中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。
2025年05月13日
- 医薬品
- 研究開発
エレビジス、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療用製品として、日本で製造販売承認を取得
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、生命予後が悪く、筋力低下により自立した生活や質が著しく低下する治癒困難で希少な遺伝性の筋疾患
- グローバル第III相臨床試験であるEMBARK試験等の成績に基づく承認
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーのうち、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者に対する承認
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、「エレビジス®点滴静注」[一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク](以下、エレビジス)について、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD: Duchenne muscular dystrophy)の治療を目的とした再生医療等製品として国内で条件及び期限付承認に該当する製造販売承認を、本日、厚生労働省より取得したことをお知らせいたします。投与対象は、DMDのうち、エクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体の欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な方です。投与前に実施する抗AAVrh74抗体陰性の確認には、エクルーシス試薬Anti-AAVrh74の使用が可能です。本試薬は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社より、エレビジスのDMDの適応判定を補助するコンパニオン診断薬として、2025年3月5日に製造販売承認が取得されています。
代表取締役社長 CEOの奥田 修は「エレビジスが希少で難治性のDMDに対する遺伝子治療用製品として承認されたことを大変嬉しく思います。本品は、1回の投与でDMDの原因となるジストロフィンの欠損を補うよう設計された根本的な治療法です。DMDの治療が限られている中、新たな治療選択肢となるエレビジスを日本の患者さんに一日も早くお届けできるよう、発売に向け準備を進めてまいります」と語っています。
今回の承認は、歩行可能なDMDの4歳~7歳の男児を対象にしたエレビジスの有効性および安全性を評価したグローバル第III相臨床試験であるEMBARK試験の最大2年間1,2の成績を含むこれまでに実施した本品のすべての臨床試験成績等に基づいています。EMBARK試験の結果、主要評価項目である運動機能を評価するノース・スター歩行能力評価(NSAA)はプラセボに比し統計学的な有意差は認められませんでしたが、副次的評価項目(床から立ち上がるまでの時間、10メートルの歩行時間、Stride Velocity 95th Centile[SV95C]、4段上るまでの時間)において臨床的に意義のある改善が認められています。また本試験において新たな安全性のシグナルは認められませんでした3。
電子化された添付文書情報
販売名:エレビジス®点滴静注
一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク
禁忌・禁止(一部を抜粋):
ジストロフィン遺伝子のエクソン8 及び/又はエクソン9 の一部又は全体が欠失している患者
効能、効果又は性能:
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
- 抗AAVrh74抗体が陰性の患者
- 歩行可能な患者
- 3歳以上8歳未満の患者
用法及び用量又は使用方法:
通常、体重10 kg以上70 kg未満の患者には1.33×1014ベクターゲノム(vg)/kgを、体重70 kg以上の患者には9.31×1015 vgを、60分から120分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと。(体重別の投与量の表は省略)
承認条件及び期限:
〈承認条件〉
- 条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品の長期の有効性及び安全性の確認を目的とした臨床試験並びに本品を使用する全症例を対象とした製造販売後調査により製造販売後承認条件評価を行うこと。
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関する十分な知識及び経験を有する医師が、本品の臨床試験成績及び有害事象等の知識を十分に習得した上で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に係る体制が整った医療機関において、「効能、効果又は性能」並びに「用法及び用量又は使用方法」を遵守して本品を用いるよう、関連学会との協力により作成された適正使用指針の周知等、必要な措置を講ずること。
- 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)」に基づき承認された第一種使用規程を遵守して本品を用いるよう、その使用規程の周知等、必要な措置を講ずること。
〈期限〉
3年
【参考情報】
Elevidys(SRP-9001)、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療用製品として、国内で製造販売承認申請(2024年8月14日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20240814150000_1417.html
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するEMBARK試験において、主要評価項目は未達の一方、時間機能に 関する重要な副次的評価項目はいずれも良好な結果を示す(2023年10月31日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20231031120000_1341.html
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD: Duchenne muscular dystrophy)について
DMDは、小児の早期から急速に進行する、希少な遺伝性の筋疾患です。世界では、男児の約5,000人に1人程度で発症するといわれており、女児では非常にまれです4。DMDは、歩行能力、上肢機能、肺機能、心機能が失われ4-6、致死的な転帰を辿ります。DMDと診断された方はフルタイムでの介護が必要となり、中でも親による介護が最も多いです4-6。また学業や仕事や家庭生活を行うことが困難となり、うつ病や身体的な痛みを患うことがあります。
DMDは、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子の突然変異が原因で発症します。ジストロフィンは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分です。DMD遺伝子の変異により、DMDでは機能性ジストロフィンを体内で産生できなくなり、筋細胞は損傷に対する感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が徐々に進行します5,6。
エレビジスについて
エレビジスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する遺伝子治療用製品で、標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、本品により短縮型ジストロフィンの発現を介し、DMDの原因に働きかけるようデザインされています。日本においてDMDを対象として希少疾病用再生医療等製品の指定を受けています。米国において、DMDに対する初の遺伝子治療用製品として、2023年6月に承認されています。また、欧州でも2024年5月に申請しています。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
出典:
- Roche announces new results from EMBARK demonstrating significant sustained benefits of Elevidys in ambulatory individuals with Duchenne muscular dystrophy (DMD). Available from: https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-01-27
- [Ad hoc announcement pursuant to Art. 53 LR] Roche announces EMBARK trial in Duchenne muscular dystrophy (DMD) did not reach primary endpoint, but shows positive efficacy outcomes on all timed functional key endpoints. Available from: https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2023-10-30
- A Gene Transfer Therapy Study to Evaluate the Safety and Efficacy of Delandistrogene Moxeparvovec (SRP-9001) in Participants With Duchenne Muscular Dystrophy (DMD) (EMBARK). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05096221?intr=delandistrogene%20moxeparvovec&rank=7(2025年5月アクセス)
- Salvatore Crisafulli et al, Global epidemiology of Duchenne muscular dystrophy: an updated systematic review and meta-analysis. Orphanet J Rare Dis. 2020 Jun 5;15(1):141
- David J Birnkrant et al, Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 1: diagnosis, and neuromuscular, rehabilitation, endocrine, and gastrointestinal and nutritional management. Lancet Neurol. 2018 Mar;17(3):251-267
- 一般社団法人日本神経学会 デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン. https://neurology-jp.org/guidelinem/dmd.html(2025年5月アクセス)
以上
本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部
- 報道関係者の皆様
- メディアリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0881
- mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
- 投資家の皆様
- インベスターリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0554
- mailto: ir@chugai-pharm.co.jp