2016年10月04日

ALK陽性非小細胞肺癌患者さんの一次治療での「アレセンサ®」の使用についてFDAは画期的治療薬に指定

-中外製薬創製品として3品目4回目、アレセンサは2回目の指定-

中外製薬株式会社[本社:東京都中央区/代表取締役会長 最高経営責任者:永山 治](以下、中外製薬)は、中外製薬が創製したアレセンサ®が、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)よりALK陽性非小細胞肺癌患者さんの一次治療での使用について画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定されたことをお知らせいたします。アレセンサは、日本および米国にて承認されており、欧州ではロシュ社が承認申請を行っています。

中外製薬 上席執行役員 プロジェクト・ライフサイクルマネジメントユニット長の伊東 康は、「今回の画期的治療薬指定がアレセンサとして2回目、中外製薬創製品としても4回目の指定となったことを大変嬉しく思います」と述べるとともに、「アレセンサが、ALK陽性非小細胞肺癌患者さんの治療に真に貢献しうる薬剤として高く評価されたことに相違ありません」と語っています。

今回の指定は、中外製薬が実施したアレセンサとクリゾチニブの有効性および安全性を比較した第III相非盲検ランダム化比較試験「J-ALEX試験」に基づいています。J-ALEX試験には207名のALK阻害剤未投与で化学療法未施行もしくは化学療法が1レジメン施行されたALK融合遺伝子陽性進行・再発非小細胞肺癌患者さんが登録されました。J-ALEX試験の主要評価項目は、独立効果判定委員会の判定による無増悪生存期間で、副次的評価項目は全生存期間、奏効率および安全性等でした。本年2月、当初より計画されていたJ-ALEX試験の中間解析が行われ、その結果を独立データモニタリング委員会が検討、同委員会よりJ-ALEX試験の早期有効中止が勧告されました。

クリゾチニブ単独投与群に対するアレセンサ単独投与群の無増悪生存期間のハザード比は0.34であり、アレセンサ単独投与群で無増悪生存期間の統計学的に有意な延長が示されました(99.6826%信頼区間:0.17-0.70、層別log-rank検定、p<0.0001)。無増悪生存期間中央値はクリゾチニブ単独投与群では10.2カ月(95%信頼区間:8.2-12.0)で、アレセンサ単独投与群では中間解析時には到達しませんでした(95%信頼区間:20.3-未到達)。アレセンサ単独投与群で30%以上の患者さんで発現した有害事象は便秘でした。一方、クリゾチニブ単独投与群では悪心、下痢、嘔吐、視覚障害、味覚異常、便秘、ALT上昇、およびAST上昇が認められました。グレード3-4の有害事象は、アレセンサ単独投与群では27%、クリゾチニブ単独投与群では51%で発現しました。いずれの群でも、治療関連死は認められませんでした。

画期的治療薬に指定された中外製薬創製の医薬品は、アレセンサ(クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の転移性非小細胞肺癌)、アクテムラ(全身性強皮症)、emicizumab(12歳以上で血液凝固第VIII因子のインヒビターを保有する血友病A患者さんに対する予防投与療法)であり、今回で3品目4回目の指定となります。

中外製薬は、「すべての革新は患者さんのために」の事業哲学のもと、アレセンサを早期から患者さんの治療に使用できるよう、ロシュ社およびジェネンテック社とともに世界各国における製造販売承認取得に向けて取り組んでまいります。

以上

Breakthrough Therapy(画期的治療薬)指定について
2012年7月に施行されたFDA Safety and Innovation Act(FDASIA)により導入された制度で、重篤または致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審査を促進することを目的としています。Breakthrough Therapyに指定されるためには、一つ以上の臨床的に重要な評価項目において、既存治療を上回る改善を示唆する予備的な臨床上のエビデンスが必要とされています。Breakthrough Therapy指定は、Fast Track指定の利点に加え、効率的な医薬品開発に向けたFDAの助言および組織的な支援を享受できる制度です。

アレセンサについて
アレセンサは、中外製薬が創製した、ALKへの選択性が高い経口のALK阻害剤です。非小細胞肺癌患者さんの2-5%でALK融合遺伝子の発現が報告されています1)。この融合遺伝子が発現している細胞は恒常的にALKチロシンキナーゼ活性が上昇しており細胞増殖が制御されず、細胞が腫瘍化していると考えられています2, 3)。アレセンサは、このチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することにより腫瘍細胞の増殖を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を発揮します4)。さらに、アレセンサは、薬剤を脳から能動的に排出するポンプである血液脳関門におけるトランスポーター蛋白に認識されません。このため、アレセンサは中枢神経系において活性があり、脳転移に対しても有効性が確認されています。

国内では、アレセンサは「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として中外製薬が販売しています。米国では、2015年12月に「クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の転移性非小細胞肺癌」を効能・効果として承認されました。また、欧州では2015年9月に、「クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の進行非小細胞肺癌」を効能・効果とした承認申請を行っています。

1) 日本肺癌学会バイオマーカー委員会. 肺癌患者におけるALK遺伝子検査の手引き
2) Soda et al., Nature. 448: 561-566 (2007)
3) Takeuchi et al., Clin Cancer Res. 15: 3143-3149 (2009)
4) Sakamoto et al., Cancer Cell. 19: 679-690 (2011)

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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