中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2023年02月07日

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クロバリマブ、生命にかかわりうる希少な血液疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する第III相国際共同試験において良好な結果を示す

  • 補体阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症患者さんを対象としたCOMMODORE 2試験は有効性に関する二つの主要評価項目を達成し、クロバリマブによる疾患コントロールを示した
  • 既存のC5阻害剤からクロバリマブに切り替えた発作性夜間ヘモグロビン尿症患者さんを対象とした第III相COMMODORE 1試験により、ピボタル試験であるCOMMODORE 2試験の良好なベネフィット・リスクプロファイルが支持された
  • 本試験結果は世界各国の規制当局に提出し、今後の医学学会にて発表予定

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、補体阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)患者さんを対象にクロバリマブの有効性および安全性を評価する第III相国際共同臨床試験であるCOMMODORE 2試験において良好な結果が得られたことをお知らせいたします。本試験の有効性に関する二つの主要評価項目である、輸血回避および溶血(LDH値により測定される進行中の赤血球破壊)のコントロールは達成されました。本結果により、開発中の新規抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ(維持用量として4週間ごとに皮下投与)による疾患コントロールが達成され、現在の標準治療薬の一つであるエクリズマブ(2週間ごとに静脈内投与)に対する非劣性が検証されました。

 既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象としたもう一つの第III相国際共同臨床試験であるCOMMODORE 1試験の有効性および安全性のデータも、ピボタルなCOMMODORE 2試験の良好なベネフィット・リスクプロファイルを支持するものでした。

  代表取締役社長 CEOの奥田 修は「発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し、クロバリマブの標準治療に対する非劣性が検証されたことを喜ばしく思います。治療負担の軽減など未だアンメットメディカルニーズがある疾患に対し、皮下投与可能なクロバリマブは患者さんにとって新たな治療選択肢となります」と述べるとともに、「一日も早く患者さんに本剤をお届けできるよう、今後、日本とグローバルでの承認申請に向けてロシュと連携してまいります」と語っています。

 両試験のデータは世界各国の規制当局への提出と、今後の医学学会での発表が予定されています。中国で実施された第III相COMMODORE 3試験の肯定的なデータは、2022年12月10日に米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会において発表されました。同試験データは中華人民共和国 国家薬品監督管理局(NMPA:National Medical Products Administration)にBreakthrough Therapy指定のもと提出され、承認に向けた優先審査品目に指定されています。

【参考情報】
抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ、発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に、中国当局が優先審査指定(2022年8月10日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20220810160000_1245.html?year=2022&category=

クロバリマブ、生命にかかわりうる血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症に対し、4週ごとの皮下投与により疾患コントロールを達成(2022年12月20日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20221220163000_1267.html?year=2022&category=

COMMODORE 1、2試験について
 COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんを対象としてエクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検第III相試験です。本試験の有効性に関する二つの主要評価項目は輸血回避および溶血(LDH値により測定される進行中の赤血球破壊)のコントロールです。本試験に登録された成人被験者は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈投与群にランダムに割り当てられました。18歳未満の被験者は非ランダム化群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与されました1

 COMMODORE 1試験は、既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者さんを対象としてクロバリマブの安全性を評価するランダム化非盲検第III相試験です。本試験ではクロバリマブの安全性、忍容性、薬物動態、薬力学を評価します。この試験にはエクリズマブによる治療を受けている18歳以上の患者さんが登録されました。非ランダム化群には、エクリズマブによる治療を受けている小児(18歳未満)の患者さん、ラブリズマブによる治療を受けている患者さん、エクリズマブによる適応外の用量(PNHに対して承認されている900mg/回より多い用量、2週間より高頻度での投与のいずれかもしくは両方)を受けている患者さん、既存の治療薬に対して効果が見られない特定のC5遺伝子変異を有する患者さんも含まれています2

クロバリマブについて
 クロバリマブは、中外製薬が開発したリサイクリング抗体技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。クロバリマブは既存薬とは異なる部位で補体C5に結合することから、既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者さん(日本人PNH患者さんの約3.5%)において有効な治療選択肢となり得ます3
 現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)のほかに、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)、鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)に対して臨床試験を実施しています。加えて、ループス腎炎に対する海外臨床試験の開始に向けて準備中です。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
 PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です4。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和3年度末の医療受給者証保持者数は、959人でした5

 上記本文中に記載された薬剤名は、法律により保護されています。

出典:

  1. COMMODORE 2 (NCT04434092). [Internet; cited February 2023] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04434092.
  2. COMMODORE 1 (NCT04432584). [Internet; cited February 2023] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04432584.
  3. Fukuzawa T, et al. Long lasting neutralization of C5 by SKY59, a novel recycling antibody, is a potential therapy for complement-mediated diseases. 2017; Sci Rep 7, 1080.
  4. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド令和1年改訂版.
  5. 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)衛生行政報告例 / 令和3年度衛生行政報告例 統計表 年度報(2023年2月アクセス)

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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