2016年05月19日

大阪大学と中外製薬の包括連携契約締結のお知らせ

-免疫学フロンティア研究センター(IFReC)に対して10年間で総額100億円を拠出-

国立大学法人大阪大学
中外製薬株式会社

・概要

国立大学法人大阪大学[所在地:大阪府吹田市/総長:西尾 章治郎](以下、大阪大学)と中外製薬株式会社[本社:東京都中央区/代表取締役会長 最高経営責任者:永山 治](以下、中外製薬)は、本日、大阪大学免疫学フロンティア研究センター[所在地:大阪府吹田市/拠点長:審良 静男](以下、IFReC)と中外製薬による先端的な免疫学研究活動に関わる包括連携契約を締結しましたのでお知らせいたします。

IFReCは、文部科学省が2007年度に開始した事業「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」に採択され、2007年10月に大阪大学内に発足した研究拠点です。免疫学研究の第一人者である審良 静男拠点長のもと、国内外から免疫学、生体イメージング、バイオインフォマティクス分野の世界トップレベルの研究者約30名が主任研究者として集結し、革新的な免疫学研究を遂行しています。2011年3月には、新しい研究棟を大阪大学吹田キャンパス内に構え、優れた研究設備と研究に集中できる国際的な環境を提供しています。IFReCの研究者は高い水準の研究を展開し、世界的に著名な学術誌へ論文を発表すると共に、権威ある国際賞を受賞するなど世界的に高く評価されています。

一方、中外製薬は、バイオ・抗体医薬品の国内リーディングカンパニーとして、2005年に国産初の抗体医薬品「アクテムラ」の開発に成功しました。現在では、独自の抗体改変技術を用いたACE910(emicizumab)、CIM331(nemolizumab)の開発を進めております。今後は、新たな創薬技術の柱となる中分子創薬技術も駆使し、ファーストインクラス、ベストインクラスの医薬品の研究・開発に従事していきます。

このたびの包括連携により、IFReCでは研究者独自の発想に基づいた基礎研究に専念できる学術環境が維持され、免疫学に関する先端的研究の成果の社会還元を目指すことができます。また、IFReCが有する世界最先端の免疫学研究と中外製薬が独自の技術で培った創薬研究のノウハウが組み合わされることで、基礎研究から臨床応用研究までの障壁が解消され、これまでにない免疫学分野における革新的新薬の創製が期待されます。

中外製薬は、本契約により10年間にわたる年間10億円の拠出を通じて、IFReCが取り組む自主研究テーマ1)に関する成果の情報開示を受けるとともに、共同研究に関する第一選択権を取得します。また、双方の研究者の交流や共同研究を実施するための“連携推進ラボ”をIFReC内に設置し、革新的な医薬品を連続創出するための基盤を構築します。

IFReCと中外製薬は、今後、常時5〜10件の共同研究を推進することを目標にしています。 世界トップレベルの研究・技術を有する両者の連携を通じ、世界の医療と人々の健康に貢献できる大きな成果の実現に邁進していきます。

【包括連携契約の概要】

期間: 2017年4月〜2027年3月
提供資金: 10億円/年
目的: IFReCの免疫学に関する先端的な研究のさらなる発展による研究成果の社会還元、ならびにIFReCの免疫学研究力を中外製薬の創薬研究および医薬品開発に生かし、革新的医薬品の創製を通じた社会への貢献
研究対象領域: 免疫関連疾患領域

【連携スキーム】

  1. IFReCは従来どおり、学術的に自由な基礎研究を行う
  2. IFReCが取り組む自主研究テーマ1)について、IFReCが中外製薬へ年に2回研究成果の定期的開示(報告)を行う
  3. 中外製薬は、報告された研究テーマから共同研究に進む研究テーマ2)を選択
  4. IFReCの研究者が中外製薬と共同研究を実施
  5. 非臨床研究後期以降は、中外製薬が単独プロジェクト等の研究開発を実施

【注釈】

  1. 1) 第三者と契約済みのテーマは除く
  2. 2) 共同研究に進むテーマ数は、IFReCと中外製薬の両者にて協議の上決定

・大阪大学 総長 西尾 章治郎のコメント

大阪大学は産業界との連携を前進させるため、『産学連携から産学共創(co-creation)へ』をコンセプトに掲げ、社会的価値創出につながるイノベーションを目指しています。中外製薬は独自の製薬開発技術とグローバルネットワークを有し、我が国のバイオ・抗体医薬品分野をリードする企業です。中外製薬と包括連携契約を結ぶことは、本学が指向するイノベーションの実現強化に繋がると考えております。本連携は本学が提案する新しい産学連携形式であり、基礎研究段階から研究活動経費の提供を受けることで、長期的視野で基盤研究の推進を図り産学連携を強化するものです。本連携の成功は本学の産学共創にとって大きな布石となり、今後この連携スキームが広く適用されることを期待しています。

・IFReC拠点長 審良 静男のコメント

IFReCは2007年の発足以来、免疫システムの包括的理解に向けた研究を遂行し、基礎免疫学領域で世界的に評価の高い優れた成果を挙げて参りました。今後も引き続き研究者独自の発想に基づく研究の推進を図ると共に、さらに応用研究を進めることで、医学・臨床免疫学も包含する研究拠点としての進化を目指します。本連携はIFReCの研究基盤を強固にし、またWPIプログラム支援期間が区切りを迎える2017年4月以降においてもIFReCのレベルを維持し、WPIの4つの目標(『世界最高レベルの研究水準』、『融合領域の創出』、『国際的な研究環境の実現』、『研究組織の改革』)を達成・維持することが可能になると考えております。

・中外製薬 代表取締役会長 最高経営責任者 永山 治のコメント

近年、アカデミアの研究力は科学技術の進歩に伴って疾病の発症メカニズムを分子レベルでより詳細に解明できるようになる等、発展してきています。一方、我々製薬産業は、革新的な医薬品を創出することにより、医療の質の向上に貢献すると同時に、高付加価値産業として日本経済をリードしていくことが期待されています。その創薬技術はゲノム研究やバイオテクノロジー等の活用により大きく変化してきており、今までにない産学連携のあり方が必要とされています。このたび、IFReCの包括連携のパートナーとして、大阪大学より当社が選ばれたことを大変光栄に思います。当社は独自の革新的な抗体改変技術や、従来創薬が困難であった標的にも対応できる中分子創製技術を有しております。これらの技術と世界トップレベルの免疫学研究を行うIFReCの多様な研究成果を組み合わせることで、複数の革新的な医薬品を患者さんにお届けできると確信しています。

・その他

大阪大学について
大阪大学は1931年、医学部と理学部の2学部からなる第6番目の帝国大学として大阪中之島の地に創設されました。2007年には大阪外国語大学(1921年設立)と統合し、現在は、11の学部、16の研究科、5つの附置研究所を擁する我が国有数の研究型総合大学となりました。
源流である懐徳堂と適塾の思想・精神を継承しつつ、社会の安寧と福祉、世界平和、人類と自然環境の調和に貢献する大学となることを志し、多様な知の協奏と共創によって、学問の真髄を極める高いレベルの教育研究を追求しようとしています。また、新たな学術領域の創生、専門分野を超えた知の統合学修を通じて地球規模の社会問題を解決し、人間性豊かな社会の創造に大きく貢献する人材を輩出することが課題です。それらを着実に遂行することによって、「世界屈指の研究型総合大学」へ発展することを目指しています。
2015年5月1日現在、吹田、豊中、箕面の各キャンパスに学部生15,535名、大学院生7,886名が在籍しています。教職員数は6,363名。
大阪大学に関するさらに詳しい情報はhttp://www.osaka-u.ac.jp/をご覧ください。

免疫学フロンティア研究センター(IFReC)について
免疫学フロンティア研究センター(IFReC)は、2007年度に文部科学省が開始した「世界トップレベル研究拠点プログラム」に採択され、2007年10月1日に発足いたしました。世界的な免疫学者、審良 静男教授を拠点長とした、世界トップクラスの研究機関です。制御性T細胞の発見者坂口 志文教授ら180名の研究者が在籍し、世界の免疫学を先導しております。IFReCは「免疫学(Immunology)」と「イメージング技術(Imaging)」さらに「生体情報学 (Bioinformatics)」との融合研究を通して、生体内における免疫細胞の動態、活性化状態、相互作用を目で見る技術を開発し、免疫システムを包括的に理解することを目指します。
IFReCに関するさらに詳しい情報はhttp://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/index.htmをご覧ください。

中外製薬について
中外製薬は、医療用医薬品に特化し東京に本社を置く、バイオ医薬品をリードする研究開発型の東京証券市場一部上場の製薬企業であり、ロシュ・グループの重要メンバーとして、国内外で積極的な医療用医薬品の研究開発活動を展開しています。特に「がん」領域を中心に、アンメット・メディカルニーズを満たす革新的な医薬品の創製に取り組んでいます。
国内では、御殿場、鎌倉の研究拠点が連携して創薬研究活動を行う一方、浮間では工業化技術の研究を行っています。海外では、シンガポールに拠点を置く中外ファーマボディ・リサーチが革新的な抗体創製技術を駆使し新規抗体医薬品の創製に特化した研究を行っています。また、米国と欧州では、中外ファーマ・ユー・エス・エー、中外ファーマ・ヨーロッパが臨床開発活動を行っています。2015年の連結売上高は4,988億円、営業利益は907億円(Coreベース)でした。
中外製薬に関するさらに詳しい情報はhttp://www.chugai-pharm.co.jp/をご覧下さい。

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について
WPIは、2007年に文部科学省の事業として開始されたプログラムです。頭脳獲得競争が世界的に激化する中、日本が科学技術の力で世界をリードしていくため、世界から第一線の研究者が集まる、優れた研究環境と高い研究水準を誇る、世界から「目に見える拠点」の形成を目指しています。現在、国内に9つの拠点があり、プログラムの4つの柱となる「世界最高レベルの研究水準」「融合領域の創出」「国際的な研究環境の実現」「研究組織の改革」の実現に向けて、拠点長の強力なリーダーシップのもとで拠点形成活動が行われています。
WPIに関するさらに詳しい情報はhttp://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/toplevel/をご覧ください。


(会見資料はこちら)

本件に関するお問い合わせ先:

国立大学法人大阪大学
研究推進・産学連携部 産学連携課
Tel: 06-6879-4200
Fax: 06-6879-4204

中外製薬株式会社
広報IR部
メディアリレーションズグループ
Tel: 03-3273-0881
Fax: 03-3281-6607
pr@chugai-pharm.co.jp

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
文部科学省研究振興局基礎研究振興課
国際研究拠点形成支援係
Tel: 03-6734-4248(直通)
HP: http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/toplevel/

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