2026年03月02日

PHARMONYの拡がりと深化を全社で共有

「CHUGAI PHARMONY DAY2025」を開催

患者さん中心の持続可能な医療

2025年11月12日(水) に、当社の全社イベント「CHUGAI PHARMONY DAY 2025」を開催しました。
「CHUGAI PHARMONY DAY」初開催の2024年は、2022年から本格的な活動を開始したPHARMONY活動の実績と想いを取り上げました。
開催2年目である2025年は、「更なる拡がり」をテーマに、患者さんによるご講演、PHARMONYの社内事例発表、ロシュ社の取り組みの共有、そして、当社CEOと患者団体・医療関係者による対話を行い、PHARMONYの拡がりと深化を社内外に共有しました。

※PHARMONY:Patients(患者)とPharma(製薬)の頭文字と、Harmony(調和)を組み合わせた当社オリジナルの造語。
 患者さん・ご家族の声を聞き、相互理解を目指しながら、共有価値創造に向けた取り組みの総称。

 

CHUGAI PHARMONY DAY 2025プログラム概要
(総合司会:フリーアナウンサー 坂本梨紗氏)

  • Opening 「PHARMONYが拡げる共創の輪」
  • Session 1 患者さんの講演
  • Session 2 社員によるPHARMONYの取り組み発表
  • Session 3 ロシュ社の患者協働の取り組み紹介
  • Session 4 CEOダイアログ
  • Closing 患者団体から中外製薬への期待

 

Opening「PHARMONYが拡げる共創の輪」
登壇者:奥田修(中外製薬株式会社 代表取締役社長CEO) 

PHARMONY活動の背景を振り返るとともに、全社的に続けている患者さんとの相互理解を目的とした対話を経営層全員で実施したことを報告しました。
社員と患者さんとの対話を通じて、患者さんの病気や治療だけでなく一人ひとりの日常生活にも目を向ける意識が社員の間で高まってきていること、さらに、患者団体との協働を通じて「患者さんの目線では」というフレーズを聞くことが増えてきていることを紹介しました。
患者さんやご家族の声を聞くことを日常業務の当たり前とし、さまざまなパートナーと協働して新しい医薬品や価値を生み出し、社会全体への貢献を目指していくことを宣言し、当イベントの幕を開けました。

 

Session 1患者さんの講演「ともに生き、ともに創る~NMOSD患者と企業が共に描く未来~」
登壇者:坂井田真実子氏(NPO法人 日本視神経脊髄炎患者会 理事長)

患者会を設立するきっかけの一つは、坂井田さん自身が視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を発症した2016年(および2025年現在も)、NMOSDが、異なる疾患である多発性硬化症と同じ国指定難病番号13番に併記されていたために、情報の混乱に直面したことだったと紹介されました。

また、NMOSDに特化した患者会が存在しなかったため、「視神経脊髄炎が取り残されない社会をつくる~見えない痛みに耳を傾け、隠れている弱さに手を差し伸べる~」ことを使命に、患者会を立ち上げたという経緯を説明されました。

NMOSD患者さんの本当の困りごとは、「NMOSDと共に生きる人生だからこその喜びに出会えておらず声をあげられない」こと。そして、患者会と企業との協働でNMOSD患者の未来が少し変わったこと、また、当社との協働で患者の声を反映した取り組みが継続的かつバージョンアップしながら展開されていることに触れ、今後の展望への期待をお話されました。
NMOSDの人生は「突然の雨の連続」と表現し、一人ひとりの傘がつながって大きなひさしになるように、協働が生まれ共に歩んでいきたいと話されました。

 

Session2 社員による「PHARMONY」の取り組み事例発表
生産技術本部、メディカルアフェアーズ本部、臨床開発本部と幅広い部署の社員から「PHARMONY」活動の具体的な事例を発表し、それぞれの発表に対して、コメンテーター3名から講評が述べられました。

コメンテーター:桜井なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事)
       大黒宏司氏(一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 代表理事)
       奥田修(中外製薬株式会社 代表取締役社長CEO)

 

2-1「藤枝工場に患者さん中心の輪を広げる –PHARSTEPの立ち上げと活動推進-」
登壇者:上間なつみ(生産技術本部 中外製薬工業 品質研究部)

藤枝工場で、生産現場の一人ひとりが患者さんを思うことで作業の工夫や薬の開発スピードの向上、製品品質の維持、安定供給など患者さんへの価値提供に貢献することを目指し、工場全体を巻き込みながら活動を推進していることを紹介しました。活動名の「PHARSTEP」には「患者さんを第一に思える(患者ファースト)活動になるように。

今後、藤枝でのPHARMONY活動の第一歩(ファーストステップ)となるように。」との想いを込めており、一人ひとりに患者さん中心の価値観が浸透した藤枝工場にしていきたいと今後の展望を語りました。

 

コメンテーターからの講評

桜井氏 患者に近そうで遠い工場から本活動が始まったことに感動し、嬉しく思った
大黒氏 全社で取り組んでいるという一つの象徴。この取り組みは、エンドユーザーとの距離を縮めるための最初の一歩を踏み出したことを評価する
奥田 患者さんのことを考える機会を増やし、品質向上や安定供給など、自分たちの業務の意味づけに繋げている点に価値がある

 

2-2「患者さんに伝わる論文を届けたい -想いを形にする意見交換会の開催-」
登壇者:家田健一郎(メディカルアフェアーズ本部 オンコロジーメディカルサイエンス部)

市販後の臨床研究に関するPLSP*論文作成を作成する活動の一環として、患者さんやご家族、筆頭著者の医師および、当社社員が参加する意見交換会を実施。意見交換会では、患者視点での「知りたい情報」、「分かりやすい表現方法」について議論し、PLSP論文の改善に活かしたことを報告しました。

PLSP論文作成の背景には、患者さんと医療関係者の間で情報の非対称性が存在し、その要因の一つに臨床研究の結果(エビデンス)が患者さんへ十分に届いていないことがあると説明。この課題に対し、より理解しやすく必要な情報を含んだPLSPが、患者さんが納得感を持って治療に臨める環境づくりに貢献することを目指していると述べました。
*PLSP:Plain Language Summary of Publication。医学専門家向けの論文を分かり易い言葉・表現でまとめたもの。論文として専門家の査読を受けるため、信頼性が保障される。

 

コメンテーターからの講評

桜井氏 結果をわかりやすく社会へ伝えることは、社会還元、患者還元のひとつであり、続けていってほしい
大黒氏 「わかりやすく」伝えることは重要であっても非常に難しいため、患者さんと一緒に取り組むことをこれからも大事にしてほしい
奥田 価値の高い取り組み。正しい情報に患者さんがたどり着く仕組みも今後考えていきたい

 

2-3「患者さんが抱える困りごとを治験の評価項目に -治療選択の一助となるデータの創出を目指して-」
登壇者:佐藤礼奈(臨床開発本部 臨床開発業務部) 

患者さんの困りごと(疾患や治療に関連して起こる、日常生活に支障をきたす症状や日常生活における制限)を公開情報の調査および患者さんへのインタビューやアンケートから特定し、日常生活への支障度が高い困りごとを治験で評価する方法を選定したことを発表しました。

疾患の当事者であり、薬の使用者である患者さんにとって必要なデータは、承認取得に必要なデータと同じなのか。この問いは、患者さんから「本当に必要な情報は違う」という意見をいただいたことから生まれ、検討を始めるきっかけとなったと述べました。今後は選定した評価方法を用いたデータ創出をめざしていくという展望を語りました。

 

コメンテーターからの講評

桜井氏 ペイシェントプレファレンス(患者選好)が今後薬の価値に取り入れられていくことに期待
大黒氏 実現が難しいと考えていた患者さんの困りごとを捉える取り組みへの評価。さらなる展望を期待
奥田 こうした取り組みが進んでいけば患者さんのための薬の価値をデータで示す世界に繋がる

Session 3ロシュ社の患者協働の取り組み紹介:
「Patient Partnership at Roche Our Evolution, Commitment and Impact」
登壇者:Rebecca Vermeulen氏 (Global Head Patient Partnership, Product Development Medical Affairs, Roche)
座長:眞島喜幸氏(NPO法人パンキャンジャパン 理事長)
コメンテーター:大内香(中外製薬株式会社 上席執行役員)

当社と戦略的アライアンスを結ぶロシュ社における「Patient Inclusivity」を実現する患者協働の考え方や、グローバルでの具体的な活動事例について紹介しました。
「Patient Inclusivity」とは、医薬品の研究開発の初期段階から、ライフサイクル全体を通して、患者さんをパートナーとして理解し、その声を取り入れることを意味し、結果として、患者さん、企業、ひいては社会に最大の価値をもたらすことを示しました。一例として、治験の実施計画書作成段階から患者さんが関わることで治験期間の短縮やその結果、治療提供の迅速化に大きく貢献した例を紹介しました。

 

中外製薬の取り組みはロシュ社の取り組みの方向性が一致しており、「Patient Inclusivity」の今後の展望として、すべてのソリューション開発、すべての治療法が患者さんとの協働で創造されていることを示すことが非常に重要。患者さんにとって最も重要なアウトカムを明確にし、彼らの経験から生じる課題を解決することで、患者さん、ご家族や介護者の生活の改善や社会での機能向上につながることを目指していると話しました。

 

コメンテーターからの講評
大内 イノベーションはすべて患者さんのためであり、患者さんからのフィードバックをもっと受けるように患者さんとの協働を更に深化していきたい

 

Session 4 CEOと患者団体および医療者との対話
登壇者:天野慎介氏(一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン 理事長)
     土井俊彦氏(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 病院長)
     奥田修(中外製薬株式会社 代表取締役社長CEO)
司会:西村由希子氏(特定非営利活動法人ASrid 理事長)

2020年より毎年継続している当社CEOと患者団体による対話「ダイアログ」。これをより多角的な場へと深化させるため、2025年は臨床現場を代表して医師を交えて実施しました。「医療への患者参画」をテーマに、患者参画の真の意義と今後の課題、情報提供の在り方、そして企業・医療関係者・患者さんによる連携について、それぞれの立場から活発な対話が交わされました。

土井氏
中外製薬の取り組みに関して「各プレーヤーが価値を共創するエコモデルを作り上げているのに感心した」とコメントし、医療現場においても、患者さん一人ひとりの生活背景や価値観を深く理解し、その人に適した治療選択を可能にするエコモデル構築の重要性を強調されました。また、医療関係者から患者さんへの一方的な情報提供に留まらず、患者さんの経験や声が医療現場にフィードバックされる双方間のコミュニケーションを循環させる必要性について述べられました。

天野氏
医療への患者参画の取り組みが次の段階に進んでおり、今後は参画によって「何が変わり、どう改善された」という具体的な「アウトカム」を明確に示していくことが不可欠であると述べられました。
情報提供の在り方に関しても、患者さんは情報を従来のテキスト中心のウェブサイトよりも、動画などから得ることが増えてきていることを紹介し、多様化する患者さんの情報収集スタイルに対応した企業からの情報提供の重要性について言及されました。

奥田
患者さんと医療関係者が共に治療方針を決定する「シェアードディシジョンメイキング」の実現に向けて、製薬企業として、エビデンスに基づく信頼性の高い情報をいかに分かりやすく、かつ適切なタイミングで患者さんや医療従事者に届けられるかを考えていきたいと述べました。

対話の中では、患者さんご自身が情報の信頼性を見極める能力の向上や、社会全体で正確な医療情報を共有するための教育活動の重要性についても意見が交わされました。
目指す医療の姿を関係者で共有、連携、そして実行し、より良い医療エコシステムを築くことが今後の課題であると締めくくられました。

Closing 患者団体から中外製薬への期待
登壇者:竹田保氏(日本筋ジストロフィー協会 理事長)

2024年参加時と比べて取り組みが進化していると評価を述べられ、イベントを振り返りました。専門的な情報が患者さんにも分かりやすい平易な言葉で発信される重要性に言及。また、治験で評価している「10m歩けること」を望んでいるわけではなく、「車椅子に座っている時間が少しでも長く、あるいは楽になることを重視している」とコメントされました。地域や環境に関係なくすべての患者さんが公平に治療を受けられる社会の実現を目指すため、患者会だけでなく企業や幅広い関係者の協力の必要性を述べられました。

 

CHUGAI PHARMONY DAY2025 ダイジェスト動画
https://youtu.be/rdGxVNS-oqE?si=a7KsrQK9cVrDNW5V

CHUGAI PHARMONY DAY 2024の活動報告は以下をご覧ください。
活動報告「患者さんは『ともに課題解決を行うパートナー』 PHARMONY活動のさらなる発展を目指しCHUGAI PHARMONY DAY 2024を開催」(2024年12月16日)