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2024年02月15日

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脊髄性筋萎縮症治療薬エブリスディ、未発症に対する適応拡大、および生後2カ月未満に対する用法用量追加の承認申請

  • 未発症の脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳児に対し、エブリスディの有効性と安全性を示した海外第II相RAINBOWFISH試験に基づく申請
  • SMAに対して承認されている唯一の経口薬として、生後2カ月未満の乳児を含め、より発症前の早期治療への貢献を見込む

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、脊髄性筋萎縮症治療薬「エブリスディ®ドライシロップ60mg」(一般名:リスジプラム)について、未発症の脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)に対する適応拡大、および生後2カ月未満の患者に対する用法及び用量追加の承認申請を、本日、厚生労働省に行いましたのでお知らせいたします。なお、本剤は「脊髄性筋委縮症」に対して、2019年3月に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており、今回の適応拡大申請についても優先審査の対象となります。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「SMAは症状が現れる前に治療を開始することで治療効果を最大化できる可能性があり、未発症SMAへの適応拡大申請には大きな意義があります。また、年齢問わず生後間もない乳児から本剤をお使いいただけるようになることで、診断後速やかに治療を開始できる可能性があります。SMAに対して承認されている唯一の経口薬であるエブリスディをお役立ていただけるよう、承認取得に向けて引き続き尽力してまいります」と語っています。

 今回の承認申請は未発症のSMA乳児を対象とした海外第II相臨床試験(日本を含まない)であるRAINBOWFISH試験の成績に基づいています。一般的に、SMN2遺伝子のコピー数は少ないほど重症となり1RAINBOWFISH試験には、SMN2遺伝子のコピー数が2以上の乳児が組み入れられました。

 RAINBOWFISH試験は主要評価項目を達成し、主要有効性解析対象集団(n=5)の80%が、1年間のエブリスディによる治療後に、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の評価により、支えなしで5秒以上座位を保持可能でした。主要有効性解析対象集団は、ベースライン時にSMN2遺伝子のコピー数が2で複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)の振幅が1.5 mV以上の乳児としました。CMAPの振幅は外部刺激に対する筋肉の反応を測定するもので、振幅が小さいほどSMAの発症および運動機能低下がみられます。主要有効性解析対象集団に含まれる乳児は、無治療の場合I型SMAの自然経過と同様に進行すると予想されますが、無治療のI型SMAの方々は座位を保持できません2。また、本試験に登録された26名の乳児のうち、試験開始時にCMAP振幅が低値(1.5 mV未満)であったすべての乳児を含む81%の乳児が支えなしで30秒間座位を保持でき、多くは立位の維持や歩行が可能でした。

 有害事象は、SMAに関連する事象よりも乳児特有の事象が多くみられました。ほとんどの有害事象はエブリスディと関連なしと判断され、死亡、休薬または投与中止に至った有害事象は認められませんでした。主な有害事象は、生歯、COVID-19、発熱、胃腸炎、湿疹および便秘でした。RAINBOWFISH試験の主要解析で認められた有害事象は、SMAを対象とした他のエブリスディの試験で認められた有害事象と概ね同様でした。

 SMAは、発症前に運動ニューロンの脱落が始まるとされています3,4。早期診断において重要な役割を果たしている新生児スクリーニングを経て、より早い段階に治療を開始することでより高い治療効果を得られる可能性があります。エブリスディが診断後すぐに治療が開始可能になることで、高いメディカルバリューを提供することが期待されます。

【参考情報】
Majority of newborn babies with spinal muscular atrophy (SMA) treated with Roche’s Evrysdi able to sit independently after 1 year of treatment (2023年10月4日ロシュプレスリリース)
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2023-10-04

RAINBOWFISH試験について
 RAINBOWFISH試験(NCT03779334)は、遺伝学的にSMAと診断され症状が発現していない乳児(初回投与時点で生後6週間以内)を対象に、エブリスディの有効性、安全性、薬物動態及び薬力学を評価する非盲検、単群、多施設共同、海外第II相臨床試験です。本試験には26名の乳児が登録されました。主要評価項目は、主要有効性解析対象集団において、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の粗大運動スケールで評価した投与開始12カ月時点で支えなしで5秒以上座位が保持できる乳児の割合でした。本試験に日本からは参加していません。

エブリスディについて
 エブリスディは、SMN(survival motor neuron)タンパクの欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤です。SMNタンパクレベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されています。SMNタンパクは全身に見られ、運動神経と運動機能の維持に重要です。2020年8月に米国、2021年3月に欧州で、同年6月に日本で承認を取得しています。

脊髄性筋萎縮症(SMA)について5
 SMAは、遺伝性の神経筋疾患であり、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示します6。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患です7

 上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典:

  1. Yamamoto T, et al. Brain Dev. 2014; 36: 914-20.
  2. 脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の手引き編集委員会 編.脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の手引き.メディカルレビュー社; 2022.
  3. Kolb SJ, et al. Natural history of infantile-onset spinal muscular atrophy. Ann Neurol. 2017 Dec;82(6):883-891.
  4. Govoni A, et al. Time Is Motor Neuron: Therapeutic Window and Its Correlation with Pathogenetic Mechanisms in Spinal Muscular Atrophy. Mol Neurobiol. 2018 Aug;55(8):6307-6318.
  5. With your SMA. 脊髄性筋萎縮症(SMA)にかかわるすべての人と歩む. Available from: https://with-your-sma.jp/. Accessed February 2024.
  6. Farrar MA and Kiernan MC. The genetics of spinal muscular atrophy: progress and challenges. Neurotherapeutics. 2015;12:290-302.
  7. Kolb SJ and Kissel JT. Spinal muscular atrophy. Neurol Clin. 2015;33:831-46.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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