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2026年09月09日

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血友病A治療薬ヘムライブラを創製した中外製薬の研究者3名が世界的権威のある米国の科学賞「ラスカー賞」を受賞 ~独自の着想で治療体系を変えたバイスペシフィック抗体の発明が評価~

  • 血友病Aで欠乏する血液凝固第VIII因子の機能をバイスペシフィック抗体で代替する、新たな創薬コンセプトの実現が高く評価
  • 高い持続性と皮下投与製剤の実現による利便性の向上、ならびに第VIII因子インヒビターの有無を問わない治療選択肢の提供により血友病Aのアンメットメディカルニーズの解決に貢献
  • 1945年のラスカー賞開始以降、日本人研究者3名の同時受賞は初めて

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、血友病A治療薬ヘムライブラ(一般名:エミシズマブ)の創製を主導した、服部 有宏(元中外製薬 シニアフェロー)、北沢 剛久(中外製薬 研究本部副本部長)、井川 智之(中外製薬 研究本部長)の3名が世界的に権威のある科学賞である「ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞」を受賞したことをお知らせいたします。
 血友病Aでは血液を固めるために必要なたんぱく質の一つである血液凝固第VIII因子が欠乏しています。第VIII因子は活性化されると、活性化した血小板の表面において、活性型血液凝固第IX因子による第X因子の活性化を補佐する“橋渡し役”として働きます。この第VIII因子の機能を、バイスペシフィック抗体で代替するという独創的な着想から、作用の持続性の向上と皮下投与による利便性の向上、第VIII因子インヒビター(抗体)の有無を問わない持続的な出血予防効果を実現し、血友病Aのアンメットメディカルニーズの解決に大きく寄与したことが、高く評価されました。

 ラスカー賞は、医学研究の発展に大きく貢献した研究者や、医学・公衆衛生分野に顕著な功績を残した個人を称える米国の医学賞です。基礎医学研究、臨床医学研究、公共サービスの各分野で授与されます。1945年のラスカー賞授与の開始以降、日本人の臨床医学研究分野での受賞は2回目となります。また、同分野での日本人研究者3名による同時受賞も初めてとなります。

 エミシズマブは、当社研究者が膨大な実験を重ねて創製した抗体医薬です。従来の抗体医薬は病気に関わる特定の物質や細胞に対して、その働きを抑えたり、免疫機能を利用して標的となる細胞を除去したりする、「引き算」の作用によって効果を発揮します。それに対し、エミシズマブは、抗体そのものに、本来は別のたんぱく質が担う機能を持たせることで、不足する働きを補う「足し算」の発想を実現した、世界初の抗体医薬です*。同時に、異なる二つの標的に結合する世界初の遺伝子組換え完全長IgG型バイスペシフィック抗体医薬であり、創製の過程では、その商業製造を可能にする独自の抗体エンジニアリング技術ART-Igも開発して適用しています。
 本治療の実現にあたっては、血友病の基礎研究と診療で豊富な知見を有する奈良県立医科大学と協働し、基礎・臨床の両面から研究を推進してきました。また、エミシズマブはロシュ社(スイス)に導出後、ロシュ社およびジェネンテック社(米国)と連携してグローバルでの第III相臨床試験の実施と承認申請を進め、ヘムライブラとして製品化に至りました。2017年に米国、2018年に日本および欧州で承認後、現在では120を超える国・地域で承認**されています。国際共同第III相臨床試験であるHAVEN1~4試験の統合解析では、第VIII因子インヒビターの有無、重症度、年齢を問わず、主要評価項目である試験全体での治療を要した24週間おきの年間出血率(ABR)は1.4回/年でした。また、副次的評価項目の治療を要した出血が0回であった方は投与1~24週では70.8%(277/391例)、その後24週ごとに経時的に解析し、投与121~144週時点では82.4%(140/170例)でした。また、新たな安全性上の懸念は確認されず、主な有害事象は注射部位反応(27.8%)でした1。エミシズマブは第VIII因子に対するインヒビター(抗体)の有無によらず持続的な出血予防効果を発揮することに加え、新たな第VIII因子インヒビターが誘導されていないことや、皮下投与や投与間隔の延長といった利便性の向上を通じて新たな治療選択肢を提供し、これまでに3万人を超える血友病Aの方々に使用されています(2026年6月末時点、グローバル累計)。

  • *2023年調査時点で承認されている抗体医薬を対象に、抗体そのものが、欠損または機能異常を来している別のたんぱく質の機能を代替する医薬品として。
  • **本剤は、一部国内の承認外の用法及び用量による臨床試験の成績も含めた臨床データパッケージで評価され、承認されました。そのため、国内承認されている用法及び用量と異なる記載が含まれます。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「血友病Aの方々とご家族の負担を軽減したいという想いから生まれた独創的な発想と、それを実現した創薬技術が、このたび高く評価されたことを大変嬉しく思います。エミシズマブは、1週から4週に1回の皮下投与によって投与の負担を軽減するとともに、第VIII因子インヒビターの有無や重症度、年齢を問わず持続的な出血予防効果を発揮し、血友病Aの方々とご家族に新たな日常をもたらしました。
 困難な課題に挑み続けた3名の研究者の創造力とリーダーシップ、そして多くの関係者による研究開発の積み重ねに深い敬意を表し、心よりお祝い申し上げます。
 また、この研究成果をヘムライブラという製品へと結実させ、世界中の血友病Aの方々に届けることができたのは、臨床試験に参加してくださった方々、奈良県立医科大学をはじめとする医療関係者の皆さま、ロシュ社、ジェネンテック社との協働があったからこそです。長年にわたり多大なるお力添えをいただいたすべての関係者の皆さまに、改めて深く感謝申し上げます。
 今後も、独自の技術とサイエンスをさらに高めるとともに、多様なパートナーとの協働を推進し、一人でも多くの患者さんに革新的な医薬品とサービスをお届けできるよう努めてまいります」と語っています。

受賞概要

受賞 Lasker~DeBakey Clinical Medical Research Award
For invention of a bispecific antibody that joins blood clotting Factors IX and X, restoring the deficient Factor VIII activity in hemophilia A and preventing the severe bleeding in this hereditary disorder
(血友病Aで欠乏する血液凝固第VIII因子の働きを、第IX因子と第X因子を橋渡しすることで代替し、重篤な出血を予防するバイスペシフィック抗体の発明に対して)
受賞者 服部 有宏(元中外製薬 シニアフェロー)
北沢 剛久(中外製薬 研究本部副本部長)
井川 智之(中外製薬 研究本部長)
受賞内容 血友病Aは、血液凝固第VIII因子の欠乏により、出血が止まりにくくなる疾患である。服部らは、第VIII因子そのものを補うのではなく、その働きを抗体で代替するという新しい発想のもと、活性型第IX因子と第X因子を活性化血小板表面上で正しい位置・角度でつなぐバイスペシフィック抗体の研究に取り組み、ACE910(後のエミシズマブ)を創製した。また、商業製造にあたり、発現精製効率を上げる独自の抗体エンジニアリング技術ART-Igを開発した。本研究の意義は、既存の抗体の枠を打ち破る独自の概念を実証し、血友病Aの治療体系を変えたことである。
エミシズマブは、第VIII因子に対するインヒビター(抗体)の有無を問わない持続的な出血予防効果と、利便性の高い皮下投与、投与間隔の延長により、血友病Aの方々やその家族の治療負担の軽減に貢献している。
表彰式 2026年9月17日(木)(米国時間)
会場:The Pierre, a Taj Hotel, New York
内容:ランチョンセレモニー

受賞者コメント

服部 有宏:血液凝固と抗体の知見を基に本着想を生み、研究プロジェクトを統括

 多くの研究者や臨床の先生方と「世のため、患者さんのため」に力を尽くした成果が、今回の受賞につながったことを大変光栄に思います。この治療を必要とする世界中の患者さんに届けることが、私たちが引き続き取り組むべき課題だと思っています。

北沢 剛久:薬理・生物学研究を主導し、候補抗体の探索と第VIII因子代替活性の実証を推進

 多くの医療関係者の皆様や研究仲間との協働により、エミシズマブの創出に携わることができたことを光栄に思います。また、臨床試験に参加してくださった血友病Aの方々とご家族の皆様に、心より感謝申し上げます。今回の栄誉が、次なるイノベーションを生み出す契機となることを信じ、今後も力を尽くします。

井川 智之:エミシズマブのデザインおよびバイスペシフィック抗体を効率的に製造する技術の確立を主導

 患者さんとご家族の負担を少しでも軽くし、より自由な日々を届けたいという願いが、困難な研究を前へ進めてきました。3名同時にこのような栄誉ある賞を受賞できたことを、心から光栄に思います。これからも自由な発想と科学の力で、人々の人生に貢献する医薬品の創出に挑み続けます。

(写真左から、北沢・服部・井川)

血友病Aについて2,3

 血友病には主に血友病Aと血友病Bの2種類があり、血友病Aの方々は、出血を止めるために必要な血液凝固第VIII因子と呼ばれるたんぱく質が欠乏しているため、血が固まりにくい体質を持ちます。遺伝性の「先天性血友病A」と自己免疫性の「後天性血友病A」があります。先天性血友病AはX染色体連鎖潜性遺伝形式をとるため、患者の多くは男性であり、その頻度は男子出生5,000人に1人といわれます。女性は保因者となることが大半ですが、まれに発症例も報告されています。
 血友病Aによる出⾎に伴う症状はさまざまですが、特に「内出⾎」が多いことが特徴です。内出⾎が起こると、⾎液が溜まった⾎のかたまり(⾎腫)が体の中にでき、周りの神経や⾎管を圧迫し、痛みや障害を引き起こします。肘、膝や⾜⾸などの関節内、筋⾁内は出⾎しやすく、出⾎すると熱をもって腫れ、強い痛みをもつことがあります。重症の方々では、出血予防療法を受けない場合、日常の活動で容易に関節・筋肉内出血等が生じ、特に関節内出血が繰り返されると進行性の関節障害を来すことが知られており、QOLに大いに影響を及ぼします。
 2000年頃から、欠乏している第VIII因子の製剤を定期的に補充する出血予防療法が普及してきましたが、週に1回~数回の頻度で静脈注射が必要でした。また、投与継続により第VIII因子に対して免疫反応が生じた方々(第VIII因子インヒビター保有の方々)には治療選択肢が限定されるという医療課題がありました。

ラスカー財団について

 1942年に、アルバート・ラスカー、メアリー・ラスカー夫妻によって設立されました。国際的に高い評価を受けるラスカー賞の授与、教育活動、社会への働きかけを通じて、生物医学には人々の命を救い、生活をより豊かなものにする力があることを広く伝えています。これらの活動を通じて、生物医学研究への支援を提唱し、病気や障害の予防や治療に貢献することを目指しています。

ラスカー賞について

 米国で最も権威ある生物医学研究賞として知られ、1945年の賞創設以来、360人がラスカー医学研究賞を受賞しています。このうち101人のラスカー賞受賞者がノーベル賞を受賞しており、過去20年間では28人に上ります。1985年にラスカー基礎医学研究賞およびノーベル生理学・医学賞を受賞したジョセフ・L・ゴールドスタイン氏が議長を務める国際審査委員会によって受賞者が選出されます。ラスカー財団・ラスカー賞に関するさらに詳しい情報はhttps://laskerfoundation.org/をご覧ください。

奈良県立医科大学小児科との連携の経緯について

 奈良県立医科大学小児科は、日本における血友病診療の先駆けとして、長年にわたり基礎・臨床研究を推進してきました。当社は、2003年より同大学との共同研究を実施し、エミシズマブを評価する凝固アッセイ系の構築など、多くの研究成果を生み出してきました。
 さらに、同大学には、国内の初期臨床試験をはじめ、エミシズマブの臨床開発に多大な貢献をいただきました。加えてグローバルな臨床開発に際しては、奈良県立医科大学小児科が長年築いてきた海外の研究者・血友病専門医とのネットワークが、当社にとって新たな疾患領域で開発を進める上で、大きな力となりました。

中外製薬について

 中外製薬(本社:東京)は、抗体エンジニアリング技術をはじめとする独自の創薬技術基盤を強みとする、研究開発型の製薬企業です。ロシュ・グループの重要なメンバーであるとともに、東京証券取引所プライム市場の上場企業として、自主独立経営の下、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品の創製に取り組んでいます。中外製薬に関するさらに詳しい情報はhttps://www.chugai-pharm.co.jp/をご覧ください。

 上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

※電子化された添付文書情報 ※関係部分を抜粋

4. 効能又は効果
○先天性血友病A(先天性血液凝固第VIII因子欠乏)患者における出血傾向の抑制

6. 用法及び用量
〈先天性血友病A(先天性血液凝固第VIII因子欠乏)患者における出血傾向の抑制〉
通常、エミシズマブ(遺伝子組換え)として1回3mg/kg(体重)を1週間の間隔で4回皮下投与し、その1週間後(初回投与から4週間後)の5回目投与から以下のいずれかの用法・用量で皮下投与する。

  • 1回1.5mg/kg(体重)を1週間の間隔
  • 1回3mg/kg(体重)を2週間の間隔
  • 1回6mg/kg(体重)を4週間の間隔

【出典】

  1. Michael U. Callaghan, et al. Long-term outcomes with emicizumab prophylaxis for hemophilia A with or without FVIII inhibitors from the HAVEN 1-4 studies
    https://ashpublications.org/blood/article/137/16/2231/474603/Long-term-outcomes-with-emicizumab-prophylaxis-for(2026年9月確認)
  2. 日本血栓止血学会 診療ガイドライン
    https://www.jsth.org/wordpress/guideline/index.html(2026年9月確認)
  3. 小児慢性特定疾病情報センター 40.血友病A
    https://www.shouman.jp/disease/details/09_21_040/(2026年9月確認)

【参考情報】

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
  • 投資家の皆様
  • インベスターリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0554
  • mailto: ir@chugai-pharm.co.jp