2017年05月10日

免疫チェックポイント阻害剤「アテゾリズマブ」の局所進行・転移性
尿路上皮癌に対する第III相臨床試験結果について

-化学療法と比較し、全生存期間の統計学的に有意な延長は認められず-

中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:永山 治)は、改変型抗PD-L1モノクローナル抗体「アテゾリズマブ」のプラチナ製剤併用の化学療法施行中または施行後に増悪した、局所進行または転移性尿路上皮癌を対象とした第III相臨床試験であるIMvigor211試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長が認められなかったことをお知らせいたします。本試験におけるアテゾリズマブの安全性プロファイルはこれまでの臨床試験で認められたものと同様でした。なお、有効性についてはアテゾリズマブ群の成績はIMvigor 210試験と同様であったものの、化学療法群の成績が当初の想定よりも良好でした。試験の詳細については、今後公開される予定です。

上席執行役員 プロジェクト・ライフサイクルマネジメントユニット長の伊東 康は、「これまでに実施された臨床試験では、局所進行または転移性尿路上皮癌の患者さんにおけるアテゾリズマブの有用性を示せていただけに、今回の結果は非常に残念です」と述べるとともに、「今後の開発計画について検討するために、試験成績の詳細を把握すべく、ロシュ社と協議していきます」と語っています。

IMvigor211試験について
プラチナ製剤併用の化学療法施行中または施行後に増悪した局所進行または転移性尿路上皮癌の患者さんを対象に、アテゾリズマブの有効性と安全性を化学療法*(vinflunineまたはパクリタキセル、ドセタキセル)と比較検討した、オープンラベルランダム化多施設共同第III相臨床試験です。
・ 本試験の主要評価項目はOSです。
・ 副次評価項目には安全性、奏効率、無増悪生存期間および奏効期間が含まれます。
931名の患者さんが登録され、3週間毎にvinflunine(320 mg/m2静注)/パクリタキセル(175 mg/m2静注)/ドセタキセル(75 mg/m2静注)のいずれかの化学療法またはアテゾリズマブ(1,200mg静注)を投与される群に1:1でランダム化されました。アテゾリズマブでの治療は、患者さんが臨床的ベネフィットを享受していると治験担当医師が評価している限り、または許容不能な有害事象が認められるまで継続されました。

* パクリタキセルおよびドセタキセルについては、国内では尿路上皮癌の適応症を有しておりませんが、尿路上皮癌での使用について保険償還が認められています(保医発0224第2号、保医発0223第1号)。なお、vinflunineは国内未承認の薬剤となります。

アテゾリズマブについて
アテゾリズマブは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現するPD-L1(programmed death ligand-1)と呼ばれるタンパク質を標的としたモノクローナル抗体です。PD-L1は、T細胞の表面上に見られるPD-1、B7.1の双方と結合しT細胞の働きを阻害します。アテゾリズマブはこの結合を阻害することで、T細胞の抑制状態を解除させ、そのT細胞が腫瘍細胞を攻撃することを促進させます。
アテゾリズマブ(海外販売名:Tecentriq®)は、米国食品医薬品局が承認したPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤で、2016年5月に局所進行または転移性尿路上皮癌の二次治療、同年10月にプラチナ製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢が進行した転移性非小細胞肺癌に対し、迅速承認されています。また、本年4月にシスプラチンベースの化学療法が不適格な局所進行または転移性尿路上皮癌の一次治療に対しても、迅速承認されています。国内では本年2月に切除不能な進行・再発の非小細胞癌について、厚生労働省に承認申請を行っています。

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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