企業価値向上に向けた重点課題

研究
研究

アンメットメディカルニーズに
応える新薬を生み出す

研究開発費/自社創製品数/新薬創出等加算品目の売上構成比率

中外製薬の研究開発費は889億円(2017年)。対売上収益比率は16.6%と、他の製薬会社より相対的に低くなっていますが、これはロシュとの戦略的アライアンスを背景に、効率的な費用投下が可能なためです。

この特性を活かして、独自の研究技術の進化を続けており、パイプラインに占める自社創製品数は13品目と充実しています。発売後の製品を見ても、その内容はアンメットメディカルニーズに応えるものとなっており、ロシュ導入品も含め、新薬創出等加算品目の売上構成比率は74%と非常に高くなっています。

* 特例拡大再算定の対象となった「アバスチン」については、2017年時点で新薬創出等加算の対象品の要件を満たしたと推定し、新薬創出等加算品目としてカウント

  • 強み
    1. バイオをはじめとする独自の創薬技術
      (差別化を可能にする技術ドリブンの創薬)
    2. ロシュ・グループとの
      戦略的アライアンス体制
      (大規模な化合物ライブラリーをはじめとするインフラ共有)
  • 課題
    1. 世界的な新薬創出の難易度上昇と費用高騰
    2. 破壊的技術の進展による
      創薬パラダイム変化の可能性
    3. 行政によるイノベーションの
      価値評価基準が未整備
    4. 国内外における
      優秀な研究者獲得インフラが未整備

中分子創薬の技術確立が進展。
この次世代医薬品を患者さんに届けたい

創薬基盤技術研究部
中分子創薬グループ
飯田 健夫

今、世界には数多くの画期的な新薬がありますが、これらは疾患の原因のごく一部の標的にしか作用できていません。いまだ病気に苦しむ方々に向けて、私たちが担う役割として導き出した答えの一つが、中分子医薬品の創製でした。

細胞の中に入り込めるものの、たんぱく質同士の相互作用を阻害することは困難な「低分子医薬品」と、標的と強く特異的に作用することができる半面、その大きさから細胞の中に入ることができない「抗体医薬品」。これら双方の利点をあわせ持つのが中分子医薬品で、細胞の中に入りながら、標的に強く、特異的に作用することで、今まで狙うことができなかった標的にアプローチできる次世代の医薬品です。

中外製薬では、10年以上前から基礎研究を続けてきました。この数年では、その取り組みを加速させ、現在では、中分子化合物ライブラリーの構築や、化合物のスクリーニング法などの基礎的な創薬技術を確立しています。また、さまざまな創薬プロジェクトへの応用が始まっており、次々と候補化合物が取得されている段階です。

これまで、数多くの課題がありましたが、バイオテクノロジー、化学、薬効薬理、薬物動態、安全性など、あらゆる創薬の専門家が連携し、よりよい化合物や評価手法をつくり上げ、現在の進展を見ることができました。チームメンバーが皆、患者さんのためのチャレンジを続けた成果です。

しかし、これからも前例のない挑戦は続きます。この新しい種類の医薬品を患者さんに届けるべく、中外製薬は全社一丸となって、研究だけでなく、製造・臨床開発・承認申請など、あらゆる段階で直面する課題を乗り越え、世界に先駆けた中分子医薬品の創製に取り組んでいきます。

開発/生産
開発生産

一日でも早く
患者さんに届ける

パイプラインプロジェクト数/新製品発売・適応拡大数/抗体医薬品国内売上シェア

中外製薬のパイプラインプロジェクト数は革新的な自社創製品と豊富なロシュ導入品により、41件と国内でも屈指の数となっています。そして、ロシュとの協働や部門横断的なライフサイクルマネジメント体制、高速上市と複数同時開発を実現する生産機能などのもと、充実した開発品を継続的に上市・適応拡大しています(2015年から2017年までの3年間で7品目上市・適応拡大)。

こうした結果、患者さんに適時・適切に革新的な製品を届けることが可能となり、がんや抗体医薬品においてはトップシェアを堅持しています。

* Copyright © 2018 IQVIA. 出典:IMS医薬品市場統計2017年12月MATをもとに作成 無断転載禁止 市場の範囲は中外製薬定義による

  • 強み
    1. 国内屈指のパイプライン
    2. アンメットメディカルニーズを
      充足する製品力
    3. ロシュ・グループとの
      戦略的アライアンス体制
      (ロシュのネットワークを活用したグローバル開発)
  • 課題
    1. 各国での医療費抑制策の進展
    2. 世界的な開発・生産基準の厳格化
    3. グローバル開発競争の激化

抗体医薬品の高速上市・
複数同時開発を実現する
浮間工場の新プラント「UK3」

CPMC浮間工場
製造5グループ
グループマネジャー
今村 暁則

中外製薬では、抗体改変技術を駆使し連続的に新薬候補が生み出されており、バイオ医薬品のパイプラインが充実しています。これら新薬候補を一日も早く患者さんのもとへ届けるには、開発から商用生産までのスピードを速め、複数の医薬品を製造・供給できることが鍵となります。

浮間工場は、これまで初期開発用治験薬を供給するための2つのプラント(UK1、UK2)で、抗体医薬品の開発を推し進めてきました。後期開発から初期商用生産を担う「UK3」が完成することで、臨床初期から上市までの一気通貫の生産体制が整い、スピード感のある複数品目の開発が可能となりました。これは、国内はもとより、グローバルでもトップレベルと自負しています。

「UK3」の最大の特徴はフレキシビリティです。6基の6,000L生産培養タンクと2つの精製ラインを自由に組み合わせることで、必要な生産量に応じて2製品の同時生産が可能となります。また、改変抗体特有の異なる製法にも適応可能な設計となっています。こうしたフレキシビリティにより、当社独自の改変抗体の新薬候補を従来にないスピードで患者さんのもとへ供給できる革新的なプラントです。

さらに「UK3」は、免震建物で非常発電設備を備え、災害に強く、医薬品の安定供給が可能であるうえ、製造ラインは最大限閉鎖系の設計で、外来性汚染リスクを極力低減した高品質な医薬品の製造が可能です。加えて、製造記録やデータ集積にITを活用しており、品質・コスト面で継続的な改善が進められる仕様となっています。

現在、製造設備の工事は完了し、運転性能の検証を行っています。設備が高度化・複雑化する中では、技術者の育成やメンバー間の情報共有が重要です。2018年第3四半期からの試作製造に向けては、多数の関係部署のメンバーが一丸となって取り組んでいます。中外製薬の革新的な医薬品を患者さんに一日でも早く届けられるよう、この次世代生産設備の安定稼働を実現していきます。

マーケティング/メディカルアフェアーズ/医薬安全性
マーケティングメディカルアフェアーズ医薬安全性

よりよい治療のための
ソリューションを提供する

市販後の安全性情報件数/顧客からの問い合わせ件数/医療従事者からの満足度評価(100床以上)

中外製薬は、医療従事者にソリューションを提供していくことこそ、患者さんや治療に貢献できるものと考えています。地域特性や患者さんのニーズに応じた治療選択肢や副作用マネジメントの提案、各種情報提供と、それを支える世界各国からの膨大な安全性情報の収集・評価など、医薬品の適正使用に資する取り組みを推進し、年間約6万件の医療従事者をはじめとした顧客からの問い合わせに対して、最新の科学に基づいた適正な情報を提供しています。

こうした取り組みの結果、医療従事者からの満足度評価は3位と高水準を維持しています。

*1 メディカルインフォメーション部への問い合わせ件数(電話、メール、FAXを含む)
*2 当社定義による医師のみを対象とした企業総合評価に関する調査結果に基づく

  • 強み
    1. アンメットメディカルニーズを
      充足する製品力
    2. 安全性マネジメントの徹底
    3. 医療提供活動への支援
    4. パイオニアとしての個別化医療の知見
  • 課題
    1. 国内での大幅な薬剤費抑制政策
      (薬価制度の見直し)
    2. 安全性、品質保証、マーケティングに
      おける規制強化
    3. 医療従事者からの情報ニーズの
      専門化・高度化

骨粗鬆症の治療率向上に向け、
多様な職種の方々との
病診連携システムを構築

横浜支店
横浜新薬4室
(現 東京第一支店
 がん専門3室)
河合 彩

日常生活でも骨折しやすくなる骨粗鬆症。特に大腿骨頚部や脊椎の骨折は、寝たきりなどQOL(生活の質)の著しい低下を引き起こすため、社会的に注目が集まっている一方、検査(骨密度測定)を受けなければ骨折するまで自覚しにくく、国内では潜在患者さんの治療率は約2割と推定されています。

なかでも、私たちのチームが担当していた神奈川県は、人口は全国2位の大都市であるにもかかわらず、検査率は全国ワースト3位、治療率も平均程度、骨粗鬆症マネージャーの資格取得者も少ないといった状況でした。そのため、域内の骨粗鬆症の医療環境を何としても改善したいと考え、社内外のさまざまな方々と協働し、骨粗鬆症診療モデルの構築に取り組みました。

まず取り組んだのは、潜在患者さんが検査を受け、治療を受けられるようにすること。骨密度測定機器は設置施設が限られているため、内科開業医から設置施設への紹介や、検査後の治療施設に的確に紹介できるよう、紹介リストの作成や施設情報を共有するなど、病院連携システムの構築を進めました。

同時に、整形外科、婦人科、内科などの医師をはじめ、薬剤師や検査技師などの方々との勉強会や成功事例共有会などを実施し、意識づけへの仕組みづくりを積極展開。そして、中外製薬の製品などによる長期治療や服薬継続率向上の促進を図りました。

こうした取り組みの結果、紹介件数は目に見えて増えてきています。私たちの取り組みも評価いただいており、患者さんや医療従事者の抱えている課題を解決していこうという、社員たちの姿勢が信頼につながったととらえています。2017年に本取り組みは社内の活動共有の場である「リエゾン大会」で表彰されましたが、今後も、こうした成功事例を全国に広げるとともに、病診連携モデルのさらなる進化を図っていきたいと考えています。

* 日本骨粗鬆症学会が認定する、骨粗鬆症リエゾンサービスを担う専門性を有したメディカルスタッフ

環境保全と安全衛生
環境保全と安全衛生

バリューチェーン全体の
環境・安全衛生を
マネジメントする

従業員1人当たりエネルギー消費量/産業廃棄物再資源化率/健康経営優良法人2018(ホワイト500)の認証取得*1

世界の医療と人々の健康への貢献というミッションを実現するため、また、社内外に対して影響の大きい環境保全や安全衛生のマネジメントが事業活動の支えとなることから、環境、安全衛生につながる多岐にわたる取り組みを全社的に推進しています。

環境面では、エネルギーの効率的な使用と水の適切な使用・排出のため、各拠点横断でマネジメントを強化しています。安全衛生面では、従業員の心身の健康を重視し、特に近年、がん治療やメンタルヘルスの支援活動に力を注ぎ、制度・風土面の充実を図ってきたことから、その活動が社外からも評価されてきました。

* 健康経営優良法人2018(ホワイト500)は、経済産業省と日本健康会議が連携し、特に優良な健康経営を実践している大規模法人に与える認証。詳細は経済産業省のウェブサイトをご参照ください

  • 強み
    1. 環境・安全衛生の統合的な管理体制
    2. 中期目標に基づく環境問題への
      継続的な取り組み
    3. ロシュ・グループとの連携による
      課題解決策の共有
  • 課題
    1. サプライヤー管理体制の強化
    2. 環境・安全衛生監査員の育成
    3. 高度化する環境・安全衛生課題への組織的対応力の強化

健康宣言を発表。
定量目標を定め、健康経営をもう一段上へ

CSR推進部
(環境・安全衛生
グループ)
加藤 伸明

中外製薬では、これまでも注力してきた健康経営をさらに加速させるべく「健康宣言」を掲げ、今後の健康経営の取組方針と重点項目についての目標を公表しました。各従業員の健康管理については、病気やケガによる不調者や休業者だけでなく、健康診断の有所見者、長時間労働者、妊産婦、障がい者など、就業について健康状態への配慮が必要なすべての従業員が対象です。

産業医、看護職、心理職、衛生管理者などの産業保健スタッフと、人事担当者および職場の管理監督者が連携して、必要な対処・支援を行ってきましたが、これまでの取り組みで一定の成果が出たものととらえ、今後はこれらの活動を継続するとともに、健康・疾病に対する啓発を含め、予防にも注力する予定です。

中外製薬ならではの取り組みとして、率先して行っているのがメンタルヘルスやがん治療に対する支援制度の充実です。

メンタルヘルス不調による休業者の復職支援については、個々に適したプログラムを継続的に実施しており、本プログラムにより、復職1年後の出社継続率が改善することが確認されています。加えて、がん領域のリーディングカンパニーとして、がん治療を受ける従業員が安心して治療を受けるとともに、安心して働くことができるよう、がん治療に関する就労支援をより充実させました。実際の治療状況に応じた取り組みが実施できる相談体制や、治療と仕事の両立支援制度の整備に継続的に取り組んでいます。

新たな取り組みとして目指しているのは、従業員が自らのパフォーマンスをどれだけ発揮できているかを指標とし、従業員の健康や職場環境への施策を定量的に測定し、分析することです。これにより、各施策の目標値を定められるので、効果的な取り組みが進められると考えています。

人財
人財

イノベーションを生み出す
人財を育む

従業員数(連結)/在宅勤務制度利用率*1(単体)/女性管理職比率*2(単体)

中外製薬には、約7,000人の従業員がいます。この従業員たちが、目指す姿であるミッションを共有し、体現していくことで大きな力を発揮すると考えています。

人財マネジメントとしては、経営戦略にのっとり、イノベーションを生み出していく人財の創出に注力。特に、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みとして、女性管理職比率や在宅勤務制度利用率の向上などを目指しています。これらの比率が年々高まっていることからもインクルーシブな組織風土の醸成に向けて着実に進化を遂げているととらえています。

*1 制度利用対象者に占める利用者の割合
*2 管理職に占める比率

  • 強み
    1. 行動指針にのっとった行動を重視する
      組織風土
    2. 人財力向上に向けて確立した
      PDCAサイクル
    3. 生産性向上とワークライフシナジー、D&Iを一体化させた仕組みの浸透
    4. ロシュ・グループとの人財交流インフラ
  • 課題
    1. 新卒採用などにおける認知度の向上
    2. グローバルにおける採用力の強化
    3. 環境変化に柔軟に対応できる組織力の向上
    4. 多様な人財が最大限能力を発揮できる
      環境の進化

タレントマネジメントの進化により、
経営戦略と適合した人財戦略を推進

人事部
グローバル推進
グループ
グループマネジャー
大木 光馬

IBI 18は、グローバルレベルで競争力を高めていく戦略であり、あらゆる機能において、これまで以上の質とスピードが求められています。従来の延長線上では対応しきれない領域や専門性も出てきますし、「誰ができるのか」また「その人財はどこにいるのか」という人財の見極めや発掘を進めていく必要があります。さらに、ダイバーシティを確保してイノベーションを生み出す土壌を整えることも、一層重要になってきています。

そのため、中外製薬では2017年、タレントマネジメントをもう一段進化させ、グローバルベースで再構築しました。これまで以上に、能力・経験・適性・キャリア志向などの「個」に目を向け、人財を見極めていくことを重視したシステムで、具体的には、「グローバル共通の人財データベース構築」「グローバルコンピテンシーの策定」「戦略遂行上のキーポジションの明確化と候補人財の特定」を行っています。

なかでも、グローバルコンピテンシーは、従来のものよりもシンプルかつグローバル共通の軸となるよう、7つの基準として構成しました。評価の尺度がより明確化されたことで、各社員においては、コンピテンシーと自身の行動とのギャップを把握し、能力向上に活用すると同時に、マネージャーにおいては、その改善行動やキャリアプランについて当該社員と対話し、人財育成を推進していく―。そういった取り組みが動き始めています。

進化の土台はつくられましたが、今後、人財を見極め、ポテンシャルを引き出していくためには、各人の活躍の場や環境をつくっていくことが何より大切です。そしてそのためには、人財や育成に対するコミュニケーションを活性化し、それらを重視していく組織風土を醸成していきたいと思っています。

グローバルコンピテンシー
意思決定基準 顧客志向(Customer Focused)
グローバル視点(Global Perspective)
誠実さ(Integrity)
行動基準 戦略的に考える(Strategic Thinking)
影響を与え協働する(Collaboration)
成果を追求し続ける(Commitment)
組織・人を育む(Team & People Development)