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2025年09月19日

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テセントリク、希少な節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型への適応拡大が承認

  • 標準的な薬物療法が確立されていない、成人および12歳以上の小児の再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKL)に対する、国内で初めて承認された免疫チェックポイント阻害剤
  • 医師主導の国内第II相臨床試験の成績に基づく承認
  • ENKLへの適応拡大に加え、肺がんと乳がんの既存適応において、新たに4週間ごとの投与法が追加され、患者さんと医療関係者の利便性向上に貢献

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク®点滴静注」[一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)]について、再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKLextranodal natural killer/T-cell lymphoma, nasal type)に対する適応拡大の承認を、本日、厚生労働省より取得しましたので、お知らせいたします。テセントリクは、同疾患に対し国内で初めて承認された免疫チェックポイント阻害剤です。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「この度の承認を受け、成人および12歳以上の小児のENKLに対する新たな治療選択肢として、テセントリクを患者さんにお届けできることを心より嬉しく思います。ENKLは主に鼻腔に発症する希少な悪性リンパ腫の一種で、進行期では初回治療後に約6割の方が再発し、再発後の標準治療は確立されていません。テセントリクがENKLの患者さんの治療に貢献できるよう、迅速な適正使用情報の提供に努めてまいります」と語っています。

 今回の承認は、再発又は難治性のENKLに対するテセントリクの有効性および安全性を評価した国立がん研究センター中央病院をはじめとする医師主導の国内第II相臨床試験であるATTACK試験の成績に基づいています。

 また、今回の適応拡大の承認に加え、肺がんと乳がんの既存適応の「用法及び用量」において、4週間ごとの投与の承認を追加で取得しました。投与間隔の選択肢が増えることで柔軟性のある治療計画の策定が可能になります。患者さんの来院回数の減少や医療関係者の負担軽減により、双方の利便性向上につながることが期待されます。

 オンコロジー領域のリーディング企業である中外製薬は、革新的な医薬品によりがん治療におけるアンメットメディカルニーズを充足し、患者さんおよび医療関係者に貢献できるよう引き続き取り組んでまいります。

電子化された添付文書情報 ※新規追加または改訂部分を抜粋(下線)

効能共通:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)の初回投与時は60分かけて点滴静注し、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。

効能又は効果 用法及び用量
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 化学療法未治療の扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔で点滴静注する。その後、単独投与する場合には、アテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。

化学療法未治療のPD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。

化学療法既治療の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。
PD-L1陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法 通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。投与期間は12カ月間までとする。
進展型小細胞肺癌 カルボプラチン及びエトポシドとの併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、アテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。
切除不能な肝細胞癌 ベバシズマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔で点滴静注する。
PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 パクリタキセル(アルブミン懸濁型)との併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回840mgを2週間間隔又は1回1680mgを4週間間隔で点滴静注する。
切除不能な胞巣状軟部肉腫 通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔で点滴静注する。通常、2歳以上の小児にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回15mg/kg(体重)(最大1200mg)を3週間間隔で点滴静注する。
再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型 通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを3週間間隔で点滴静注する。通常、12歳以上の小児にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回15mg/kg(体重)(最大1200mg)を3週間間隔で点滴静注する。

ATTACK試験について1
 ATTACK試験(NCCH1903、jRCT2031190177)は、再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型の患者さんを対象に、テセントリクの有効性と安全性を評価した、国立がん研究センター中央病院をはじめとする医師主導の多施設共同非盲検単群国内第II相臨床試験です。本試験には14名の患者さんが登録され、有効性・安全性が検討されました。主要評価項目は、独立評価委員会判定による奏効割合です。副次評価項目には、無増悪生存期間、全生存期間が含まれています。
 ATTACK試験は、国立がん研究センター中央病院が産学共同で希少がんの治療開発を推進するMASTER KEY プロジェクトの副試験として実施されています。

節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型について
 節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKL:extranodal natural killer/T-cell lymphoma, nasal type)は、鼻腔に多く発症する悪性リンパ腫の一つで、小児から成人まで年齢にかかわらず発症することが知られています2,3,4。日本では、悪性リンパ腫(年間発症数約36,000人)の中で、ENKLは約0.68%と稀です5。進行期では初回治療後約6割の方が再発します6,7。再発又は難治性のENKLは予後が不良で、標準治療は確立されていません。

テセントリクについて8
 テセントリクは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現するタンパク質であるPD-L1(Programmed Death-Ligand 1)を標的とする免疫チェックポイント阻害剤です。PD-L1は、T細胞の表面上に見られるPD-1、B7.1の双方と結合しT細胞の働きを阻害します。テセントリクはこの結合を阻害しT細胞の抑制状態を解除することで、T細胞による腫瘍細胞への攻撃を促進すると考えられています。国内では、2018年4月に発売し、非小細胞肺がんをはじめ5つの適応症(非小細胞肺がん、進展型小細胞肺がん、乳がん、肝細胞がん、胞巣状軟部肉腫)で承認を取得しています。

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典

  1. Makita S, et al. Phase 2 study of anti-PD-L1 antibody atezolizumab in patients with relapsed/refractory extranodal natural killer/T-cell lymphoma: NCCH1903/ATTACK study. European Hematology Association 2024 (Abstract: P1170)
  2. Swerdlow SH, et al. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues WHO Classification of Tumours, Revised 4th Edition. International Agency for Research on Cancer.
  3. Makita S, et al. Clinical Features and Current Optimal Management of Natural Killer/T-Cell Lymphoma. Hematol Oncol Clin North Am. 2017;31(2):239-253
  4. R Suzuki, et al. Prognostic factors for mature natural killer (NK) cell neoplasms: aggressive NK cell leukemia and extranodal NK cell lymphoma, nasal type. Ann Oncol. 2010;21(5):1032-40
  5. Reiji M, et al. Epidemiology and secular trends of malignant lymphoma in Japan: Analysis of 9426 cases according to the World Health Organization classification. Cancer Med. 2018;7(11):5843-5858.
  6. M. Yamaguchi, et al. Phase II study of SMILE chemotherapy for newly diagnosed stage IV, relapsed, or refractory extranodal natural killer (NK)/T-cell lymphoma, nasal type: the NK-Cell Tumor Study Group study. J Clin Oncol, 29 (2011), pp. 4410-6.
  7. Xin Li, et al. DDGP versus SMILE in Newly Diagnosed Advanced Natural Killer/T-Cell Lymphoma: A Randomized Controlled, Multicenter, Open-label Study in China. Clin Cancer Res. 2016 Nov 1;22(21):5223-5228.
  8. テセントリク点滴静注840mg・1200mg. 電子化された添付文書(2025年9月改定、第10版)

以上

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