中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2020年08月17日

エンスプリング、視神経脊髄炎スペクトラム障害に対してFDAより承認を取得

  • 抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する新規作用機序を有する治療薬として米国にて承認を取得
  • 中外製薬独自のリサイクリング抗体技術を初めて適用し、4週1回の皮下投与により、自己注射※1での在宅治療を可能とするNMOSD治療薬
  • NMOSDの再発リスクを有意に減少した2本の第III相国際共同治験の成績に基づく承認

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:小坂 達朗)は、当社創製のpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体エンスプリング®(米国製品名:EnspryngTM、米国一般名:satralizumab-mwge)について、成人の抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)を適応症として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことをお知らせいたします。エンスプリングの投与方法は4週1回の皮下投与※2です。エンスプリングは、2018年12月にFDAよりBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けております。FDAへの承認申請は、2019年8月にロシュ・グループのメンバーであるジェネンテック社が行いました。

 本承認は、NMOSDを対象に実施した第III相国際共同治験SAkuraSky試験(NCT02028884)およびSAkuraStar試験(NCT02073279)の成績に基づいています。SAkuraSky試験はエンスプリング皮下投与と免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法、SAkuraStar試験はエンスプリング皮下投与の単剤療法の試験です。

 エンスプリングは中外製薬が創製した、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、当社独自のリサイクリング抗体技術を初めて適用しています。NMOSDの主な原因であるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制するとされています。エンスプリングはこれまでに、カナダ、日本、スイスの3カ国で承認されています。欧州においてはNMOSDに対して希少疾病用医薬品の指定を受けており、2019年に欧州医薬品庁(EMA)より承認申請が受理されています。

※1国内の添付文書上、自己投与の規定は含まれておりません 

※2投与開始後4週目までは2週間隔投与、以降は4週間隔での皮下投与

【参考情報】

視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)について

 NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じます。NMOSDの患者さんは、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積されます。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下を伴う疼痛などが現れます。症状の発生が致死的な結果となる場合もあります。NMOSDの3分の2以上の患者さんでは、病原性の抗体である抗アクアポリン4抗体が検出されており、抗アクアポリン4抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的とし、視神経や脊髄、脳の炎症性脱髄病変に繋がることが知られています1-4。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります5-9。2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの基準が提唱されました。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられています10

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典

  1. Jarius S, Ruprecht K, Wildemann B et al. Contrasting disease patterns in seropositive and seronegative neuromyelitis optica: A multicentre study of 175 patients. J Neuroinflammation 2012;9:14.
  2. Lennon VA, Wingerchuk DM, Kryzer TJ et al. A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis. Lancet 2004;364:2106-12.
  3. Marignier R, Bernard-Valnet R, Giraudon P et al. Aquaporin-4 antibody-negative neuromyelitis optica: Distinct assay sensitivity-dependent entity. Neurology 2013;80:2194-200.
  4. Takahashi T, Fujihara K, Nakashima I et al. Anti-aquaporin-4 antibody is involved in the pathogenesis of NMO: a study on antibody titre. Brain 2007;130:1235-43.
  5. Chihara N, Aranami T, Sato W et al. Interleukin 6 signaling promotes anti-aquaporin 4 autoantibody production from plasmablasts in neuromyelitis optica. Proc Natl Acad Sci USA 2011;108:3701-6.
  6. Kimura A, Kishimoto T. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 2010;40:1830-5.
  7. Lin J, Li X, Xia J. Th17 cells in neuromyelitis optica spectrum disorder: a review. Int J Neurosci2016;126:1051-60.
  8. Takeshita Y, Obermeier B, Cotleur AC, et al. Effects of neuromyelitis optica-IgG at the blood-brain barrier in vitro. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;4(1):e311.
  9. Obermeier B, Daneman R, Ransohoff RM. Development, maintenance and disruption of the blood-brain barrier. Nat Med 2013;19:1584-96.
  10. Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85:177-89.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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