中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2020年07月29日

COVID-19関連肺炎による重症入院患者を対象としたアクテムラの 第III相COVACTA試験の最新情報について

  • 主要評価項目であるCOVID-19関連肺炎患者の臨床状態の改善および主要な副次評価項目である死亡率の低下は、いずれも未達
  • COVACTA試験は、重症COVID-19関連肺炎の患者集団を対象にアクテムラを評価した初の二重盲検プラセボ対照無作為化国際共同第III相試験
  • 中外製薬はロシュと協働して、抗ウイルス薬との併用での試験を含め、アクテムラの重症COVID-19関連肺炎治療に関する開発プログラムを継続

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:小坂 達朗)は、アクテムラ®(トシリズマブ)の第III相COVACTA試験において、主要評価項目である重症COVID-19関連肺炎による成人入院患者の臨床状態の改善を達成しなかったことをお知らせいたします。また4週目時点の死亡率の差など、主要な副次評価項目も未達でしたが、退院までの期間についてはアクテムラ投与群では20日、プラセボ投与群では28日(それぞれ中央値)でした。アクテムラに対する新たな安全性のシグナルは認められませんでした。本試験のデータの解釈には、さらなる詳細な解析が必要となります。試験結果は査読付き医学雑誌に提出する予定です。

 代表取締役社長 COOの奥田 修は、「COVID-19が世界中で未曾有の被害をもたらしています。残念ながら、主要評価項目は達成できませんでしたが、本試験により、重症COVID-19関連肺炎患者に対するアクテムラによるIL-6シグナル阻害の効果・安全性について有用なデータが得られたと考えています。本試験データを詳細に解析し、得られた知見を今後の開発に活かしていきます」と述べています。

 COVACTA試験は、アクテムラ静脈内投与と標準的な医療措置の併用の安全性および有効性を、プラセボと標準的な医療措置の併用と比較した試験です。主要評価項目は重症COVID-19関連肺炎による成人入院患者の臨床状態の改善であり、患者さんの臨床状態は集中治療や人工呼吸器、および酸素投与の必要性に基づく7カテゴリー順序尺度により評価されます。COVACTA試験は、重症COVID-19関連肺炎による成人入院患者を対象にアクテムラを評価する初の二重盲検プラセボ対照無作為化国際共同第III相臨床試験であり、米国、カナダ、欧州で実施されています。

COVACTA試験の主な有効性と安全性の概要

  • 主要評価項目は未達でした。4週目時点の7カテゴリー順序尺度を用いて評価した臨床状態において、アクテムラ投与群とプラセボ投与群の間に統計学的に有意な差は認められませんでした。[p=0.36、オッズ比(95%信頼区間)=1.19(0.81~1.76)、統計学的有意性がありオッズ比が1を超える場合,アクテムラが優位となります]。
  • アクテムラ投与群は、プラセボ投与群と比較し、退院または退院待機状態までの期間を短縮しました。退院または退院待機状態までの期間の中央値は、アクテムラ投与群では20日、プラセボ投与群では28日でした[期間の中央値(95%信頼区間):アクテムラ投与群=20.0(17.0~27.0)、プラセボ投与群=28.0(20.0~評価不能)、p=0.0370]。但し、主要評価項目は未達のため、その差について統計学的な有意性を判断することはできません。
  • 人工呼吸器未使用日数において、アクテムラ投与群とプラセボ投与群の間に統計学的に有意な差は認められませんでした[中央値はアクテムラ投与群で22日、プラセボ投与群で16.5日、中央値の差(95%信頼区間)=5.5(-2.8~13.0)、p=0.3202]。
  • 4週目時点の感染症の発現率は、アクテムラ投与群で38.3%、プラセボ投与群で40.6%、重篤な感染症の発現率は、アクテムラ投与群で21.0%、プラセボ投与群で25.9%でした。COVACTA試験では、アクテムラに対する新たな安全性のシグナルは認められませんでした。

 ロシュは、アクテムラのCOVID-19関連肺炎に対する治療薬としての評価をおこなうため、COVACTA試験に加え、REMDACTA試験を含む複数の臨床試験を開始しています。また、企業主導以外の臨床試験も数多く実施されています。なお、アクテムラはこれまでにCOVID-19関連肺炎に対する承認は得られていません。

【参考情報】
ロシュ社、重症COVID-19肺炎による入院患者を対象にActemra/RoActemraとレムデシビル併用の第III相臨床試験を開始(2020年5月28日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200528150001_986.html

COVACTA試験について

 COVACTA試験は、重症COVID-19関連肺炎による成人入院患者を対象として、アクテムラ静脈内投与と標準的な医療措置の併用の安全性および有効性をプラセボと標準的な医療措置の併用と比較して評価する、二重盲検プラセボ対照国際共同第III相臨床試験(COVACTA試験、NCT04320615)です。主要評価項目と副次評価項目は、4週目時点の臨床状態、死亡率、人工呼吸器、集中治療室に関する変数です。無作為化後60日間にわたり経過観察をおこないます。
 なお、COVACTA試験への国内からの参加はありません。

アクテムラについて

 アクテムラは、炎症性サイトカインの一種であるIL-6の作用を阻害する働きを持つ、当社創製の国産初の抗体医薬品です。国内では2005年6月に販売を開始し、点滴静注用製剤では関節リウマチをはじめ6つの適応症(キャッスルマン病、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(pJIA)、腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群、成人スチル病)、皮下注製剤では3つの適応症(関節リウマチ、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)で承認を取得しています。現在、世界110か国以上で承認されています。

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

  • 報道関係者の皆様
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  • Tel:03-3273-0881
  • mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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