戦略解説 社長メッセージ

グローバルトップクラスの競争力の獲得に向けて、中期経営計画IBI 18は順調なスタートを切りました。さらなる成長加速へ選択と集中を行い、飛躍し続けるトップ製薬企業を目指します。
代表取締役社長 最高執行責任者(COO)小坂 達朗

IBI 18 の概要と初年度の進捗

2016年度の総括
2016年度の総括2016年度の総括

トップ製薬企業像の実現に向けた中期経営計画

中期経営計画I B I 18の初年度である2016年、当初の戦略に基づいた各施策が確実に進展し、順調なスタートを切ることができました。

まずI B I 18の概要をご説明いたしますと、重点テーマはトップ製薬企業像の実現に向けた「グローバルトップクラスの競争力獲得・発揮」と「成長加速への選択と集中」です。

今後の経営環境を展望すれば、これまで以上にドラスティックな変化が想定されます。世界的な高齢化によって医薬品の重要性は一層高まり、グローバル医薬品市場は引き続き成長が見込まれます。一方、各国で社会保障費増加による財政悪化が大きな課題となっており、特に日本では2016年4月に特例拡大再算定が実施されたほか、薬価制度の抜本的見直しも予定されています。

また、ICTをはじめとする科学技術の進展により、例えば人工知能(AI)を用いた革新的新薬の開発や他業種からの医薬品産業への参入が見込まれるなど、イノベーションをめぐる競争は激化するでしょう。加えて、大手製薬企業によるバイオシミラー領域への参入も本格化することが予想されます。

中外製薬が今後も世界の患者さんと医療に貢献していくためには、強みをさらに進化させ、グローバルに飛躍し続ける企業への変革が不可欠です。I B I 18では「創薬」「開発」「製薬」「営業・メディカル・安全性」「全社」の機能ごとに競争基盤の強化を推進し、連続したイノベーションを徹底的に追求していきます。

革新の戦略が順調に進展

次に、I B I 18の初年度の成果と進捗ですが、パイプラインの進展はまさに加速度的に前進しました。

4つの承認申請を行い、うち「アレセンサ」のALK陽性非小細胞肺がんの1次治療と「アクテムラ」の巨細胞性動脈炎の2品目はBreakthrough Therapyの指定を受けています。さらに、自社主導でグローバル開発を進めてきた「SA237」とnemolizumab(「CIM331」)のロシュおよびパートナー企業への導出が決定し、開発の推進に筋道をつけました。また、独自の抗体改変技術を適用した「ERY974」と「SKY59」を含め、10の新規プロジェクトに着手しました。

「SKY59」はシンガポールの中外ファーマボディ・リサーチ(CPR)が創薬の早期段階から携わった第1号であり、抗体創製基盤の進化が顕在化してきたものととらえています。これらの取り組みに加え、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)との免疫学研究活動に関わる包括連携契約締結、設備投資計画の順調な進捗、エミシズマブ(「ACE910」)の上市に向けた生産準備など、計画どおり、あるいは計画以上の成果がありました。

業績面では、薬価改定影響を上回って製商品売上高が増加。一時的なマイルストン収入の減少に伴いCore営業利益は減益であったものの、期初予想を大きく上回る結果となりました(Coreベースについての詳細は、P21「Coreベースでの実績について」をご参照ください)。

今後の戦略

トップ製薬企業像の実現に向けた定量目標進捗状況(2016年)
トップ製薬企業像の実現に向けた定量目標進捗状況(2016年)

収入源の「国内」と成長源の「海外」

I B I 18の目標達成とトップ製薬企業像の実現、さらに将来にわたってグローバルでの成長を実現するためには、経営資源の選択と集中を加速し、グローバルでの競争力をさらに強化していく必要があります。トップ製薬企業の定量目標は堅調な進捗を見せていますが、先に申し上げたように、薬価制度をはじめとして、業界環境や競争環境はますます不透明さが増しています。

こうした中、中外製薬は、安定的な収入源としての「国内」と、自社創製品のグローバル展開による成長源としての「海外」を大きな2本柱として明確化し、それぞれの充実によって将来の成長に向けた強固な基盤づくりを推進していきます。

2017年は、「グローバル・国内成長ドライバーへの集中」「抗体改変プロジェクトの創出・中分子技術の開発」「ソリューション提供体制改革の実行」を重点テーマに掲げました。

成長ドライバーでは、引き続きエミシズマブ、アテゾリズマブ(「RG7446」)に経営資源を集中します。血友病Aを予定適応症としたエミシズマブでは、最速上市を目指して国内外で承認申請するとともに、グローバルでの需要拡大に対応すべく、生産体制の構築と浮間工場でのバイオ原薬製造設備の建設に着手しています。グローバルでの競争激化が見込まれるがん免疫療法アテゾリズマブでは、費用・人員を集中化させ、スピード競争に打ち勝っていきます。

創薬研究では、I B I 18の期間中に、独自技術を用いた改変抗体プロジェクトを2つ臨床開発段階に進めることを目指していきます。
中分子プロジェクトにおいても、いよいよ薬剤候補物質の創出が現実味を帯びており、非臨床初期プロジェクトの創出を目指し、ライブラリーの進化のほか、技術課題の解決を進めます。また基礎研究においても、2017年4月より包括連携パートナーであるIFReCの施設内に新しいラボを設置し、稼働させていきます。

ソリューション提供体制の改革については、グローバルでは各国の状況に合わせた効率的体制の構築が重要であり、海外子会社主導で改革をスピーディに推進します。また国内においては、医療制度の改革により2018年から都道府県主導の医療提供体制となることを前に、地域の実情にきめ細かに対応しながら、さらなる専門性を発揮すべく、営業・メディカル・安全性分野における組織改革を2017年4月に実行します(組織改革についての詳細は、P35「新たな国内ソリューション提供体制について」をご参照ください)。

2017年の業績は、国内外で「アレセンサ」をはじめとする新製品、主力製品が順調に成長することを見込み、売上収益5,205億円、Core営業利益920億円といずれも過去最高を予想しています。

IBI 18以降の飛躍的成長を確たるものへ

2017年は申請ラッシュを迎えます。具体的には、国内外でのエミシズマブ(インヒビター保有対象)、海外の「アレセンサ」の1次治療、国内でのアテゾリズマブの2つの適応症の承認申請などを予定しています。また、2018年以降も多くの承認申請が控えています。

I B I 18で目指すのは、グローバルで飛躍し続ける企業への変革です。IBI 18の期間に申請を迎える多数の品目が売上に寄与するのはI B I 18以降ですが、これを飛躍的な成長フェーズとできるよう、事業活動のあらゆる分野で変革を進めていきます。エミシズマブ、アテゾリズマブ、nemolizumab、「SA237」といった患者さんに大きく貢献できる新薬候補品群、CPRからの創製品の連続創出、そして中分子品の創出など、将来の成長への道筋はすでに見えています。

2017年製商品売上高(「タミフル」除く)予想
2017年製商品売上高(「タミフル」除く)予想

企業価値向上に向けて

患者さんのためのイノベーションが根源

I B I 18を完遂し、グローバルに飛躍し続ける。中外製薬がその成功の「鍵」ととらえているのは、「革新による価値創出活動を牽引するグローバルトップクラス人財の獲得と育成、配置」です。

すでに価値創造の核となる重要ポジションの特定、人財の獲得・育成・配置までの運用プロセスの確立を進めていますが、今後は重要ポジションの対象範囲を拡大していきます。そして、革新に不可欠な「ダイバーシティ&インクルージョン」「生産性向上の追求」にも引き続き取り組み、全社をあげてさらなる成長の加速を進めていきます。

中外製薬はあくまでもイノベーションにこだわります。これまで同様、イノベーションへの集中こそ、中外製薬にとって企業価値向上の根源であると考えます。今後も改革の手を緩めることなく、利益の成長、国内外でのプレゼンスの最大化、患者さんへの貢献の拡大を図っていく所存です。また、こうした具体的な成果が、資本市場での評価と安定した配当につながるものと認識しています。

なお、配当については、戦略的な投資資金需要や業績見通しを勘案したうえで、安定的な配当をベースに、Core EPS対比の配当性向で平均50%を目処とする方針に変わりありません。これらの方針に沿って、2016年の1株当たり配当金は52円、配当性向は50.7%とさせていただきました。また内部留保金につきましては、一層の企業価値向上に向け、将来のビジネス機会探索のために効率的に投資を行い、株主価値向上につなげていきます。

ステークホルダーの皆さまにおかれましては、徹底的に患者さんのための革新を追求していく中外製薬に、引き続きご期待いただければと存じます。

中外製薬が定める非経常的損益項目を控除したうえで算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益
Contents
アニュアルレポート2016
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アニュアルレポート2016
レポートの構成
  • CEOレター
  • 中外製薬ダイジェスト
  • 社長メッセージ(戦略解説)
  • 中外製薬の経営(ガバナンス・人財)
  • 副会長メッセージ
  • 特集:導出戦略に現れる中外製薬の革新
  • CFOインタビュー
     (よくいただく質問への回答)
  • 中外製薬の取り組み
  • 詳細な報告
  • 財務情報
注:印はオンライン版での掲載情報。
PDF版の全136ページのうち、
16ページ分がオンライン版の掲載となります。
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