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2020年09月30日

ロシュ社がトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象としたテセントリクの複数の第III相臨床試験の最新データをESMOで発表

News Summary

本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が9月19日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2020-09-19.htmをご覧ください。

 ロシュ社は9月19日、欧州臨床腫瘍学会(ESMO: European Society for Medical Oncology)Virtual Congress 2020において、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)におけるテセントリク®(一般名:アテゾリズマブ)に関する3つの第III相臨床試験の最新データを発表しました。

 IMpassion031試験は、早期TNBCの術前薬物療法において、テセントリクと化学療法[パクリタキセル(アルブミン懸濁型)に続いてドキソルビシン、シクロホスファミド投与]の併用と、プラセボと化学療法[パクリタキセル(アルブミン懸濁型)に続いてドキソルビシン、シクロホスファミド投与]の併用を比較する試験です。同試験は、PD-L1の発現状況を問わない早期TNBC患者集団において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある病理学的完全奏効(pCR:pathological complete response)の改善を示し、主要評価項目を達成しました。ITT解析集団におけるpCRの割合は、テセントリクと化学療法併用群で57.6%(95%信頼区間:49.7-65.2)、プラセボと化学療法併用群で41.1%(95%信頼区間:33.6-48.9)であり、その差は16.5%ポイントでした[p=0.0044(片側検定)、有意性境界=0.0184]。また、テセントリクと化学療法の併用における安全性は、これまでにそれぞれの薬剤で認められている安全性プロファイルと同様であり、本併用療法による新たな安全性上の懸念は示されませんでした。

 転移性TNBCの一次治療としてテセントリクおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)の併用と、プラセボおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)の併用を比較したIMpassion130試験における全生存期間(OS:overall survival)の最終解析結果は、初回および2回目の中間解析と一貫した成績が得られました。ITT解析集団において、OSに関し両群間に有意な差異はみられませんでした。一方で、テセントリクとパクリタキセル(アルブミン懸濁型)併用群のPD-L1陽性集団については、臨床的に意義のあるOSの改善が認められ、テセントリクおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)併用群のPD-L1陽性集団は、プラセボおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)併用群と比べ、OS中央値で7.5カ月の延長を示しました(ハザード比0.67、95%信頼区間:0.53-0.86)。しかしながら、階層構造に基づいて統計解析を行う試験デザインであるため、この結果は検証的な位置づけではありません。テセントリクとパクリタキセル(アルブミン懸濁型)併用による安全性プロファイルは、同試験において既に報告されているものおよびこれまでにそれぞれの薬剤で認められているものと同様であり、長期フォローアップによって、新たな安全性上の懸念は示されませんでした。

 転移性TNBCの一次治療としてテセントリクとパクリタキセル併用群とプラセボとパクリタキセル併用群を比較した第III相臨床試験であるIMpassion131試験において、テセントリクとパクリタキセル併用群は、PD-L1陽性集団において無増悪生存期間(PFS: progression free survival)の統計学的な有意な延長を示しませんでした(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.60-1.12)。OSについては、副次的評価項目として統計学的な検出力を有するよう設計されておらず、また十分なイベント数に達していないため、明確に結論付けられないものの、PD-L1陽性の患者集団において、テセントリクおよびパクリタキセル併用群で劣る傾向が示されました[初回解析時(21%イベント発現時点)、PD-L1陽性集団におけるハザード比1.55、95%信頼区間:0.86-2.80。追加解析時(41%イベント発現時点)、PD-L1陽性集団におけるハザード比1.12、95%信頼区間:0.76-1.65]。なお、テセントリクとパクリタキセル併用における安全性は、これまでにそれぞれの薬剤で認められている安全性プロファイルと同様で、新たな安全性上の懸念は示されませんでした。

IMpassion031試験について
 IMpassion031試験は、未治療の早期TNBCを対象とした多施設共同二重盲検ランダム化第III相臨床試験です。本試験では、テセントリクおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)に続いてドキソルビシン、シクロホスファミドを併用する群と、プラセボおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)に続いてドキソルビシン、シクロホスファミドを併用する群を比較し、有効性および安全性を評価するものです。333名の患者さんが、1:1の割合で無作為に術前薬物療法のそれぞれの群に割り付けられました。テセントリクを含む群においては、術後薬物療法としてテセントリクが継続して投与されました。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1の発現が認められる患者さんにおける病理学的完全奏効(pCR)であり、American Joint Committee on Cancer(AJCC)の病期分類システムを使用して評価しました。IMpassion031試験は、TNBCにおけるテセントリクの有用性を示した2つ目の試験であり、早期TNBCにおけるテセントリクの有用性を示した初の試験となります。

IMpassion130試験について
 IMpassion130試験は、転移性または切除不能な局所進行乳がんに対して全身薬物療法を受けていないTNBCを対象とし、テセントリクおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)を併用する群と、プラセボおよびパクリタキセル(アルブミン懸濁型)を併用する群を比較し、有効性ならびに安全性、薬物動態を検討した多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検国際共同第III相臨床試験です。本試験では、902名の患者さんが2群に1:1の割合で割り付けられました。本試験の主要評価項目はRECISTv1.1に基づく主治医評価によるPFSとOSです。両主要評価項目はITT解析集団およびPD-L1の発現が認められる患者さんにおいて評価されています。副次評価項目は奏効率ならびに奏効期間、がん患者さんの健康関連QoL(Global Health Status/HRQoL)です。

IMpassion131試験について
 IMpassion131試験は、未治療の手術不能局所進行性または転移性TNBCを対象とした多施設共同二重盲検ランダム化第III相臨床試験です。本試験では、テセントリクおよびパクリタキセルを併用する群と、プラセボおよびパクリタキセルを併用する群を比較し、有効性および安全性を評価するものです。651名の患者さんが、2:1の割合で無作為にそれぞれの群に割り付けられています。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1の発現が認められる患者さんにおけるPFSであり、RECIST ver.1.1に基づき評価されました。副次的評価項目には、OS、客観的奏効率、効果持続期間が含まれています。

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)について
 日本人女性における乳がんの年間罹患者数は92,200人(2019年予測値)、また死亡者数は15,100人(2019年予測値)と推計されています。1)TNBCは、全乳がんの約15%を占め、他のタイプの乳がんに比べ、50歳未満の女性に多いことが特徴です。2-4)TNBCは、ホルモン受容体(エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体)の発現やヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)の過剰発現を伴わない悪性腫瘍と定義され、他のタイプの乳がんに比べ一般的に増殖能が高く、生存期間が短くなると言われています。3, 5)

参考情報
テセントリク、PD-L1陽性の手術不能又は再発トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への適応拡大および840 mg製剤の剤形追加に関するお知らせ(2019年9月20日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20190920153002_888.html

 なお、日本においてテセントリクは第III相臨床試験であるIMpassion130試験の結果に基づき、「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として、 アブラキサン® [パクリタキセル(アルブミン懸濁型)]*との併用にて2019年9月20日に厚生労働省より承認を取得しています。

  • *パクリタキセル(アルブミン懸濁型)とパクリタキセルは別の薬剤です。IMpassion131試験の対象であるテセントリクとパクリタキセル(タキソール®等)との併用については、国内では「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」の効能・効果においては、未承認の用法・用量です。

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典

  1. 国立がん研究センターがん情報サービス「2019年のがん統計予測」 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html アクセス日:2020年9月
  2. Yao H et al. Triple-negative breast cancer: is there a treatment on the horizon? Oncotarget. 2017;8(1):1913–1924.
  3. BreastCancer.org. What is Triple-Negative Breast Cancer? https://www.breastcancer.org/symptoms/diagnosis/trip_neg?what アクセス日:2020年9月
  4. Cancer Treatment Centers of America. Triple negative breast cancer risk factors.
    https://www.cancercenter.com/cancer-types/breast-cancer/risk-factors アクセス日:2020年9月
  5. Pal SK et al. Triple negative breast cancer: unmet medical needs. Breast Cancer Res Treat. 2011;125(3):627-636.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
  • メディアリレーションズグループ
  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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