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2024年02月08日
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バビースモ、網膜静脈閉塞症(RVO)を対象とした第III相臨床試験の新たな長期データにおいて、持続的な網膜における滲出液のドライ化と視力向上を示す
News Summary
本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が2月1日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2024-02-01bをご覧ください。
ロシュ社は2月1日、バビースモ®(ファリシマブ)の網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症または半側網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫に対する2つの第III相グローバル臨床試験(BALATON試験およびCOMINO試験)の72週時点における新たなデータを発表しました1,2。網膜静脈閉塞症(RVO)治療はこれまで通常1~2カ月ごとに実施されているのに対し、BALATON試験ではバビースモの投与を受けている患者さんの約60%、COMINO試験では最大48%の患者さんが投与間隔を3~4カ月まで延長することができました1-4。また、両試験の開始24週時点で達成された視力の向上と滲出液のドライ化は1年以上維持されました。滲出液のドライ化は重要な臨床的指標であり、網膜に生じる過剰な液体による浮腫は、視覚の歪みや霧視と関連しているとされています5。両試験において、安全性プロファイルは過去の試験と同様でした。
試験の結果は、2024年2月3日に米国フロリダ州のバスコム・パルマー眼科研究所によって開催される「Angiogenesis, Exudation, and Degeneration 2024」でバーチャルミーティングで発表されました。
両試験とも、最高矯正視力(BCVA、メガネ等で矯正した場合を含め、視力表の文字を読む際に達成可能な最高の状態における視力)スコアのベースラインからの平均変化量を評価しました。また、両試験では、滲出液による網膜の肥厚について、中心領域網膜厚(CST)を測定することにより評価しました。なお、CSTの減少は改善を示します。これらの結果、試験開始24週時点で達成された視力の向上および滲出液の減少は、72週時点まで維持されることが示されました。
網膜静脈分枝閉塞症の試験結果(BALATON試験)1
- 視力の向上(主要・副次的評価項目):72週時点で、一貫してバビースモの投与を受けた患者さんは視力表において18.1文字向上し、アフリベルセプトからバビースモに切り替えた患者さんでは18.8文字向上しました。試験開始24週時点における視力向上は、バビースモの投与を受けた患者さんで+16.8文字、アフリベルセプトの投与を受けた患者さん(バビースモ移行前)で+17.5文字でした。
- 滲出液のドライ化(副次的評価項目):72週時点で、一貫してバビースモの投与を受けた患者さんは、CSTに310.9µmの減少が認められ、アフリベルセプトからバビースモに切り替えた患者さんでは307µmの減少が認められました。試験の最初の24週時点におけるCSTの減少量は、バビースモの投与を受けた患者さんで314.5µm、アフリベルセプトの投与を受けた患者さん(バビースモ移行前)で307.6µmでした。
網膜中心静脈閉塞症または半側網膜静脈閉塞症の試験結果(COMINO試験)2
- 視力の向上(主要・副次的評価項目):72週時点で、一貫してバビースモの投与を受けた患者さんは視力表で16.9文字向上し、アフリベルセプトからバビースモに切り替えた患者さんでは17.1文字向上しました。試験開始24週時点における視力向上は、バビースモの投与を受けた患者さんで+16.9文字、アフリベルセプトの投与を受けた患者さん(バビースモ移行前)で+17.3文字でした。
- 滲出液のドライ化(副次的評価項目):72週時点で、一貫してバビースモの投与を受けた患者さんは、CSTに465.9µmの減少が認められ、アフリベルセプトからバビースモに切り替えた患者さんでは、460.6µmの減少が認められました。試験の最初の24週時点におけるCSTの減少量は、バビースモの投与を受けた患者さんで462.3µm、アフリベルセプトの投与を受けた患者さん(バビースモ移行前)で447.8µmでした。
バビースモは、血管の安定性を回復させるためアンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)を中和することにより、視力を脅かす恐れのある多くの網膜疾患の原因である2つの経路を標的とし阻害するよう独自に設計され、承認された眼科領域初のバイスペシフィック抗体です6-9。
現在までに、新生血管を伴う加齢黄斑変性および糖尿病黄斑浮腫の治療薬として世界90カ国以上で承認され、うち25カ国以上で公的償還され、世界中で250万本以上流通しています10。
BALATON試験およびCOMINO試験について1,2
BALATON(NCT04740905)試験およびCOMINO(NCT04740931)試験は、ランダム化、多施設共同、二重遮蔽、第III相グローバル臨床試験であり、バビースモ(ファリシマブ)の有効性および安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。最初の20週間は、治験参加者を1:1の割合でバビースモ(6.0 mg)またはアフリベルセプト(2.0 mg)の月1回注射を6カ月間受ける群にランダム化しました。24~72週に、個別の投与間隔レジメンに従い、すべての治験参加者にバビースモ(6.0 mg)を最長4カ月間隔で投与しました。
BALATON試験は、網膜静脈分枝閉塞症患者553例を対象として実施しました。COMINO試験は、網膜中心静脈閉塞症または半側網膜静脈閉塞症の患者729例を対象に実施しました。各試験の主要評価項目は、24週時点での最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量です。0~24週時点の副次的評価項目は、中心領域網膜厚(CST)の24週目までのベースラインからの変化量です。24~72週時点の副次的評価項目は、BCVAのベースラインからの変化量および投与期間と延長期間の治験参加者の割合です。
網膜静脈閉塞症(RVO)について
RVOは、網膜血管疾患による視力喪失において2番目に多い原因であるとされています。世界で2,800万人(主に60歳以上)が罹患していると推定され、重度かつ急性の視力喪失に至る可能性があります11,12。RVOでは、アンジオポエチン-2(Ang-2)濃度が上昇し、Ang-2発現の増加が血管内皮増殖因子(VEGF)とともに疾患の進行を促すと考えられています13,14。RVOでは、静脈が閉塞して網膜の正常な血流が制限され、黄斑浮腫と呼ばれる出血、体液の漏出、網膜の腫れが生じ、通常、患部の眼に急性の無痛性の視力障害が生じます12,15,16。現在、RVOに伴う黄斑浮腫の治療は、抗血管内皮増殖因子製剤の硝子体内注射を繰り返し行います15。RVOには主に2種類あります。このうち網膜静脈分枝閉塞症は、世界で2,300万人以上が罹患し、網膜静脈の4つの小さな「分枝」のいずれかが閉塞すると発症します。網膜中心静脈閉塞症は、世界で400万人以上が罹患しており、眼の網膜中心静脈が閉塞すると発症します11,16。
バビースモ(ファリシマブ)について
バビースモは眼科領域において承認された初のバイスペシフィック抗体です6,7。アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)を中和することにより、視力を脅かす多くの網膜疾患の原因である2つの経路を標的とし、阻害します。Ang-2とVEGF-Aは、血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こすとされています。バビースモはAng-2とVEGF-Aが関与する経路を遮断することで、血管を安定させるよう設計されています8,9。バビースモは、新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬として、米国、日本、英国、EUを含む世界90カ国で承認されており、網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫の治療薬として、米国で承認されています。その他の規制当局による審査は継続中です6,7,10,17,18。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
【出典】
- Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab in participants with macular edema secondary to branch retinal vein occlusion (BALATON) [Internet; cited January 2024]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04740905.
- Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab in participants with macular edema secondary to central retinal or hemiretinal vein occlusion (COMINO) [Internet; cited January 2024]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04740931.
- U.S. Food and Drug Administration (FDA). Highlights of prescribing information, Aflibercept 2 mg. 2011. [Internet; cited January 2024]. Available from: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2022/125387s076lbl.pdf.
- U.S. FDA. Highlights of prescribing information, Lucentis. 2006. [Internet; cited January 2024]. Available from: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2014/125156s105lbl.pdf.
- U.S National Institutes of Health - National Eye Institute. Macular Edema. 2023. [Internet; cited January 2024.] Available from: https://www.nei.nih.gov/learn-about-eye-health/eye-conditions-and-diseases/macular-edema.
- U.S. FDA. Highlights of prescribing information, Vabysmo. 2022. [Internet; cited January 2024]. Available from: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2022/761235s000lbl.pdf.
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- Roche data on file.
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- Moorfields Eye Hospital, United Kingdom National Health Service Foundation Trust. RVO [Internet; cited January 2024]. Available from: https://www.moorfields.nhs.uk/condition/retinal-vein-occlusion.
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- Regula JT, et al. Targeting key angiogenic pathways with a bispecific CrossMab optimized for neovascular eye diseases. EMBO Molecular Medicine. 2016;8:1265–88.
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- Chugai obtains regulatory approval for Vabysmo, the first bispecific antibody in ophthalmology, for neovascular age-related macular degeneration and diabetic macular edema [Internet; cited January 2024]. Available from: https://www.chugai-pharm.co.jp/english/news/detail/20220328160002_909.html.
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以上
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