知的財産権と保健医療へのアクセスに関する中外製薬グループの見解

中外製薬グループのミッションステートメントに掲げる存在意義(Mission)は「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」ことにあります。

わたしたちは、存在意義を実現する上で最も重要な判断基準として価値観(Core Values)を掲げ、これに沿って事業運営を行います。中外製薬グループはイノベーションの創出と、地球環境や人権などへの取り組みを通じた社会課題の解決によって持続可能な社会の実現に貢献していきます。

わたしたちは、堅牢な知的財産(IP)システムが、こうした社会全体の利益に資するイノベーションや社会課題の解決を促進すると考えていますが、それと同時に、公益に配慮して知的財産活動を行うこともまた重要であると考えています。この考えに基づき「知的財産権と保健医療へのアクセスに関する中外製薬グループの見解」を経営会議で定めました。

1. 医薬品アクセスが困難な国における特許出願および特許権の行使についての見解

一部の途上国において、経済的な理由や物流の問題をはじめとする様々な要因により、保健医療へのアクセス(Access to Health)が困難な実態があります。わたしたちは、知的財産権がこうした保健医療へのアクセスを制限する要因であると考えてはいませんが、より多くの患者さんに当社の革新的な医薬品が届くように、国連が定める後発開発途上国(LDCs)および世界銀行が定める低所得国(LICs)では特許出願および特許権の行使を何れも行ないません。

2. 医薬品アクセスが困難な国におけるTRIPS協定の“flexibility”に対する見解

わたしたちは、TRIPS協定で概説されているIP保護の国際標準を完全に支持しています。

TRIPS協定の目的(第7条)には、「知的所有権の保護及び行使は、技術的知見の創作者及び使用者の相互の利益となるような並びに社会的及び経済的福祉の向上に役立つ方法による技術革新の促進に資するべき・・・」と記されています。この内容は、TRIPS協定の柔軟な解釈(TRIPS協定の“flexibility”)の法的根拠とみなされることがあります。

2001年の「TRIPS協定と公衆の健康に関するドーハ宣言」においても、「TRIPS協定は、公衆衛生を保護するWTO加盟国の権利を支持するような方法で、協定が解釈され実施され得るし、されるべきであることを確認」すると同時に、「知的所有権の保護の、新薬開発のための重要性を認識」することが示されています。

わたしたちは、LDCsが2033年1月1日までTRIPS協定の履行義務を免除されていることについて、完全に支持します。また、「TRIPS協定と公衆の健康に関するドーハ宣言」のいわゆる「§6ソリューション」(製造能力がないか不十分な国は、自国への輸入のために第三国で実施される強制実施の恩恵を受けることができること)について、この強制実施権に対する特別なプロセスと、TRIPS協定に従った強制実施権の一般的な条件の両者が尊重されていることを条件として、当社はこれを完全に支持します。具体的には、個々の事案ごとにその実態に即した判断を行います。

2022年 4月20日 経営会議にて承認

  • ※TRIPS協定:The Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rightsの略称。知的所有権の貿易関連の側面に関する協定。
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