中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2024年03月21日

  • 医薬品
  • 研究開発

エンスプリングの全身型重症筋無力症に対する第III相試験結果について

  • 第III相LUMINESCE試験において主要評価項目における統計的有意差が確認されたものの想定を下回る結果であった
  • 全身型重症筋無力症(gMG)におけるエンスプリングの安全性プロファイルは、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)で認められている安全性プロファイルと同様
  • 本データの詳細はAmerican Academy of Neurology(AAN)2024年次総会で発表予定

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は本日、全身型重症筋無力症(generalized myasthenia gravis:gMG)に対する治療薬として開発中の当社創製のエンスプリング®[一般名:サトラリズマブ(遺伝子組換え)]について、第III相LUMINESCE試験の結果を発表しました。本試験では、主要評価項目において統計的有意差が確認されましたが、想定を下回る結果でした。gMGに対するエンスプリングの忍容性は良好で、安全性プロファイルは本剤の一つ目の適応症である視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSD)と同様でした。本試験結果の詳細は、米国デンバーで開催されるAmerican Academy of Neurology (AAN) 2024年次総会において、4月15日にEmerging Science abstractとして講演発表が予定されています。

 今回のgMGでの試験結果は、すでに承認されているNMOSDでの使用に影響を与えるものではありません。当社はロシュ社と協働し、自己免疫性脳炎(AIE)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質関連疾患(MOGAD)、甲状腺眼症(TED)など、インターロイキン-6(IL-6)シグナル伝達の阻害によりベネフィットが得られる可能性のある神経免疫疾患および炎症性疾患に対して、引き続きエンスプリングの開発に取り組んでまいります。

エンスプリングについて
 エンスプリングは中外製薬が創製した、インターロイキン-6(IL-6)をターゲットとするpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体です。当社独自のリサイクリング抗体®技術を適用した初めての薬剤であり、同技術の適用により従来の技術を適用した場合に比べて持続的なIL-6阻害と、4週ごとの皮下投与を可能にしています。

 エンスプリングは、現在、抗アクアポリン4抗体(AQP4-IgG)血清陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する唯一のIL-6シグナル阻害薬であり、89カ国で承認され複数の国で保健当局による審査も進んでいます。

LUMINESCE試験について
 LUMINESCE試験は、成人および12歳以上の青年全身型重症筋無力症(gMG)患者さん*188名を対象にエンスプリングの有効性および安全性をプラセボと比較する多施設共同ランダム化グローバル第III相試験です。参加者全員が治験期間を通じて、標準治療であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、経口コルチコステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンまたはタクロリムスによる治療を継続しました。
*アセチルコリン受容体(AChR)、筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)または低比重リポ蛋白受容体関連蛋白質4(LRP4)を標的とするいずれかの自己抗体が陽性の患者さん

 主要評価項目は、抗AChR血清陽性(AChR+)集団における24週時の重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)総スコアのベースラインからの平均変化量でした。MG-ADLは、疾患による症状と、症状が会話、咀嚼、嚥下、呼吸、歯磨きや整髪、椅子からの起立、複視、眼瞼下垂等を含む日常生活に与える影響を評価するスケールです。

 副次的評価項目には、治験対象集団全体(AChR陽性、MuSK陽性またはLRP4陽性)におけるMG-ADLスコアおよびその他の評価項目のベースラインから24週間後までの平均変化量が含まれました。その他の評価項目には、QMG(Quantitative Myasthenia Gravis)スコア、15-item MG Quality of Life scale(MG-QOL 15r)、Quality of Life in Neurological Disorders(Neuro-QoL)Fatigueサブスケールスコア、重症筋無力症コンポジット(MGC)総スコア、およびMG-ADL、QMG又はMGCスコアで臨床的に意味のある改善が認められた参加者の割合、ならびに疾患の症状発現が最小限であった参加者(総MG-ADLスコアが0または1)の割合が含まれました。

全身型重症筋無力症(gMG)について1
 gMGは、希少な慢性自己免疫疾患で、筋肉への神経伝達が遮断され、筋力低下に至ります。本疾患では、運動の反復に伴って筋力低下が見られ、症状は休息によって改善する、夕方に症状が悪化するなど一日を通して変動が見られるほか、日によっても変動することが知られています2。通常、gMG患者さんでは、感情に即した表情の変化が出来なくなることや、咀嚼、発語、嚥下においても障害を伴うほか、四肢の筋力低下や息切れが認められます。また、眼瞼下垂や複視などの眼の症状が見られることもあります。さらに、強い疲労感により、日常的な活動・動作(歯磨きや食事等)が困難となることで、生活全体に大きな影響を及ぼします。gMG患者さんの約15~20%は、呼吸および嚥下が不能となり生命を脅かす筋無力症クリーゼを併発します。

 上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典:

  1. Neurological Disorders. Myasthenia gravis fact sheet. 2020. Available from: https://www.ninds.nih.gov/sites/default/files/migrate-documents/myasthenia_gravis_e_march_2020_508c.pdf. Accessed March 2024
  2. 日本神経学会. 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022. Available from: https://www.neurology-jp.org/. Accessed March 2024
  • Facebookのシェア(別ウィンドウで開く)
  • ポストする(別ウィンドウで開く)
  • Lineで送る(別ウィンドウで開く)
  • メールする(メールソフトを起動します)
トップに戻る