• 抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患、自己免疫介在性脳炎のいずれに対しても承認された治療法がなく、アンメットメディカルニーズの高い中枢神経系の自己免疫疾患
• 各疾患に対しグローバル第III相臨床試験が進行中

　中外製薬株式会社（本社：東京、代表取締役社長 CEO：奥田 修）は、中外製薬が創製したpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体エンスプリング^®［一般名：サトラリズマブ（遺伝子組換え）］について、厚生労働省より抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患（MOGAD）および自己免疫介在性脳炎（AIE）が予定される効能又は効果として、先駆的医薬品の指定を受けたことをお知らせいたします。

　代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「エンスプリングが、承認された治療薬のないMOGADおよびAIEに対する画期的な治療薬候補として、厚生労働省より認められたことを大変嬉しく思います」と述べるとともに、「新たな治療法を待ち望む患者さんに、エンスプリングをいち早くお届けできるよう、それぞれの疾患を対象とした現在実施中のグローバル第III相臨床試験をロシュ社と協働で進めてまいります」と語っています。

先駆的医薬品指定制度について
　先駆的医薬品指定制度は、一定の要件を満たす画期的な医薬品について、開発の早期段階から対象品目に指定し、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮し、早期の実用化を目指すものです。この制度では、審査期間は6カ月以内を目指しています。

エンスプリングについて
　エンスプリングは中外製薬が創製した、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、当社独自のリサイクリング抗体^®技術を適用した初めての薬剤です。視神経脊髄炎スペクトラム障害（NMOSD）に対し、日米欧を含む75カ国以上で承認されています。現在、全身型重症筋無力症、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患（MOGAD）¹、自己免疫介在性脳炎（AIE）²に対しグローバル第III相臨床試験が進行中です。

抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患（MOGAD）について
　MOGADは、病原性自己抗体である抗MOG抗体が、中枢神経系の神経線維のミエリン鞘上にあるMOGに結合することで脱髄が生じる自己免疫疾患で、視神経、脊髄、脳に炎症などの症状（視力障害、感覚障害、運動障害、排尿障害など）を呈します^3,4。MOGADの再発抑制に対し承認された薬剤はなく、現在使用されている治療法では成人患者の8割が再発性の経過をたどる慢性疾患で、アンメットメディカルニーズが高い疾患です^3-9。炎症性サイトカインであるIL-6は、自己抗体の産生促進¹⁰や炎症作用の誘導¹¹などを介して、MOGADの発症に関与している可能性があります。日本の推定患者数は約1,700人です¹²。

自己免疫介在性脳炎（AIE）について
　AIEは、中枢神経系の神経細胞に対する免疫細胞による直接傷害や病原性自己抗体による機能障害で生じる自己免疫疾患で¹³、抗NMDA受容体脳炎、抗LGI1抗体脳炎などがあります¹⁴。意識障害や記憶障害、痙攣様発作などの症状が認められ、致死的な経過をたどることがあります¹⁴。AIEに対して承認された薬剤はなく、現在使用されている治療法では十分な有効性・安全性は認められておらず、アンメットメディカルニーズが高い疾患です^13,14。炎症性サイトカインであるIL-6は、自己抗体の産生促進¹⁰や炎症作用の誘導¹¹などを介して、AIEの発症に関与している可能性があります。日本の年間患者数は約1,000人です¹⁵。

【出典】

1. Clinical Trials.gov. A Study to Evaluate the Efficacy, Safety, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of Satralizumab in Patients With Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody-Associated Disease (Meteoroid). https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05271409. [インターネット：2023年2月確認]
2. Clinical Trials.gov. A Study To Evaluate The Efficacy, Safety, Pharmacokinetics, And Pharmacodynamics Of Satralizumab In Patients With Anti-N-Methyl-D-Aspartic Acid Receptor (NMDAR) Or Anti-Leucine-Rich Glioma-Inactivated 1 (LGI1) Encephalitis (Cielo) https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05503264 [インターネット：2023年2月確認]
3. 中島一郎：Brain and Nerve. 69(11):1331-1336,2017
4. Banwell B, et al. Lancet Neurol,. Jan 24 2023 available online. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1474442222004318?via%3Dihub [インターネット確認：2023年2月]
5. 中島一郎：神経治療 36(3):220-224,2019
6. Zamvil SS, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2(1):e62, 2015
7. Jarius S, et al. J Neuroinflammation. 2016 Sep 27;13(1):280.
8. Hyun JW, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2017 Oct;88(10):811-817.
9. Salama S, et al. Mult Scler Relat Disord. 2019 May;30:231-235.
10. Chihara N, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2011 Mar 1; 108(9): 3701-6
11. Serada S, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2008; 105(26): 9041-6.
12. 第63回日本神経学会.[O-17-4]抗MOG抗体関連疾患を対象とした全国疫学調査（一次調査報告）
13. 飯塚高浩：自己免疫性脳炎およびその類縁疾患における最近の進歩 臨床神経 2019;59:491-501.
14. 高橋幸利：臨床神経学 52(11):836-839,2012
15. 大石真莉子, 他：第60回日本神経学会学術大会 Pj-051,2019