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2021年06月11日

眼科領域初のバイスペシフィック抗体 ファリシマブ、糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対し、国内で製造販売承認申請

  • 眼科領域で初めてのバイスペシフィック抗体ファリシマブについて、国内製造販売承認申請を実施
  • 糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対し、それぞれ2本のグローバル臨床試験成績に基づき申請

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗VEGF/抗Ang-2 バイスペシフィック抗体ファリシマブについて、糖尿病黄斑浮腫(DME:diabetic macular edema)および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD:neovascular age-related macular degeneration)を対象とし、6月10日に厚生労働省へ製造販売承認申請を行いましたのでお知らせします。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「DMEおよびnAMDは、成人の失明や視力低下の主原因の一つであり、世界的な高齢化の進展に伴い、罹患数の増加が見込まれています。ファリシマブは、眼科領域で初めてのバイスペシフィック抗体であり、これらの疾患に新たな作用機序による治療選択肢をもたらすことを目指しています」と述べるとともに、「ファリシマブは、DMEおよびnAMDに対する複数の第III相臨床試験において、最長16週の投与間隔を達成した初の眼内注射剤であり、通院や治療に伴う負担の軽減が期待されます。本剤により、新たに眼科領域においてもイノベーションを通じた治療への貢献を目指すべく、ロシュと協働し承認取得に向け取り組んでまいります」と語っています。

 今回の承認申請は、DMEを対象としたYOSEMITE試験およびRHINE試験、ならびにnAMDを対象としたTENAYA試験およびLUCERNE試験の成績に基づいています。ファリシマブの日本における開発は中外製薬が実施しており、国内からYOSEMITE試験およびTENAYA試験に参加しています。

【参考情報】

・YOSEMITE試験およびRHINE試験
ファリシマブが失明の主な原因のひとつである糖尿病黄斑浮腫に対する2つの第III相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、良好な持続性を示す(2020年12月21日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20201221153000_1054.html

・TENAYA試験およびLUCERNE試験
ファリシマブが新生血管を伴う加齢黄斑変性を対象とした2つの第III相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、投与間隔を最長16週まで延長できる可能性を示す(2021年1月25日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210125153001_1066.html

ファリシマブの新たな第III相臨床試験により、視力障害の主な原因である2つの疾患において、初めて治療間隔を最大4カ月まで延長し、治療負担軽減の可能性がある眼内注射剤であることが示される(2021年2月16日発表プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210216170000_1080.html

ファリシマブについて
 ファリシマブは眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり1、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としています2。Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになっています3。ファリシマブは、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されています3

糖尿病黄斑浮腫(DME)について
 世界全体において、約2,100万人が罹患しているとされる糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症です4。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こります5。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えると共に、浮腫が生じます6。DMEはこの損傷した血管からの漏出とそれに伴う浮腫が黄斑部、すなわち読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる疾患です5,7。糖尿病の有病率が上昇するにしたがって、DMEの患者数は増加することが予想されます8。DMEは治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながります5,9。DMEは依然として大きなアンメットニーズがあり、より有効で持続性のある治療薬が求められています3

中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)について
 加齢黄斑変性(AMD)は、読書などの活動を行う際に必要とされる鮮明な中心視力に関わる眼の器官に影響を及ぼす疾患です10。中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)は、AMDの進行型であり、急速かつ重度の視力喪失の原因となりうる疾患です11,12。異常な新生血管が黄斑下で無制御に増殖することで発症し、腫脹、出血、および/または線維化を引き起こします12。世界全体では約2,000万人がnAMDに罹患しており、60歳以上における視力喪失の主な原因となるとともに、高齢化の世界的進行による患者数の増加が見込まれています10,13,14

出典:

  1. Roche data on file.
  2. Khan M, et al. Targeting Angiopoietin in retinal vascular diseases: A literature review and summary of clinical trials involving faricimab. Cells. 2020;9(8):1869.
  3. Sahni J, et al. Simultaneous inhibition of angiopoietin-2 and vascular endothelial growth factor-A with faricimab in diabetic macular edema. American Academy of Ophthalmology. 2019;126:1155–70.
  4. Yau JWY, et al. Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy. Diabetes Care. 2012;35:556-64.
  5. National Eye Institute. Facts about diabetic eye disease [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://nei.nih.gov/health/diabetic/retinopathy.
  6. American Optometric Association. Diabetic retinopathy [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.aoa.org/healthy-eyes/eye-and-vision-conditions/diabetic-retinopathy.
  7. All About Vision. Macula Lutea [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.allaboutvision.com/resources/macula.
  8. Liu E, et al. Diabetic macular oedema: clinical risk factors and emerging genetic influences. Clinical and Experimental Optometry. 2017;100:569-76.
  9. Park SJ, et al. Extent of exacerbation of chronic health conditions by visual impairment in terms of health-related quality of life. JAMA Ophthalmol. 2015;133:1267–75.
  10. Bright Focus Foundation. Age-Related Macular Degeneration: Facts & Figures. [Internet; cited December 2020]. Available from: https://www.brightfocus.org/macular/article/age-related-macular-facts-figures
  11. Pennington KL, DeAngelis MM. Epidemiology of age-related macular degeneration (AMD): associations with cardiovascular disease phenotypes and lipid factors. Eye and Vision. 2016;3:34.
  12. Little K., et al. Myofibroblasts in macular fibrosis secondary to neovascular age-related macular degeneration-the potential sources and molecular cues for their recruitment and activation. EBioMedicine. 2018;38:283-91.
  13. Connolly E, et al. Prevalence of age-related macular degeneration associated genetic risk factors and 4-year progression data in the Irish population. Br J Ophthalmol. 2018;102:1691-95.
  14. Wong WL ,et al. Global prevalence of age-related macular degeneration and disease burden projection for 2020 and 2040: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Global Health. 2014;2:106-16

 

以上

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