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2019年11月29日

視神経脊髄炎スペクトラムに対するサトラリズマブの第III相国際共同治験成績がThe New England Journal of Medicine電子版に掲載

  • サトラリズマブと免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法は、視神経脊髄炎スペクトラムに対して再発リスクを有意に減少
  • サトラリズマブとベースライン治療との併用療法は、良好な忍容性を示す
  • SAkuraSky試験は、抗アクアポリン4(AQP4:aquaporin-4)抗体の陽性および陰性を対象とした第III相国際共同治験

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:小坂 達朗)は、視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)を対象として開発中のヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体サトラリズマブ(開発コード:SA237)について、第III相国際共同治験であるSAkuraSky試験の成績が11月27日にThe New England Journal of Medicine(NEJM)電子版に掲載されたことをお知らせいたします。本試験は、NMOSDを対象としてサトラリズマブをベースライン治療に上乗せ投与した際の有効性および安全性を評価した試験です。
 論文:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901747

 上席執行役員 プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長の伊東 康は、「NMOSDは、再発により障害が蓄積され、生命を脅かすことがあります。このたびNEJMに掲載された臨床成績はNMOSDに対するIL-6シグナル阻害の重要性を示すものです」と述べるとともに、「SAkuraSky試験は、抗AQP4抗体の発現状況によらず、NMOSDに対する薬物治療の有効性および安全性が示された初めての臨床試験です」と語っています。

 SAkuraSky試験は、抗AQP4抗体陽性/陰性をいずれも含む、NMOSD患者さんの全体集団に相当する対象において実施されました。サトラリズマブと免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法を受けた患者さん41名のうち、8名(20%)のみに治験実施計画書で規定された再発が認められました。プラセボとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんでは、42名のうち18名(43%)で当該再発が認められました(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.16~0.88、p=0.02[層別log-rank検定])。また、サトラリズマブとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんは、治療開始48週、96週、144週の時点でそれぞれ89%、78%、74%が無再発でしたが、プラセボとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんでは、それぞれ66%、59%、49%が無再発でした。重篤な有害事象の発現率は、サトラリズマブ群とプラセボ群で同様でした。

SAkuraSky試験(NCT02028884)

概要:
NMOSDを対象として、サトラリズマブをベースライン治療に上乗せ投与した際の有効性および安全性を評価した多施設共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験

<主要評価項目>
二重盲検期間における治験計画書に規定された初回再発(独立委員会により判定)までの期間

試験デザイン:

  • 13~73歳の男女83例をランダム化
  • 患者をサトラリズマブまたはプラセボのいずれかに1:1の割合で無作為に割り付け、ベースライン治療に加え、サトラリズマブ(120 mg)またはプラセボを0、2および4週目、その後は4週間隔で皮下投与する。ベースライン治療は、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルもしくは経口ステロイド*の単剤療法、または、経口ステロイドとアザチオプリンもしくはミコフェノール酸モフェチルの併用療法。
  • 二重盲検期間は、治験計画書規定の再発の総数が26件に達した段階で終了する。二重盲検期間終了後は、非盲検継続投与期間に移行し、両群ともサトラリズマブにより治療を継続することができる。
  • 抗AQP4抗体陽性および陰性の視神経脊髄炎(NMO:Neuromyelitis Optica)**または抗AQP4抗体陽性のNMOSDの診断基準に合致した患者を組み入れる。

*ミコフェノール酸モフェチルの国内で承認されている効能・効果は、腎移植後の難治性拒絶反応の治療(既存の治療薬が無効又は副作用等のため投与できず、難治性拒絶反応と診断された場合)、臓器移植(腎移植、心移植、肝移植、肺移植、膵移植)における拒絶反応の抑制、ループス腎炎です。それ以外の薬剤については、各薬剤の最新の添付文書をご参照ください。
**NMOは2006年に提唱された疾患分類による

主な成績:

  • 事前に規定された主要解析の結果、抗AQP4抗体陽性/陰性をいずれも含む、NMOSD患者さんの全体集団に相当する対象において、サトラリズマブと免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法を受けた患者さん41名のうち、8名(20%)のみに治験実施計画書で規定された再発が認められました。プラセボとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんでは、42名のうち18名(43%)で当該再発が認められました(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.16~0.88、p=0.02[層別log-rank検定])。また、Multiple imputationにより打ち切りを補完した解析でも頑健な結果が得られています。
  • また、サトラリズマブとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんは、治療開始48週、96週、144週の時点でそれぞれ89%、78%、74%が無再発でしたが、プラセボとベースライン治療との併用療法を受けた患者さんでは、それぞれ66%、59%、49%が無再発でした。
  • 事前に規定された抗AQP4抗体陽性に対するサブグループ解析の結果、サトラリズマブの投与を受けた患者さん27名のうち3名(11%)で再発が認められましたが、プラセボの投与を受けた患者さん28名のうち12名(43%)で再発が認められました(ハザード比:0.21、95%信頼区間:0.06~0.75)。抗AQP4抗体陰性においては、サトラリズマブの投与を受けた患者さん14名のうち5名(36%)で再発が認められましたが、プラセボの投与を受けた患者さん14名のうち6名(43%)で再発が認められました(ハザード比:0.66、95%信頼区間:0.20~2.24)。
  • 重篤な有害事象の発現率は、サトラリズマブ群とプラセボ群で同様でした。感染症(重篤な感染症を含む)の発現率は、プラセボ群と比較して、サトラリズマブ群で低下しました。サトラリズマブ群の主な有害事象は上部気道感染、鼻咽頭炎(感冒)および頭痛でした。

視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)について
 NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じます。NMOSDの患者さんは、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積されます。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下などが現れます。症状の発生が致死的な結果となる場合もあります。NMOSDの3分の2以上の患者さんでは、病原性の抗体であるAQP4抗体が検出されており、AQP抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的とし、視神経や脊髄、脳に炎症を引き起こすことが知られています1-4。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります5-9。2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎(NMO:Neuromyelitis Optica)の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの診断基準が提唱されました。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられています10

サトラリズマブについて
 サトラリズマブは中外製薬が創製した、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体です。NMOSDの病態に深くかかわるとされるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制することが期待されています。NMOおよびNMOSDの患者さんを対象とした2つの第III相国際共同治験において、免疫抑制剤によるベースライン治療に対する上乗せ投与および単剤投与でそれぞれ主要評価項目を達成しました。これらの2試験は希少疾患に行われた最も大規模な臨床試験の一つです。日本で視神経脊髄炎及び視神経脊髄炎関連疾患を対象として希少疾病用医薬品の指定を受け、欧州および米国においても同じ疾患群に対して希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、2018年12月には米国食品医薬品局からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けました。本年に欧州医薬品庁(EMA)およびFDAより承認申請が受理され、また厚生労働省に承認申請を行っています。

出典

    1. Jarius S, Ruprecht K, Wildemann B et al. Contrasting disease patterns in seropositive and seronegative neuromyelitis optica: A multicentre study of 175 patients. J Neuroinflammation 2012;9:14.
    2. Lennon VA, Wingerchuk DM, Kryzer TJ et al. A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis. Lancet 2004;364:2106-12.
    3. Marignier R, Bernard-Valnet R, Giraudon P et al. Aquaporin-4 antibody-negative neuromyelitis optica: Distinct assay sensitivity-dependent entity. Neurology 2013;80:2194-200.
    4. Takahashi T, Fujihara K, Nakashima I et al. Anti-aquaporin-4 antibody is involved in the pathogenesis of NMO: a study on antibody titre. Brain 2007;130:1235-43.
    5. Chihara N, Aranami T, Sato W et al. Interleukin 6 signaling promotes anti-aquaporin 4 autoantibody production from plasmablasts in neuromyelitis optica. Proc Natl Acad Sci USA 2011;108:3701-6.
    6. Kimura A, Kishimoto T. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 2010;40:1830-5.
    7. Lin J, Li X, Xia J. Th17 cells in neuromyelitis optica spectrum disorder: a review. Int J Neurosci2016;126:1051-60.
    8. Takeshita Y, Obermeier B, Cotleur AC, et al. Effects of neuromyelitis optica-IgG at the blood-brain barrier in vitro. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;4(1):e311.
    9. Obermeier B, Daneman R, Ransohoff RM. Development, maintenance and disruption of the blood-brain barrier. Nat Med 2013;19:1584-96.
    10. Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85:177-89.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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