中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。
2025年03月27日
- 医薬品
- 研究開発
抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®」小児期発症の難治性に至っていない頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群に対する承認取得について
中外製薬株式会社
全薬工業株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:橋本 弘一、以下「全薬工業」)および中外製薬株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 CEO:奥田 修、以下「中外製薬」)は、両社で共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®点滴静注100 mg、同500 mg」[一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え)](以下「リツキサン」)について、本日、製造販売業者である全薬工業が、小児期発症の難治性に至っていない「頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群」に対する適応追加の承認*1を厚生労働省より取得したことをお知らせいたします。
ネフローゼ症候群は、腎臓を構成するネフロンにおける糸球体スリット膜の障害により、高度蛋白尿と低アルブミン血症が生じた結果、全身性浮腫をきたす病態の総称です1)。小児期に発症する特発性ネフローゼ症候群は小児の慢性腎疾患で最も頻度の高い原因不明の指定難病で2)、そのうち約80~90%は、第一選択薬であるステロイドにより速やかに寛解するステロイド感受性ネフローゼ症候群に分類されるものの、そのうち約50%は、ステロイドによっても比較的短期間に再発を繰り返す「頻回再発型ネフローゼ症候群」、あるいはステロイドの減量又は中止に伴い再発する「ステロイド依存性ネフローゼ症候群」に分類されます3)。「頻回再発型あるいはステロイド依存性ネフローゼ症候群」に対しては、ステロイドの長期投与による副作用を軽減する目的で免疫抑制薬の導入が推奨されています4)。しかしながら、免疫抑制薬を用いても頻回再発型あるいはステロイド依存性のままステロイドからの離脱ができず難治性に至る方や、成人期に移行する方が存在すること2)、免疫抑制薬の長期投与による重大な副作用の発現が問題となっています4)。
リツキサンは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体であり、標的となるB細胞をヒトの体内に備わった免疫系を用いて傷害します。ネフローゼ症候群の病因や疾患活動性にはB細胞の影響も示唆されており5) 6) 7)、リツキサンによりB細胞を除去することで、ネフローゼ症候群への治療効果が期待されます。
リツキサンは、2014年8月に小児期発症の「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)」を効能又は効果として承認され、2024年9月に小児期発症の「難治性のネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性を示す場合)」を対象に承認されています。
難治性に至っていない「頻回再発型あるいはステロイド依存性ネフローゼ症候群」については、医師主導治験*2において、主要評価項目である無再発期間が、リツキシマブ群でプラセボ群より有意に延長し(ハザード比:0.266[95%信頼区間:0.120~0.592]、p= 0.0006[層別log-rank検定])、リツキシマブによる再発抑制効果が示されました。また、有害事象の発現割合はリツキシマブ群とプラセボ群で大きな違いは認められず、副作用の発現割合はリツキシマブ群で高い傾向にありましたが、確認された有害事象及び副作用は、これまでに国内外で本剤の既承認の適応症に使用されて報告された有害事象及び副作用と同様でした。この結果から、全薬工業が2024年4月26日に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、今回の承認取得に至りました。
全薬工業および中外製薬は、ネフローゼ症候群の治療にリツキサンがさらに貢献できるよう、より一層の協力体制で取り組んでまいります。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
- *1 リツキサンのネフローゼ症候群に対する効能又は効果(下線部:今回の承認範囲)
- 〇下記のネフローゼ症候群
・ 頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群
・ 難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型、ステロイド依存性あるいはステロイド抵抗性を示す場合)
- *2 小児期発症のネフローゼ症候群に対するIDEC-C2B8の多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化並行群間比較試験(JSKDC10)8) 9)
出典:
- 第I章総論 1. 疾患概念・病因. 日本小児腎臓病学会監修, 難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金) 作成. 小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020, 診断と治療社, 2020, pp2-4.
- Iijima K, Sako M, Nozu K. VII. 小児特発性ネフローゼ症候群. 日本内科学会雑誌. 2020; 109(5): 926-932.
- 第I章総論 5. 予後. 日本小児腎臓病学会監修, 難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金) 作成. 小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020, 診断と治療社, 2020, pp15-16.
- 第II章治療. 2. 各論. 日本小児腎臓病学会監修, 難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金)作成. 小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020, 診断と治療社, 2020, pp39-48.
- Tani Y, Kida H, Abe T, et al. B lymphocyte subset patterns and their significance in idiopathic glomerulonephritis. Clin Exp Immunol. 1982; 48(1): 201-204.
- Yokoyama H, Kida H, Tani Y, et al. Immunodynamics of minimal change nephrotic syndrome in adults T and B lymphocyte subsets and serum immunoglobulin levels. Clin Exp Immunol. 1985; 61(3): 601-607.
- Garin EH, Diaz LN, Mu W, et al. Urinary CD80 excretion increases in idiopathic minimal-change disease. J Am Soc Nephrol. 2009; 20(2): 260-266.
- Nagano C, Sako M, Kamei K, et al. Study protocol: multicenter double-blind, randomized, placebo-controlled trial of rituximab for the treatment of childhood-onset early-stage uncomplicated frequently relapsing or steroid-dependent nephrotic syndrome (JSKDC10 trial). BMC Nephrol. 2019; 20(1): 293.
- Japan Registry of Clinical Trials(jRCT)臨床研究等提出・公開システム
https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT1091220380(アクセス日:2025年3月)
以上
本件に関するお問い合わせ先
- 全薬ホールディングス株式会社
- グループ総務部 広報課
- Tel:03-3946-1123
- 中外製薬株式会社 広報IR部
- メディアリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0881
- Mail:pr@chugai-pharm.co.jp
- インベスターリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0554
- Mail:ir@chugai-pharm.co.jp