• 中外製薬独自の抗体エンジニアリング技術Switch-Ig^®を適用した世界初のスイッチ抗体であるSTA551の非臨床研究の成果を、がん領域におけるトップジャーナルが採択
• STA551が、CD137アゴニスト作用を有するスイッチ抗体のコンセプト通りに作用することを動物において証明
• STA551は、本年3月より固形がんを対象とした第I相臨床試験を実施中

　中外製薬株式会社（本社：東京、代表取締役会長 CEO：小坂 達朗）は、当社が創製し現在、固形がんを対象として第I相臨床試験を実施中のスイッチ抗体STA551の非臨床研究の成果が、Cancer Discovery電子版に掲載されたことをお知らせいたします。Cancer Discovery誌は、米国癌学会（AACR）が発行する科学誌で、がん領域における画期的な非臨床・臨床研究を報告する世界のトップジャーナルに位置付けられています。

“Antibody to CD137 activated by extracellular adenosine triphosphate is tumor selective and broadly effective in vivo without systemic immune activation”
（https://cancerdiscovery.aacrjournals.org/content/early/2020/08/22/2159-8290.CD-20-0328）

　本研究では、以下の点が示されました。

• 固形がん組織中に高濃度に存在するとされるアデノシン3リン酸（ATP）依存的にCD137に結合し、アゴニスト活性を発揮する抗CD137アゴニスト抗体であるSTA551を創製したこと
• STA551がATP存在下においてはCD137に結合しT細胞を活性化するが、ATP非存在下においては結合せず活性化しないこと（in vitro）
• 複数のがん細胞株をそれぞれ移植した8種類のマウスモデル全てにおいて、STA551が抗腫瘍効果を示したこと（マウス）
• 従来の抗CD137アゴニスト抗体では全身性に誘導される免疫反応が、STA551では低減したこと（マウス）
• 動物を用いた毒性試験において、STA551に忍容性が認められたこと

　上席執行役員 研究、トランスレーショナルリサーチ統括の岡部尚文は、「当社が開発したSwitch-Ig^®を適用し、初めての臨床開発プロジェクトとなったSTA551の基礎研究の成果がCancer Discovery誌に掲載されたことを大変嬉しく思います。今回の論文掲載は、STA551自身の非臨床成績だけでなく、『病態組織に特異的に存在する分子（スイッチ分子）の存在下でのみ抗原に結合する』というスイッチ抗体が有するコンセプトも含め高く評価されたものと考えています」と述べるとともに、「中外製薬の強みを体現する抗体エンジニアリング技術は、従来の抗体医薬品での課題を解決するだけでなく、モダリティとしての抗体医薬品の可能性をさらに広げていけるものと確信しています。現在実施中の第I相臨床試験で、STA551がより良い安全性プロファイルと抗腫瘍効果を示し、患者さんの治療に貢献できる薬剤となることを大いに期待しています」と語っています。

　ヘルスケア産業のトップイノベーターを目指す中外製薬は、科学と独自の技術力を追求し、革新的医薬品およびサービスの提供を通じ世界の患者さんへの貢献を目指します。

STA551について
　STA551は、中外製薬が開発したSwitch-Ig^®を適用したスイッチ抗体です。腫瘍組織で高濃度に存在するとされているアデノシン3リン酸（ATP）をスイッチ分子として認識することで活性化し、標的抗原であるCD137に結合します。現在固形がんを対象とした第I相臨床試験を実施しています。

Switch-Ig^®について
　Switch-Ig^®は抗体の疾患部位特異性を高める技術です。従来の抗体は疾患部位だけでなく、正常組織でも標的抗原に結合してしまい、副作用が生じる等の問題が起こり得ます。Switch-Ig^®は疾患部位で特異的に高濃度になる分子（スイッチ分子）の存在下でのみ標的抗原に結合するようにデザインされた抗体であり、スイッチ分子の濃度が低い正常組織では標的抗原に反応しにくくなります。この技術を用いることで、抗体を疾患部位で特異的に反応させることができ、正常組織に結合することで生じる安全性上の問題や血漿中動態悪化の回避に繋がることが期待されます。

上記本文中に記載されたSwitch-Ig^®は、法律により保護されています。

以上