中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2024年04月19日

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心血管リスクの高い高血圧に対するRNAi治療薬zilebesiranの導入契約締結について

  • 心血管リスクの高い高血圧に対するRNAi治療薬として開発中のzilebesiranをロシュ社より導入。日本における商業化権を取得
  • 心血管疾患の主な原因である高血圧は、血圧コントロール不良の患者さんにおいて、脳心血管疾患のリスクが増加するため、高いアンメットメディカルニーズが存在

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(本社:スイス・バーゼル、CEO:トーマス・シネッカー、以下ロシュ社)と、心血管疾患の主因である高血圧に対するRNAi治療薬としてAlnylam Pharmaceuticals社(本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、社長 兼 CEO:イヴォンヌ・グリーンストリート、以下アルナイラム社)が創製し、ロシュ社およびアルナイラム社が開発中のzilebesiranについて、導入契約を締結しましたのでお知らせいたします。本契約の締結により、中外製薬は日本におけるzilebesiranの商業化権の許諾を受け、その対価として契約一時金およびマイルストンをロシュ社に支払います。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「高血圧は、心筋梗塞や脳卒中など、さまざまな脳・心血管イベントの発症・再発につながる重篤な疾患です。しかしながら、高血圧の患者さんの最大80%1は適切な血圧コントロールがされておらず、依然として高いアンメットニーズが存在しています。中外製薬は、新たなモダリティによるイノベーションを高血圧の患者さんに早期にお届けするため、ロシュ社およびアルナイラム社と緊密に連携してまいります」と語っています。

 zilebesiranは、アンジオテンシノーゲン(AGT)を標的とするRNAi治療薬であり、肝臓におけるアンジオテンシノーゲンの合成を阻害することで、血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIを減少させます。アルナイラム社は、軽度から中等度で血圧コントロール不良な高血圧の患者さんを対象とした海外第II相KARDIA-2試験を実施し、3つの標準治療降圧薬のいずれかにzilebesiranを単回皮下投与した場合の有効性と安全性を評価しました。主要評価項目は、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)により評価された、ベースラインから投与3カ月後までの平均収縮期血圧(SBP)の変化量です。KARDIA-2試験は主要評価項目を達成し、プラセボと比較して臨床的および統計学的に有意に平均外来収縮期血圧の低下を示しました。現在、2剤以上の降圧薬治療にて血圧コントロールが不良、かつ心血管リスクが高い高血圧患者さんを対象に、zilebesiranの有効性を確認するため海外第II相KARDIA-3試験を実施中です。

 中外製薬は引き続き、ロシュ・グループの研究・開発資源を有効に活用した画期的新薬の探索により、アンメットメディカルニーズの解決に取り組んでまいります。

高血圧について
 高血圧は、世界中で心血管疾患の主な原因であり、早期死亡の主要なリスク1とされています。発症初期は、左心室肥大や認知機能障害をはじめ、心臓や脳など標的臓器障害を起こす場合2,3があります。適切にコントロールされず時間が経過すると、脳卒中(虚血性および出血性)、冠状動脈疾患、心不全、末梢動脈疾患、慢性腎臓病および末期腎疾患、認知症、アルツハイマー病などの心血管疾患を引き起こす可能性4,5,6,7があります。
 毎日の服薬遵守率が低いと血圧管理が不安定になり、脳卒中、心臓発作、早期死亡のリスクが増加する可能性8があり、未だ満たされていない大きなアンメットメディカルニーズが存在しています。特に、心血管リスクの高い患者さんを含め9、高血圧に対する新たなアプローチによる治療法の開発が求められています。

zilebesiranについて
 zilebesiranは、アンジオテンシノーゲンを標的とする皮下投与によるRNAi治療薬で、アンメットニーズの高い高血圧の治療のために開発が進められています。AGTは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)で最上流に位置する前駆体であり、血圧調節で実証済みの役割を持つカスケードです。その阻害により安定した降圧効果を示します。zilebesiranは肝臓でのAGTの合成を阻害し、AGTタンパク質の持続的な減少により、血管収縮物質であるアンジオテンシンIIの減少が期待されています。zilebesiranは、アルナイラム社のEnhanced Stabilization Chemistry Plus (ESC+) GalNAcコンジュゲート技術を利用することで選択性が向上し、低頻度の皮下投与が可能になります。zilebesiranの単剤投与後、24時間を通じて安定的な血圧低下が最大6か月間持続する、持続的な血圧コントロールを達成できる可能性があります。
 2023年、ロシュ社とアルナイラム社は、RNAi治療薬zilebesiranを共同開発・販売するためのグローバルパートナーシップを締結しました。両社は米国でzilebesiranを共同販売する予定です。米国を除く海外ではロシュ社が独占的販売権を獲得しており、日本ではロシュ社とのライセンス契約に基づいて中外製薬が販売権を獲得しました。zilebesiranの安全性と有効性は、FDA、PMDA、その他の保健当局により確立・評価されていません。

RNAi治療薬について
 RNAi(RNA interference: RNA干渉)は、細胞内で遺伝子が自然に制御される遺伝子サイレンシングという仕組みであり、今日の生物学および医薬品開発において有望で急速に進展している先進的分野の一つです。RNAiは2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、世の中に認知されました。RNAi 治療薬は、私たちの細胞内で自然に起こる RNAiという生物学的プロセスを利用しています。RNAiを媒介しアルナイラム社の主要なRNAi治療プラットフォーム分子である低分子二本鎖RNA(small interfering RNA: siRNA)は、疾患の原因となるタンパク質や疾患経路のタンパク質の生成に関与する、遺伝的前駆体であるメッセンジャーRNA(mRNA)を、従来の医薬品が機能するターゲットより上流で、強力にサイレンシングすることで、疾患の原因となるタンパク質の生成を阻害します。

出典:

  1. World Health Organization. Hypertension [Internet; cited April 2024]. Available from: https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hypertension.
  2. Bruno A, et al. Left ventricular hypertrophy in acute stroke patients with known hypertension. Clin Exp Hypertens. 2017;39:502-504. doi:10.1080/10641963.2016.1259328.
  3. Poon, IO. Effects of antihypertensive drug treatment on the risk of dementia and cognitive impairment. Pharmacotherapy. 2008;28:366-375. doi: 10.1592/phco.28.3.366.
  4. Oparil S, et al. Hypertension. Nat Rev Dis Primers. 2018;4:18014. https://doi.org/10.1038/nrdp.2018.14.
  5. Nazarzadeh M, et al. JAMA Cardiol. Systolic Blood Pressure and Risk of Valvular Heart Disease: A Mendelian Randomization Study. 2019;4(8):788-795.
  6. Thorin E, Hypertension and Alzheimer Disease. J. Hypertens. 2015;65:36-38.
  7. Mennuni S, et al. Hypertension and kidneys: unraveling complex molecular mechanisms underlying hypertensive renal damage. J Hum Hypertens. 2014;28:74-79. doi: 10.1038/jhh.2013.55.
  8. Burnier M, Egan BM. Adherence in Hypertension. Circ. Res. 2019;124:1124-1140. https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.118.313220.
  9. World Health Organization. Cardiovascular Death and Disability can be reduced more than 50 percent [Internet; cited April 2024]. Available from:
    https://www.who.int/news/item/17-10-2002-cardiovascular-death-and-disability-can-be-reduced-more-than-50-percent.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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