2019年06月18日
抗悪性腫瘍剤「ロズリートレク」 「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」に対する製造販売承認の取得について
- 成人および小児のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌に対する治療薬として、世界に先駆けて日本で承認されました
 - ロズリートレクは、STARTRK-2試験の成績から、10種類のNTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者さん51名中29名(56.9%)で奏効を示しました
 
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:小坂 達朗)は、ROS1/TRK阻害剤「ロズリートレク®カプセル100 mg、同200 mg」(一般名:エヌトレクチニブ)(以下、ロズリートレク)について、本日、「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」を効能・効果とした製造販売承認を厚生労働省より取得したことをお知らせいたします。ロズリートレクは、先駆け審査指定制度対象品目、希少疾病用医薬品の指定を受けておりました。
上席執行役員プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長の伊東 康は、「当社が推進してきた個別化医療の一つの成果として、ロズリートレクが極めて稀に存在するNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する治療薬として、がん種および年齢を問わず世界に先駆けて日本で承認を取得できたことを嬉しく思います」と述べるとともに、「ロズリートレクが、患者さん個々の遺伝子変異に対応した最先端の個別化医療の薬剤として治療に貢献できるよう、適正使用の推進に取り組んでまいります」と語っています。
今回の承認は、主にオープンラベル多施設国際共同第II相臨床試験(STARTRK-2試験)の成績に基づいています。有効性評価は、NTRK融合遺伝子陽性の固形がんの成人患者さん51名を対象として行いました。また、小児の有効性評価は海外第I/Ib相臨床試験(STARTRK-NG試験)に登録されたNTRK融合遺伝子陽性の固形がんの患児5名で行いました。一方、安全性評価はSTARTRK-2試験に加え、2つの海外第I相臨床試験(STARTRK-1試験およびALKA試験)の3つの試験に登録された339名を中心に行いました。
有効性評価
 ・STARTRK-2試験において、RECIST ver.1.1に基づく独立評価委員判定による奏効率は56.9%(95%CI: 42.3~70.7%)でした。
 ・STARTRK-NG試験において、RECIST ver.1.1およびRANO規準に基づく主治医判定では、5例中4例に奏効が認められました。
| 年齢 | がん種 | 主治医判定 | 
| 0 | 乳児型線維肉腫 | 安定 | 
| 3 | 類表皮性膠芽腫 | 完全奏効 | 
| 4 | 高グレード神経膠腫 | 部分奏効 | 
| 4 | 悪性黒色腫 | 部分奏効 | 
| 4 | 乳児型線維肉腫 | 部分奏効 | 
安全性の概要
 ・最も一般的な有害事象は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、吐き気、知覚異常、呼吸困難、痛み、貧血、認知障害、体重増加、嘔吐、咳、血中クレアチニン増加、関節痛、発熱、および筋肉痛でした。
| 例数(%) | STARTRK-2試験 206例  | 
STARTRK-1試験 76例  | 
ALKA試験 57例  | 
| 全有害事象 | 205(99.5) | 75(98.7) | 57 (100) | 
| Grade 3以上の有害事象 | 131(63.6) | 51(67.1) | 27(47.4) | 
| 死亡に至った有害事象 | 13 (6.3) | 6 (7.9) | 1 (1.8) | 
| 重篤な有害事象 | 81(39.3) | 30(39.5) | 24(42.1) | 
| 投与中止に至った有害事象 | 21(10.2) | 6 (7.9) | 2 (3.5) | 
| 休薬に至った有害事象 | 93(45.1) | 39(51.3) | 25(43.9) | 
| 減量に至った有害事象 | 72(35.0) | 19(25.0) | 5 (8.8) | 
【参考情報】
 ROS1/TRK阻害剤「エヌトレクチニブ」のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する製造販売承認申請について(2018年12月19日プレスリリース)
 https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20181219170000_797.html
ロズリートレクについて
  ロズリートレクは、ROS1(c-rosがん遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤です。ロズリートレクは、ROS1およびTRKキナーゼ活性を阻害することにより、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制します。ロズリートレクは、前治療後に病勢進行した、または許容可能な標準治療がないNTRK融合遺伝子陽性の局所進行または遠隔転移を有する成人および小児の固形がんに対し、米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に、欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されています。なお、FDAはNTRK融合遺伝子陽性の固形がん、およびROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんへのロズリートレクの投与を、優先審査に指定しています。また、国内では2019年3月にROS1融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌を対象とした承認申請を行っています。
NTRK融合遺伝子陽性がんについて
  NTRK融合遺伝子とは、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3、それぞれTRKA、TRKB、TRKCタンパク質をコードする)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)とが染色体転座の結果、融合してできる異常な遺伝子です1-3)。NTRK融合遺伝子から作られる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられています。NTRK融合遺伝子の発生は非常に稀ではありますが、成人や小児の様々な固形がんや肉腫等[乳児型線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫、びまん性橋グリオーマ、先天性中胚葉性腎腫、悪性黒色腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)、子宮肉腫、その他軟部腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、乳腺分泌がん、唾液腺分泌がん、原発不明がん、肺がん、大腸がん、虫垂がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、胆管がん、膵臓がん、頭頸部がん、等]で確認されています。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
出典
- Martin-Zanca D, Hughes SH, Barbacid M. A human oncogene formed by the fusion of truncated tropomyosin and protein tyrosine kinase sequences. Nature 1986; 319(6056): 743-8.
 - Martin-Zanca D, Oskam R, Mitra G, Copeland T, Barbacid M. Molecular and iochemical Characterization of the Human trk Proto-Oncogene. Molecular and Cellular Biology 1989; 9(1): 24-33.
 - Lange AM, Lo HW. Inhibiting TRK Proteins in Clinical Cancer Therapy. Cancers 2018; 10: 105.
 
以上
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