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2019年10月30日

サトラリズマブ、EMAとFDAが視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の治療薬として承認申請を受理

  • NMOSDは、再発を繰り返し、症状の進行により失明や運動機能障害を引き起こす希少疾患
  • 単剤および免疫抑制剤によるベースライン治療との併用療法の2本のポジティブな試験成績に基づく申請
  • 承認審査はEMAの迅速審査の対象として実施

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:小坂 達朗)は、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体サトラリズマブ(開発コード:SA237)について、成人および青年期の視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)に対する承認申請が、欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことをお知らせいたします。承認申請に関し、EMAは迅速審査に指定しています。欧州医薬品委員会(CHMP)の勧告およびFDAの判断は2020年中に行われる予定です。

 上席執行役員 プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長の伊東 康は、「NMOSDは病気の進行により失明や運動機能障害につながり、アンメットメディカルニーズが高い疾患です」と述べるとともに、「サトラリズマブは、単剤およびベースライン治療との併用の両方で臨床的に意味のある治療効果を示した薬剤です。患者さんに1日でも早くこの新たな治療法をお届けできるよう、ロシュおよび規制当局と協働していきます」と語っています。

 EMAによる迅速審査の指定は、公衆衛生および治療上の革新性の観点から多大な貢献が期待できる医薬品に行われ、EMAおよびCHMPの審査期間が短縮されます。EMAおよびFDAへの承認申請は、NMOSDを対象に実施された第III相国際共同治験SAkuraStar試験(NCT02073279)およびSAkuraSky試験(NCT02028884)の成績に基づいています。SAkuraStar試験はサトラリズマブの単剤療法、SAkuraSky試験はサトラリズマブのベースライン治療との併用療法の試験です。

【参考情報】

サトラリズマブについて
 サトラリズマブは中外製薬が創製した、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体です。視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)の病態に深くかかわっているとされるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制することが期待されています。NMOSDの患者さんを対象とした2つの第III相国際共同治験において、ベースライン治療に対する上乗せ投与および単剤投与でそれぞれ主要評価項目を達成しました。これらの2試験は希少疾患に行われた最も大規模な臨床試験の一つです。サトラリズマブは、日本で視神経脊髄炎及び視神経脊髄炎関連疾患を対象として希少疾病用医薬品の指定を受け、欧州および米国においても同じ疾患群に対して希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、2018年12月には米国食品医薬品局からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けました。

視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)について
 NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、生涯にわたって衰弱を引き起こします。NMOSDの患者さんは、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積されます。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下などが現れます。症状の発生が致死的な結果となる場合もあります。NMOSDは病原性の抗体であるAQP4抗体に関わっているとされています。AQP抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的としており、視神経や脊髄、脳に炎症を引き起こすことが知られています。またAQP4抗体はNMOSDの患者さんの3分の2で認められます1-4。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります5-8。2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎(NMO:Neuromyelitis Optica)の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの診断基準が提唱されました。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられています9。NMOSDに対する日本語訳として視神経脊髄炎スペクトラムや視神経脊髄炎関連疾患等が用いられています。

出典

  1. Jarius S, Ruprecht K, Wildemann B et al. Contrasting disease patterns in seropositive and seronegative neuromyelitis optica: A multicentre study of 175 patients. J Neuroinflammation 2012;9:14.
  2. Lennon VA, Wingerchuk DM, Kryzer TJ et al. A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis. Lancet 2004;364:2106-12.
  3. Marignier R, Bernard-Valnet R, Giraudon P et al. Aquaporin-4 antibody-negative neuromyelitis optica: Distinct assay sensitivity-dependent entity. Neurology 2013;80:2194-200.
  4. Takahashi T, Fujihara K, Nakashima I et al. Anti-aquaporin-4 antibody is involved in the pathogenesis of NMO: a study on antibody titre. Brain 2007;130:1235-43.
  5. Kimura A, Kishimoto T. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 2010;40:1830-5.
  6. Lin J, Li X, Xia J. Th17 cells in neuromyelitis optica spectrum disorder: a review. Int J Neurosci2016;126:1051-60.
  7. Takeshita Y, Obermeier B, Cotleur AC, et al. Effects of neuromyelitis optica-IgG at the blood-brain barrier in vitro. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;4(1):e311.
  8. Obermeier B, Daneman R, Ransohoff RM. Development, maintenance and disruption of the blood-brain barrier. Nat Med 2013;19:1584-96.
  9. Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85:177-89.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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