遺伝子の病気

監修:埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科
科長 康 勝好 先生

遺伝子(いでんし)の病気は、染色体(せんしょくたい)や遺伝子の変化によっておこる病気。

わたしたちのからだは約30兆個の細胞(さいぼう:生物をかたちづくる最小単位)からできている。細胞の中心には核(かく)がある。核の中には父親と母親から受けついだ2本1組の染色体が全部で23組46本ある。染色体は、およそ30億個のDNAという物質でできていて、DNAには、細胞の形や性質などからだの特徴(とくちょう)を決める設計図となる遺伝子が約3万個ある。

人体、染色体、DNAの解説図

細胞が外からの刺激(しげき)や生活習慣の影響(えいきょう)を受けると、遺伝子が変化する。これを遺伝子変異(へんい)という。遺伝子変異は、細胞分裂(ぶんれつ)の際にぐうぜんおこることもある。変異遺伝子が修復されずに傷(きず)ついたまま残ることを突然変異(とつぜんへんい)という。突然変異をおこした細胞は、正常に働かないために、遺伝子の病気がおこる。

遺伝子の病気のおこり方

遺伝子の変異

  • 1
    2
    3
    1. 正常な遺伝子
    2. 遺伝子に変化がおこる(遺伝子変異)
    3. 変異した遺伝子は修復されるが、修復できなかった変異遺伝子が生き残る(遺伝子の突然変異)

遺伝子を受けつぐしくみ

  • 子どもは、父親、母親それぞれから1つずつ遺伝子を受けつぐ。

  • 両親のどちらかに変異遺伝子がある場合、50%の確率で子どもが変異遺伝子を受けつぐ。

    変異遺伝子の伝わり方:父親に変異遺伝子がある場合、子どもの遺伝子の組み合わせの4パターンのうち2つで変異遺伝子が受けつがれる。

どんな病気があるの?

遺伝子の病気には、ある1つの遺伝子変異が原因でおこる病気、染色体の数の変化が原因でおこる病気、多数の遺伝子と生活習慣などが関係しておこる病気がある。1つの遺伝子変異が原因でおこる病気は、それぞれの患者(かんじゃ)さんは多くないが、病気の種類は数千以上あるといわれる。

  • 1つの遺伝子変異による病気 
    ハンチントン病、家族性大腸(だいちょう)ポリポーシス、マルファン症候群(しょうこうぐん)、フェニルケトン尿症(にょうしょう)血友病、脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)、筋ジストロフィー
  • 染色体の数の変化による病気
    ダウン症、ターナー症候群など