中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。
2023年10月31日
- 医薬品
- 研究開発
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するEMBARK試験において、主要評価項目は未達の一方、時間機能に関する重要な副次的評価項目はいずれも良好な結果を示す
News Summary
本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が10月30日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2023-10-30をご覧ください。
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーの4~7歳の男児において、主要評価項目である52週時点では運動機能を評価するノース・スター歩行能力評価(NSAA)は達成しなかったが、数値上の向上は認められた
- 事前に規定された重要な副次的評価項目(立ち上がるまでの時間、歩行テスト)ではいずれも、臨床的に意義があり、統計学的に有意な改善が示された
- 新たな安全性シグナルは認められず、良好な忍容性が確認された
- 今後の開発に向けデータの詳細は評価中であり、ロシュ社は規制当局と協議を予定
ロシュ社は10月30日、歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィーの4歳~7歳の男児を対象としたElevidysTM(delandistrogene moxeparvovec)のグローバル第III相ランダム化二重盲検多施設共同EMBARK試験のトップライン結果を発表しました。ノース・スター歩行能力評価(North Star Ambulatory Assessment:NSAA)による総スコアについて、52週時点では、Elevidys群は2.6ポイントの向上であったのに対し、プラセボ群は1.9ポイントの向上でした(0.65、125例、p=0.24)。
事前に規定された時間機能に関する重要な副次的評価項目(床から立ち上がるまでの時間、10メートルの歩行時間)はいずれも臨床的に意義があり、統計学的に有意な改善が認められました。いずれの評価項目も疾患進行および歩行不能の予後因子です。また事前に規定された副次的評価項目であるStride Velocity 95th Centile(SV95C)では臨床的に意義があり、統計学的に有意な改善が認められました。SV95Cは日中の最高歩行速度を測定するウェアラブルデバイス(Syde®)を用いた、EMAに検証された新規のデジタル評価項目です。4段上るまでの時間の副次的評価項目においても良好な結果が認められ、Elevidysの方が優れていました。
試験の詳細は解析中であり、今後の開発計画について検討するために規制当局と協議予定です。試験の詳細な結果は、今後の医学系学会で発表され、医学論文に掲載される予定です。
事前に規定した機能に関する重要な副次的評価項目は52週時点において、Elevidys群はプラセボ群と比較して、臨床的に意義のある改善が示されました。
機能評価項目:
立ち上がるまでの時間 |
プラセボとの最小二乗平均値の差(秒) |
全体(125名) |
-0.64(p=0.0025) |
4~5歳(59名) |
-0.50 |
6~7歳(66名) |
-0.78 |
10メートルの歩行時間 |
プラセボとの最小二乗平均値の差(秒) |
全体(125名) |
-0.42(p=0.0048) |
4~5歳(59名) |
-0.33 |
6~7歳(66名) |
-0.52 |
【参考情報】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療薬 delandistrogene moxeparvovec(SRP-9001)の導入契約締結について(2021年12月16日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20211216150001_1177.html
EMBARK試験について
EMBARK試験は、DMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児を対象に、Elevidysの安全性及び有効性を評価する国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験です。被験者は、本試験のパート1又はパート2のいずれかでElevidysの単回投与を受けました。試験は継続中です。
パート1では、被験者125名は年齢(4~5歳、6~7歳)又はスクリーニング時のNSAA総スコア(22以下、22超)によりランダム化され、delandistrogene moxeparvovec製剤1.33 x1014 vg/kg又はプラセボが投与され、52週間にわたり追跡調査を受けました。パート2では、パート1でプラセボ投与を受けた被験者にはElevidysが、Elevidys投与を受けた被験者にはプラセボが投与され、52週にわたり追跡調査を受けます。すべての被験者に対し盲検性が維持されました。
本試験の主要評価項目は、52週時点のNSAAによる総スコアのベースラインからの変化量です。副次的評価項目は以下のとおりです。
- ウェスタンブロット法により測定した、生検により採取した筋組織における12週時点のdelandistrogene moxeparvovec micro-dystrophin発現量(パート1)
- 床から立ち上がるまでの時間の変化(ベースラインから投与52週時点まで)
- 10メートルの歩行時間の変化(ベースラインから投与52週時点まで)
- ウェアラブルデバイスSyde®を用いたstride velocity 95th centileの変化(ベースラインから投与52週後まで)
- 100メートルの歩行時間の変化(ベースラインから投与52週時点まで)
- 4段上るまでの時間の変化(ベースラインから投与52週時点まで)
以下の以下の評価項目については結果はまだ得られていません。
- Patient Reported Outcomes Measurement Information System®(PROMIS®)における運動性スコアの変化(ベースラインから投与52週時点まで)
- PROMIS®における上肢スコアの変化(ベースラインから投与52週時点まで)
- 投与52週時点におけるNSAAで評価したスキルの獲得又は改善数
ElevidysTMについて
ElevidysTM(delandistrogene moxeparvovec、SRP-9001)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対して初めて承認された遺伝子治療薬であり、標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、Elevidysにより短縮型ジストロフィンの発現を介し、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因に働きかけるようデザインされています。本剤は静脈内投与による単回投与製剤である。DMD遺伝子のエクソン8及び/又は9に欠失変異がある患者には禁忌です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、小児の早期から急速に進行する、希少な遺伝性の消耗性筋疾患です。世界では、男児の約3,500~5,000人に1人が生まれつきデュシェンヌ型筋ジストロフィーですが、女児では非常にまれです。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは全員、歩行能力、上肢機能、肺機能、心機能が失われ、平均余命は28年です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された方はフルタイムでの介護が必要となり、中でも親による介護が最も多いです。また通常の仕事や家庭活動を行うことが困難となり、うつ病や身体的な痛みを患うことがあります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子の突然変異が原因で発症します。ジストロフィンは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分です。DMD遺伝子の変異により、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは機能性ジストロフィンを体内で産生できなくなり、筋細胞は損傷に対する感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が徐々に進行します。
参考情報
delandistrogene moxeparvovecは国内では中外製薬が開発中であり、日本からはEMBARK試験に参加しています。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
以上
本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部
- 報道関係者の皆様
- メディアリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0881
- mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
- 投資家の皆様
- インベスターリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0554
- mailto: ir@chugai-pharm.co.jp