2020年03月31日
中外製薬、デジタルトランスフォーメーション推進に向け「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表
- デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターを目指す
- 「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」の下、デジタルを活用した革新的新薬の創出、すべてのバリューチェーンの効率化、デジタル基盤の強化に注力
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:小坂 達朗)は、従来のデジタル化と一線を画すデジタルトランスフォーメーションに向け、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定しましたのでお知らせいたします。
IT・デジタル技術の急速な進展により、人工知能(AI)やリアルワールドデータ/エビデンスなどを活用した新たな科学的手法が台頭しつつあります。また、医療費の抑制が進む中、患者さんにとって真に価値のある医薬品に対するニーズが高まっています。中外製薬は、デジタル技術によるビジネス革新と、社会を変えるヘルスケアソリューションの提供を目指し、従来のデジタル化とは一線を画したデジタルトランスフォーメーションに向け、2030年までの「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定しました。
執行役員 デジタル・IT統轄部門長の志済 聡子は、「『CHUGAI DIGITAL VISION 2030』では、2030年の目指す姿として、『デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターとなる』ことを掲げています」と述べるとともに、「『デジタル基盤の強化』、『すべてのバリューチェーンの最適化』、『革新的新薬の創出』の3つの基本戦略により、革新的新薬を核としたイノベーション創出による社会および当社の発展加速を目指します」と語っています。

なお、本日、中外製薬ウェブサイトに「CHUGAI DIGITAL」のページを設けましたので、あわせてご覧下さい。
<3つの基本戦略の概要>
デジタル基盤の強化
ソフト・ハード両面のデジタル基盤構築に取り組みます。ロシュグループと連携しながら、社内の各種データの統合や解析基盤構築を通じてグローバル水準のIT基盤の確立を目指します。
具体的施策:
- Chugai Scientific Infrastructure(CSI)
Amazon Web Servicesを活用し、大容量のデータをセキュアにアクセス、移動、保管するためのIT 基盤を構築しました。これにより次の5つの効果が見込まれており、当社のデジタルの取り組みを加速する基盤となります。
- 社内データの部門横断的な活用の促進
- ゲノムデータ等の高いセキュリティが要求されるデータの安全な取り扱い
- アカデミアや医療機関、パートナー企業等、外部の共同研究プロジェクトを迅速に推進する研究環境の提供
- 作業の共通化・自動化による環境構築コスト削減・期間の短縮
- 情報流出・外部攻撃等の安全性リスク低減
- Digital Innovation Lab(DIL)の設立・運営
社員の自由な発想やチャレンジを形にする仕組みを定常的に設け、新しい価値創出に貢献します。目先の投下資本利益率(return on investment:ROI)ではなく、先進性や拡張性、将来性等の観点を重視した様々な取り組みを生み出します。
- デジタル人財戦略の強化
CHUGAI DIGITAL VISION 2030の達成に向けて重要となるデータサイエンティスト、データエンジニア、デジタルストラテジスト等の職種を定義し、採用・育成活動を推進します。採用強化の一環として、インターンのように、応募者がスキルの親和性やビジネスへの適性等を事前に確認できる取り組みにも力を入れ、外部人財と当社とのマッチングを推進しています。
すべてのバリューチェーン効率化
デジタル技術を活用し、バリューチェーンに関わるすべての部署・機能、特に生産・営業プロセスの大幅な効率化を実現していきます。また、顧客データの統合的な解析を通じ、顧客体験を高める新ソリューション開発にも着手していきます。
具体的施策:
- バリューチェーンの各プロセスでのAI活用の促進
高精度の予測と自動化を実現する機械学習プラットフォーム「DataRobot」を全社導入し、研究、生産、営業等で活用しています。一例として、工場における最適な製造条件決定が挙げられます。機械学習を活用することで、従来の手法では困難であった最適な製造条件の抽出が可能となり、製剤の規格が不適合となるリスクが減少しています。
- 研究所におけるラボオートメーションの開発
ロボットや実験自動化機器の活用に加え、薬剤分子デザイン~化合物管理~ハイスループットスクリーニングや薬効評価~データ解析といった一連の研究プロセスを統合するIT基盤を整備することで、創薬プロセスの大幅な効率化や革新的な新薬創出につなげます。
- リアルタイムな安全性情報提供の高度化
医療関係者の要望に応じ、リアルタイムに安全性情報を提供可能とする、治験から製造販売後まで一貫した安全性データを提供できるツールを構築し、治療支援に取り組んでいます。さらに、医療関係者による安全性データへの直接アクセスや、医療関係者と患者さんとのオンラインコミュニケーションアプリなど、緊急時に必要性の高い安全性情報をスピーディに提供するデジタルプラットフォームを拡充し、より安心・安全な治療に貢献していきます。
- 医療貢献に向けた新たなソリューションの開発
デジタルを活用した高度な情報提供やコミュニケーションを促進し、患者さん・医療関係者の治療支援に貢献していきます(医師向け会員制サイトの開設、24時間対応のチャットボットの活用、患者さん・医療関係者向けの疾患アプリの開発、個人視聴型ウェブ講演会の開催 等)。さらに、医療関係者の個々のニーズに対し最適なソリューションを提供するコンサルティングプロモーションの高度化に向け、社内データを利活用するデジタル基盤を構築していきます。
デジタルを活用した革新的な新薬創出
「AI x デジタルバイオマーカーx リアルワールドデータ」のケイパビリティを向上させ、当社にしかできないDxD3(Digital transformation for Drug Discovery and Development)を実現し、真の個別化医療を目指します。
具体的施策:
- AIを活用した創薬
強みである抗体エンジニアリング技術の更なる強化のため、AIを活用した抗体創製技術を開発しています。大量の抗体アミノ酸配列ならびに対応する特性情報を用いて独自の機械学習アルゴリズムを開発し、医薬品の種となるリード抗体の選抜や目的の特性を有する抗体の最適化に活用しています。
- デジタルバイオマーカーへの取り組み
従来リアルタイムかつ継続的に取得できなかった生体データの変化を、疾患の状態と紐づけて測定できるウェアラブルデバイス等を開発することで把握します。主に製品価値の証明、臨床への実装、疾患理解の深化の観点から取り組みを推進します。複数製品の開発において、薬剤投与中の患者さんの身体活動データの評価等にウェアラブルデバイスを用いています。また、ある臨床研究では血友病に関連する薬剤投与や出血の記録に加え実施したスポーツ等の活動内容を調査し、運動と出血の関連性を評価する電子的な患者情報アウトカム(electronic patient-reported outcome:ePRO)アプリケーションを活用しています。
- リアルワールドデータの利活用
Clinico-Genomicデータベースへのアクセスやリアルワールドデータ/エビデンスの解析を通じて、承認申請戦略の拡大、臨床開発戦略の刷新、実臨床におけるエビデンス高度化などに取り組む計画です。
以上
本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部
- 報道関係者の皆様
- メディアリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0881
- mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
- 投資家の皆様
- インベスターリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0554
- mailto: ir@chugai-pharm.co.jp