中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2022年08月10日

  • 医薬品
  • 研究開発

抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ、発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に、中国当局が優先審査指定

  • クロバリマブの世界で初めての承認申請を中国当局が受理し、優先審査指定
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に中国で行われた第III相臨床試験(COMMODORE 3試験)に基づき、ロシュの中国法人が申請
  • 中国で2021年7月にBreakthrough Therapy指定を取得

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、中外製薬創製の抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ(開発コード:SKY59/RG6107)について、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)を対象とした承認申請を、中華人民共和国 国家薬品監督管理局(NMPA:National Medical Products Administration)が受理し、優先審査指定したことをお知らせいたします。申請は、日本と台湾を除く地域でクロバリマブの開発を担うエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(本社:バーゼル、CEO:セヴリン・シュヴァン)の中国法人によって行われました。クロバリマブのPNHに対する開発は、2021年7月に中国でBreakthrough Therapyに指定されています。

 PNHは、造血幹細胞に生じた遺伝子変異により、赤血球の異常な破壊(溶血)が起こる疾患です。日本の指定難病の一つであり(指定難病62)、主な症状として貧血症状やヘモグロビン尿、血栓症などが生じるほか、溶血によって様々な臓器障害を引き起こすことがあります。中国での罹患率は100万人あたり1-10人1とされる希少な疾患です。

  代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「クロバリマブの世界で初めての承認申請が中国薬事当局に受理されたことを嬉しく思います。難病である発作性夜間ヘモグロビン尿症は、長い間有効な治療法が限られ、病気の進行が生命に大きな影響を及ぼす重篤な疾患として知られていました。中国では主に輸血や対症療法が行われています。クロバリマブは中国のBreakthrough Therapy指定を取得しており、本申請は新たな治療選択肢を必要とする患者さんへの貢献に向けた大きな一歩です」と述べるとともに、「現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に2本のグローバル第III相臨床試験を実施しています。中国をはじめ、世界の患者さんに一日も早く新薬をお届けできるよう、引き続きロシュと協働してまいります」と語っています。

 クロバリマブは、中外製薬が誇る抗体エンジニアリング技術の一つであるリサイクリング抗体技術を用いて創製されました。リサイクリング抗体は、一つの抗体が抗原に繰り返し結合することで、抗体が体内でより長く作用できるよう設計されています。クロバリマブは、視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬エンスプリング®に続き、中外製薬が開発した2つ目のリサイクリング抗体です。創製にあたっては、中外製薬がシンガポールに有する研究子会社Chugai Pharmabody Research社が主導的な役割を果たしました。

 今回の承認申請は、中国で実施された多施設共同単群第III相臨床試験(COMMODORE 3試験)の主要解析結果に基づいて行われました。本試験は、抗補体C5抗体による治療を受けていないPNHの患者さんを対象とし、4週間隔の皮下投与によるクロバリマブの有効性、安全性、薬物動態および薬力学が評価されました。12歳以上の約50名の患者さんが登録され、少なくとも24週にわたってクロバリマブの投与を受けました。主要評価項目は、5週目から25週目においてLDHレベルに基づく所定の溶血コントロールを達成した患者の割合および25週時点で所定の輸血回避を達成した患者の割合におけるベースラインからの変化量でした。本試験の詳細な結果は、今後国際学会等で発表される予定です。

クロバリマブについて
 クロバリマブは、中外製薬が誇るリサイクリング抗体技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。
 現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)に対し、抗補体C5抗体による治療から切り替えた患者さんを対象としたCOMMODORE 1試験、未治療の患者さんを対象としたCOMMODORE 2試験の2本の国際共同第III相臨床試験を実施しています。このほか、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)、鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)に対して臨床試験を実施しています。加えて、ループス腎炎に対する海外臨床試験の開始に向けて準備中です。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
 PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です2。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和2年度末の医療受給者証保持者数は、927人でした3

 上記本文中に記載された薬剤名は、法律により保護されています。

出典:

  1. 陈芳菲,韩冰.补体抑制剂治疗阵发性睡眠性血红蛋白尿症的研究进展[J].临床血液学杂志,2021,34(11):819-824.
  2. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド令和1年改訂版.
  3. 難病情報センター. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/.(2022年8月アクセス)

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
  • 投資家の皆様
  • インベスターリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0554
  • mailto: ir@chugai-pharm.co.jp
  • Facebookのシェア(別ウィンドウで開く)
  • ポストする(別ウィンドウで開く)
  • Lineで送る(別ウィンドウで開く)
  • メールする(メールソフトを起動します)
トップに戻る