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2021年11月25日
抗悪性腫瘍剤「ハーセプチン」、唾液腺がんに対する適応拡大承認のお知らせ
- 標準的な薬物治療の確立していない唾液腺がんに対し、個別化医療のアプローチによる初の医薬品として承認
- HER2陽性の進行・再発唾液腺がんを対象とした国内第II相医師主導治験(16例)による承認
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体 抗悪性腫瘍剤「ハーセプチン®注射用60、同150」[一般名:トラスツズマブ(遺伝子組換え)](以下、ハーセプチン)について、「HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌」の効能・効果、および用法・用量の追加について、本日、厚生労働省より承認を取得したことをお知らせいたします。同適応症に対しては、2021年3月11日に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けています。
唾液腺がんは、頭頸部がんの一部に含まれるがんであり、国内の罹患数は年間1,000例未満1の希少がんです。従来、唾液腺がんに対する標準治療は手術を中心としており、薬物治療の治療方法(レジメン)は確立されていません。また、他の頭頸部がんと異なり、唾液腺がんは病理組織型が多く、組織型により遺伝子変異や予後の状況が大きく異なることが知られています。唾液腺導管がんにHER2陽性が比較的多いことが知られており、国内における唾液腺がん全体でのHER2陽性率は、15%弱であると考えられています。
代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「これまで標準的な薬物治療の確立されていない唾液腺がんにおいて、ハーセプチンにより、個別化医療のアプローチによる治療選択肢がご提供できることを大変嬉しく思います。承認の基礎となった医師主導治験の関係者の皆様をはじめ、国内のエビデンスによる承認をご支援くださった多くの方々のご尽力に感謝申し上げます」と述べるとともに、「ハーセプチンは、長年にわたり乳がんや胃がんの標準治療薬として使用されています。アンメットニーズの高い唾液腺がんの治療に対しても本剤が貢献できるよう、適正使用の推進に努めてまいります」と語っています。
今回の承認は、HER2陽性の進行・再発唾液腺がんの患者さん16例を対象に実施された、医師主導の国内第II相臨床試験(HUON-003-01試験)の成績に基づいています。同試験は、ハーセプチンとドセタキセルの併用による有効性および安全性を検討しました。主要評価項目は奏効率であり、有効性解析対象集団15例のうち、60%に奏効が認められました(95%信頼区間:32.3~83.7)。主な有害事象は、好中球数減少、白血球数減少、脱毛症、貧血、口内炎及び低アルブミン血症等でした。
なお、HER2タンパクの検出ならびにHER2遺伝子増幅度の測定は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の組織検査用キット「ベンタナ ultraView パスウェーHER2 (4B5)」および「ベンタナ DISH HER2 キット」によって行います。ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社は、「HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌」に対するハーセプチンの適応判定を補助するコンパニオン診断薬として、両検査キットの一部変更承認を2021年11月11日に取得しています。
添付文書情報 ※下線部分が追加
【効能又は効果】
- HER2過剰発現が確認された乳癌
- HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
- HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌
【用法及び用量】
- HER2過剰発現が確認された乳癌にはA法又はB法を使用する。
- HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。
- HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌にはドセタキセル製剤との併用でB法を使用する。
A法: 通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。
B法: 通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。
なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
ハーセプチンについて
ハーセプチンは、腫瘍細胞の増殖に関与するヒト上⽪増殖因⼦受容体2型(HER2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体です。本剤は2001年にHER2過剰発現が確認された転移性乳がんを対象に発売され、2011年にHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進⾏・再発の胃がんへの適応を取得しています。
唾液腺がんについて
唾液腺がんは、頭頸部がんに含まれ2,3唾液腺組織を構成する細胞から発生したがんを指します。病理組織型が21種と多彩であることが特徴で4、病理診断が難しい5とされていましたが、最近ではそれぞれの病理組織型に特徴的な遺伝子発現や遺伝子異常が明らかになってきています6。唾液腺腫瘍の約80%は耳下腺で、そのうちがんは約20%とされています2。主な治療法は手術、放射線治療、薬物療法ですが、進行・再発唾液腺がんに対する標準的な薬物療法は確立していません7。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
出典:
- 日本頭頸部癌学会 全国登録2018年度初診症例の報告書http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/HNCreport_2018.pdf アクセス日:2021年11月
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科 第1版, メディックメディア, 2020
- 日本頭頸部癌学会 編. 頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版, 金原出版, 2019
- WHO Classification of Head and Neck Tumors. Fourth edition, 2017
- 長尾俊孝. 耳鼻. 59(補1): S32-37, 2013
- 日本唾液腺学会 編. 徹底レクチャー 唾液・唾液腺, 金原出版, 2016
- 日本頭頸部癌学会 編. 頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版, 金原出版, 2017
以上
本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部
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- Tel:03-3273-0881
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