中外製薬

SPECIAL INTERVIEW 01

“どれだけ前向きな気持ちで
治療にあたれるか”が、
私の闘病経験中の学びです

笠井信輔さん  Interview Vol.1

悪性リンパ腫が、ステージ4で発覚したフリーアナウンサーの笠井信輔さん。その後、抗がん剤治療のために4か月半の入院。患者としてがんと向き合う中で感じたこと、学んだことについてお聞きしました。

これは笠井さんの事例であり、すべてのがん患者さんが同様な経過をたどる訳ではありません。がんの種類や進行状態、薬の副作用など、患者さんによって状況は異なります。

悪性リンパ腫を経験 笠井信輔さんインタビュー Vol.1 本編

フジテレビアナウンサーからフリーに転身した矢先に悪性リンパ腫が、ステージ4で発覚したフリーアナウンサーの笠井信輔さん。その後、治療のために4か月半の入院。がんと向き合う中で感じたこと、学んだことについてお聞きしました。

インタビュー動画 Vol.1 再生時間:5:35

インタビュー動画の内容はテキストでもお読みいただけます。

がんと診断されるまで

─ がんと診断されるまでどのぐらいかかりましたか? 発覚までの経緯を教えていただけますか。

笠井氏:私、がんと分かるまで4カ月かかっているんですね。

最初から自分が重病だろうということは薄々わかっていました。以前はどんなにダイエットしても減らなかった体重が、食べても食べても減っていくので、『おかしいな』と思っていたんです。

そこへ排尿障害も起こって、これは重病だと思いました。

しかし、病院に行ったら「あなたはがんではありません。前立腺肥大です」と言われました。前立腺肥大は50代の男性に多い病気ですよね。

もしもと思って、別の病院の泌尿器科へも行ってみましたが、そこでも「前立腺肥大」と言われました。

でも、いつまでも不調が続くんです。それで、2つ目の病院の泌尿器科の先生から「もしかしたらがんかもしれないから、血液腫瘍内科のあるがん専門の病院に行って調べてください」と言われました。

─ そこで初めて血液腫瘍内科に行ったのですね?

笠井氏:そうです。3つ目の病院の先生から「笠井さん、がんでした」と言われた時は、「えーっ」と思いました。最初にがんではないと言われたので、余計に高いところから落とされたような感じでした。

─ でも、すぐには治療を始められなかったのですよね?

笠井氏:そうなんです。何しろフリーになってわずか2カ月ですよ。社員としてフジテレビで働いていれば休業補償や健康保険手当の給付等がありますが、補償もなくなっちゃった。だからできるだけ稼がなきゃと。

『なんでこんな重要なときにがんにならなきゃいけないんだ』『何て運の悪い人生なんだ』って思いましたね。

─ ご家族はなんとおっしゃったのですか?

笠井氏:それまで家族には内緒にしていましたので、告知は1人で受けました。

家に帰って妻に「ごめん、悪性リンパ腫だった」と謝りました。でも、妻はすかさず「そんなわけないわよ。他の先生にも診てもらった方がいい」と言いました。

それで、新たな病院探しを始めました。報道の仕事でお付き合いのあった先生に相談して、私のような悪性リンパ腫の症例が多い大学病院を紹介してもらったんです。

2週間ほどかけて再検査をしていただきました。それで、「やっぱり笠井さんは悪性リンパ腫です」と。

クールな先生でね。ぽんぽん、ぽんぽん、よくない情報ばかり出てきまして。さすがにそのときは、これはもう死ぬのかなと覚悟をしましたね。

前向きになれたきっかけ

─ そこから、何か前向きに治療を始められたきっかけがあったのですか?

笠井氏:主治医の先生から 「ステージ4は必ずしも手遅れという診断ではありません。抗がん剤は開発が進んでいますから、笠井さんに合う薬が見つかれば、きっと乗り越えることができるはずです。一緒に頑張りましょう」と言っていただいて。その言葉が励みになりました。

非常に厳しいことをおっしゃる先生だったのですが、その先生が明確に治療方針を決めてくださるんだから、信頼しようと思いました。先生の厳しい口ぶりと強い信念が、妻の心も動かしました。泣き虫の妻が全然泣きませんでしたから。

SNSでのたくさんの励ましの声にも励まされました。そこで、同じ病気の仲間がたくさんいると知ったこともとても大きいです。

がん治療において
感じた課題

─ ご自身の体験から、がん治療において課題に感じることを教えてください。

笠井氏:まず、何も知らない初心者の患者が、がんとわかった瞬間、どの病院で、どの先生に、どんな治療法で、がんと向き合うかを決めなければいけないことは難題です。

治療を始めてから色々と知識が深まっていき、『実はこの方法じゃなかったんじゃないか』と、思いあたったりするのはとても残念なことですよね。

また、抗がん剤治療に関してなかなか安心材料となる情報を得ることが少ないのも課題だと感じています。

治療を進める中で、いわゆる副作用止めも色々と進歩していることが分かったのですが、そうした情報もわれわれ患者にとっては大切です。

これはテレビ番組などにも責任があるのかもしれないですけれど、どうしても苦労話を聞きたがる。私もそうでした。

大変でしたね、よくそれを乗り越えましたね、と。それよりも、何が良かったのか、何が予想を覆して進化しているのか、そういったプラスの面も情報として出していくべきではないかと思っています。

─ 抗がん剤を怖いものと思っている人が多いと聞きます。

笠井氏:そうなんですよね。特に高齢の方に多くて、抗がん剤を拒否しているうちに、がんの進行が早まってしまうこともあるそうです。

しかし、例えば、私は入院するときに「がんの治療はいいから、痛みを止めてください」と言ったぐらい、体がとても痛かった。でも今、がんとともに痛みも消えて1年以上たつわけです。

こうやって帰ってきて、家族と一緒に食事ができる。笑い合える。そして働けるということが、こんなにすてきなことなのかって。

抗がん剤をはじめ、今はさまざまな薬の開発が進んでいます。私は、やはり恐怖だけを感じていてはもったいないと思うんですよね。少しでも前向きな気持ちになっていただきたいなと思います。