。

 本承認は、NMOSDの再発リスクを有意に減少した第III相国際共同治験SAkuraSky試験(NCT02028884)およびSAkuraStar試験(NCT02073279)の成績に基づいています。SAkuraSky試験はエンスプリング皮下投与と免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法、SAkuraStar試験はエンスプリング皮下投与の単剤療法の試験です。

 エンスプリングは中外製薬が創製した、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、当社独自のリサイクリング抗体技術を適用した初めての薬剤です。NMOSDの主な原因であるサイトカインのIL-6を阻害することで、NMOSDの再発の抑制が期待されます。エンスプリングはカナダ、日本、スイス、米国、台湾、ドミニカ共和国、ガイアナ、インドネシア、オーストラリア、キュラソーにて承認されています。欧州では、2019年に欧州医薬品庁(EMA)より承認申請が受理されています。

 中外製薬は、バイオ医薬品のリーディングカンパニーとして、今後も革新的な技術開発とその技術の応用により、アンメットメディカルニーズに応える医薬品を創製し、世界の医療と人々の健康に貢献していきます。

【参考情報】

視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)について1

 NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じます。NMOSDの患者さんは、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積されます。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下を伴う疼痛などが現れます。症状の発生が致死的な結果となる場合もあります。NMOSDの70~80%の患者さんでは、病原性の抗体である抗アクアポリン4抗体が検出されており、抗アクアポリン4抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的とし、視神経や脊髄、脳の炎症性脱髄病変に繋がることが知られています2-5。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります6-10。2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの基準が提唱されました。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在ではNMOSDという疾患名が認められています11

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典

  1. 視神経脊髄炎(NMOSD)Online. https://nmosd-online.jp/ Accessed Nov 2020.
  2. Jarius S, Ruprecht K, Wildemann B et al. Contrasting disease patterns in seropositive and seronegative neuromyelitis optica: A multicentre study of 175 patients. J Neuroinflammation 2012;9:14.
  3. Lennon VA, Wingerchuk DM, Kryzer TJ et al. A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis. Lancet 2004;364:2106-12.
  4. Marignier R, Bernard-Valnet R, Giraudon P et al. Aquaporin-4 antibody-negative neuromyelitis optica: Distinct assay sensitivity-dependent entity. Neurology 2013;80:2194-200.
  5. Takahashi T, Fujihara K, Nakashima I et al. Anti-aquaporin-4 antibody is involved in the pathogenesis of NMO: a study on antibody titre. Brain 2007;130:1235-43.
  6. Chihara N, Aranami T, Sato W et al. Interleukin 6 signaling promotes anti-aquaporin 4 autoantibody production from plasmablasts in neuromyelitis optica. Proc Natl Acad Sci USA 2011;108:3701-6.
  7. Kimura A, Kishimoto T. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 2010;40:1830-5.
  8. Lin J, Li X, Xia J. Th17 cells in neuromyelitis optica spectrum disorder: a review. Int J Neurosci2016;126:1051-60.
  9. Takeshita Y, Obermeier B, Cotleur AC, et al. Effects of neuromyelitis optica-IgG at the blood-brain barrier in vitro. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;4(1):e311.
  10. Obermeier B, Daneman R, Ransohoff RM. Development, maintenance and disruption of the blood-brain barrier. Nat Med 2013;19:1584-96.
  11. Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85:177-89.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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