特別委員会議長メッセージ

写真:寺本 秀雄

独立社外取締役
特別委員会議長
寺本 秀雄

取締役会における着目点

中外製薬は、日本を代表する製薬会社で、資本市場からの期待も高い一方、ロシュ社という支配株主が存在しており、社内/ロシュ社出身/社外が3分の1ずつという取締役構成です。社外取締役の打診を受けた際、少数株主代表としての役割を、より強く期待されていると認識しました。私がこれまでに培ってきた金融、企業経営、資本政策などの経験・知見を活用し、企業価値向上と少数株主の利益保護に寄与していくことが私の責務です。

社外取締役就任からの1年間、私が主に重視したのは2点です。1点目は、持続的な企業価値向上の観点として、将来の成長ドライバーについて逐次、質問するとともに、約7,000億円という潤沢なキャッシュの使途を確認・議論してきました。将来のR&DやM&Aなどにキャッシュを投下する戦略は持続的な新薬創出のために肝要であると理解しましたが、好調な業績を受けてキャッシュのさらなる増加も想定され、投資家にとっては資本政策が注目点です。引き続き十分に納得してもらえる説明が重要になると考えています。

そして、2点目はガバナンス面。特に特別委員会議長として利益相反リスクを適切に監督することを重視してきました。

ガバナンス面での課題、特別委員会の活動

取締役構成については、客観性や意思決定スピードの面でも有効に機能しており、現時点で変える必要性を感じていません。一般的に50%超の独立社外取締役比率が望まれていることは理解していますが、中外製薬・ロシュ社双方にとっての戦略的提携の価値最大化の観点で、ロシュ社経営陣やその経験者から取締役が一定割合選任されています。彼らは、適切な指摘や助言を行うとともに、執行陣をリスペクトし、適度な距離を保ちながら意志を尊重しています。特にESGに関して、時には欧州の先進的な規制に照らした率直な意見もありますが、建設的な議論を重視しており、私たち社外取締役にとっても、支配株主の経営陣と意見交換できることは非常に貴重かつ有用な機会だと思います。

一方、少数株主にとっては、構造的な利益相反リスクが内在することは確かであり、ロシュ社との取引等を審議し、少数株主利益を尊重する仕組みである特別委員会の役割は極めて重大です。翻って、利益相反リスクが払拭できれば、少数株主は、ロシュ社との戦略的提携のメリットを最大限に享受できるはずです。これらの考えは、2023年12月に示された東京証券取引所の公表にも沿ったものです。

特別委員会の具体的な活動としては、ロシュ社との導出・導入取引のみならず、ITインフラ構築などのロシュ社との協働案件についても検証対象とし、第三者間取引と同等の価格・品質・公正か否かを審議します。また、取引内容の重要度に鑑み、取締役会決議事項は事前審議、経営会議決議事項は事後審議としています。2023年の審議で取引の見直しを要する案件はありませんでしたが、今後の取引に際して留意すべき点について、指摘を1件行いました。本件指摘への対応済みの事項および今後の対応予定について、執行側より報告を受けました。

特別委員会の委員は、3名全員が各自のスキルセットのもと率直で客観的な議論を行っています。立石取締役は、モノづくりの観点やグローバルマネジメントの経験からの検証が的確ですし、増田監査役は百戦錬磨の弁護士として、一つひとつの取引と契約を、丁寧かつ多様な観点から検証しており、私としては非常に心強いメンバーです。

ただし、これらの検証・審議は容易ではありません。導出入契約の取引等は専門性が高いうえ、外部にベンチマークできる案件が少ないため、取引構造やプロセスの検討、類似案件からの考察などを重ねる必要があります。今後は、私たちが一層勉強するとともに、検証手法なども試行錯誤し、実効性やクオリティを上げていく所存です。時間も非常にかかるため、開催頻度も検討していきます。また、委員会活動の積極的な発信は重要であり、今後は投資家の方々との直接対話も必要だと捉えています。

2024年5月

  • Facebookのシェア(別ウィンドウで開く)
  • ポストする(別ウィンドウで開く)
  • Lineで送る(別ウィンドウで開く)
  • メールする(メールソフトを起動します)

委員会議長メッセージ

トップに戻る