2016年05月24日
FDAはロシュ社の免疫チェックポイント阻害剤
Tecentriq(atezolizumab)による特定のタイプの進行膀胱がんの
治療について迅速承認
【参考資料】
当参考資料は、F. ホフマン・ラ・ロシュが2016年5月19日(スイス現地時間)に発表した英文プレスリリースを、戦略的アライアンスを締結している中外製薬が翻訳版として、皆様に提供させていただくものです。
従いまして、日本国内と状況が異なる場合があること、また、正式言語が英語であるため、表現や内容につきましては英文リリースが優先されますことをご留意ください。
英文プレスリリースは、下記URLよりご参照ください。
http://www.roche.com/media/store/releases/med-cor-2016-05-19.htm
Tecentriq(atezolizumab)について
- 国内では、非小細胞肺がんを対象とした第II相国際共同治験ならびに第III相国際共同治験、非小細胞肺がんの術後補助療法の第III相国際共同治験、膀胱がんを対象とした第III相国際共同治験、筋層浸潤膀胱がんの術後補助療法の第III相国際共同治験、および腎細胞がんを対象とした第III相国際共同治験に参加しています。
2016年5月19日 バーゼル発
- FDAが承認した、PD-L1を標的とする唯一の免疫チェックポイント阻害剤
- ここ30年以上で、特定のタイプの膀胱がんの治療として初めてFDAが承認
ロシュ社は本日、白金製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた、または白金製剤ベースの化学療法による術前または術後補助化学療法を行い12カ月以内に病勢進行を認めた局所進行または転移性尿路上皮がん(mUC)患者さんへのTecentriq(atezolizumab)の投与について、米国食品医薬品局(FDA)が迅速承認したことを発表しました。尿路上皮がんは全ての膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道でも認められます。
ロシュ社の最高医学責任者兼国際開発責任者のSandra Horning博士は、「Tecentriqは、白金製剤ベースの化学療法後に病勢が進行した特定のタイプの膀胱がんに対し、免疫系を利用して治療する新たな薬剤となります」と述べるとともに、「我々は、進行尿路上皮がんの患者さんに対しTecentriqを使用できるように尽力された科学者、医師、患者さんおよび彼らのご家族に感謝しています」と語っています。
FDAの迅速承認プログラムは、重篤な疾患についてアンメットメディカルニーズを満たす薬剤に対し、臨床ベネフィットを示唆する早期エビデンスに基づいて条件付きで承認を与えるものです。Tecentriqの適応症は、奏効率および奏効期間に基づき迅速承認されたものです。この適応症の承認の継続には、検証試験での臨床的有用性の証明が必要となります。Tecentriqの本日の承認は、第II相臨床試験であるIMvigor 210試験に基づいています。
ロシュ社は、少なくとも1レジメンの白金製剤を含む化学療法をこれまでに受け、病勢が進行した膀胱がん患者さんにおいてTecentriqと化学療法を比較する第III相臨床試験(IMvigor 211試験;検証試験)を実施しています。
IMvigor 210試験について
IMvigor 210試験は、局所進行またはmUC患者さんでPD-L1の発現レベルを問わずにTecentriqの安全性と有効性を検討した、二つのコホートからなるオープンラベルの多施設共同第II相臨床試験です。白金製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた患者さん、または白金製剤ベースの化学療法による術前または術後補助化学療法を行い12カ月以内に病勢進行を認めた患者さんを対象としたコホートに組み入れられた患者さん(310名)は、許容できない毒性、または画像診断あるいは臨床的に病勢進行を認めるまで21日毎に1回Tecentriq 1,200mgを静脈内投与されました。試験の主要評価項目は、RECIST v1.1を用いた独立評価委員会(IRF)判定による奏効率(ORR)でした。副次的評価項目には、奏効期間(DOR)が含まれていました。今回の迅速承認の基となったIMvigor 210試験の有効性および安全性データの概要は以下のとおりです。このコホートのフォローアップ期間中央値は14.4カ月でした。
全例 | PD-L1発現のサブグループ | ||
n=310 | ICsにおけるPD-L1発現が5%未満 (n=210)1 |
ICsにおけるPD-L1発現が5%以上 (n=100)1 |
|
IRF評価でレスポンダーと確定した患者数 | 46 | 20 | 26 |
ORR (95%信頼区間) |
14.8% (11.1, 19.3) |
9.5% (5.9, 14.3) |
26.0% (17.7, 35.7) |
完全奏効(CR) | 5.5% | 2.4% | 12.0% |
部分奏効(PR) | 9.4% | 7.1% | 14.0% |
DOR中央値 (range) |
未到達 (2.1+, 13.8+) |
12.7カ月 (2.1+, 12.7) |
未到達 (4.2, 13.8+) |
1:腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現 +:打切り値 |
IMvigor 210試験の中で白金製剤ベースの化学療法による術前または術後補助化学療法後に病勢進行を認めた部分集団(59名)のうち、Tecentriqは22.0%(95%信頼区間:12.3, 34.7)で腫瘍を縮小(ORR)させました。
最も多く認められたGrade 3-4の有害事象(2%以上)は、尿路感染症(9%)、貧血(8%)、疲労(6%)、脱水、腸管閉塞(部分閉塞または完全閉塞)、尿路閉塞、血尿がそれぞれ3%、呼吸困難(4%)、急性腎障害、腹痛がそれぞれ4%、静脈血栓塞栓症、敗血症、肺炎でした。3名(0.9%)の患者さんが、敗血症、肺臓炎および腸管閉塞により亡くなられました。有害事象のため、310人中10人(3.2%)の患者さんでTecentriqの投与が中止されました。
転移性尿路上皮がんについて
転移性尿路上皮がん(mUC)は予後不良であり治療選択肢が限られています。そして、30年以上、治療に大きな進歩が見られていません。UCは世界で9番目に多いがん種で、2012年には430,000人が新たに診断され、毎年、世界中で約145,000人が死亡しています。UCは女性に比べ男性が3倍多く罹患しており、先進国以外の国々よりも先進国では3倍多くみられています。
Tecentriq(Atezolizumab)について
Tecentriqは、PD-L1と呼ばれるタンパク質に結合するように設計されたモノクローナル抗体です。Tecentriqは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1に直接結合するように設計されており、PD-L1と、PD-1およびB7.1レセプターの双方との結合を阻害します。PD-L1の阻害により、TecentriqはT細胞を活性化させます。Atezolizumabは正常細胞にも作用する可能性があります。
個別化がん免疫療法について
50年以上にわたり、ロシュ社は、がん領域における治療法の刷新を目標として医薬品の開発を行ってきました。今日、我々は人の免疫システムががんを攻撃することを活用する革新的な治療オプションの研究開発に一層の投資を行っています。
個別化がん免疫療法(PCI)の目的は、特定のニーズに合わせた治療選択肢を個々の患者さんに提供することです。ロシュ社のPCI研究と開発プログラムには20種類以上の研究段階の候補品があり、そのうち9種類で臨床試験を行っています。これら全ての試験で、どのような患者さんが我々の薬剤の適切な対象となり得るかを評価するため、バイオマーカーの前向きな検討を実施しています。
Atezolizumabの場合、PCIはRoche Tissue Diagnosticsで開発したSP142抗体を用い、PD-L1発現をIHC診断で行っています。バイオマーカーとしてのPD-L1の検討目的は、atezolizumab単剤療法で臨床的な恩恵を受ける可能性が高い患者さん、あるいは、atezolizumabと他剤を併用することでより恩恵を受ける可能性のある患者さんを特定することであり、これまで以上の効果を患者さんに提供する治療戦略を提示するものとなります。Atezolizumabを様々な化学療法と併用した際の有用性は、PD-L1の発現レベルに関係なく幅広いがん種で新たな治療選択肢を患者さんに提供する可能性があります。
PCIは、ロシュ社が個別化医療において広範な責務を果たすための重要な要素になります。
ロシュ社について
ロシュ社は、人々の生活をより良くする最先端のサイエンスに基づいた医薬品ならびに診断薬の世界的なパイオニアです。
ロシュ社は、がん、免疫疾患、感染症、眼科および中枢神経系疾患において他社と一線を画した薬剤を保有する世界最大のバイオテクノロジー企業です。さらに、体外診断薬とがんの組織学的診断において世界のリーダーであり、糖尿病管理分野も牽引しています。ロシュ社は、医薬品事業と診断薬事業の双方を傘下に持つという大きな強みにより、個々の患者さんに合った最適な治療を目指すパーソナライズド・ヘルスケア(PHC)のリーダーであり続けています。
ロシュ社は1896年の創立以来、疾患の予防、診断そして治療において、より優れた方法を探求し続けることで、持続的に社会へ貢献しています。世界保健機関(WHO)が策定した必須医薬品リストには、人の生命を救うための抗生物質、抗マラリア薬および抗がん剤など、ロシュ社が創製した29の薬剤が記載されています。また、Dow Jones Sustainability Indexの「医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス企業」部門において、ロシュ社は7年連続で持続可能性のリーダーに選出されています。
ロシュ社はスイス・バーゼルに本社を置き、2015年では世界100カ国以上で約91,700人の社員を擁しています。ロシュ・グループは2015年に研究開発費として93億スイスフランの投資を行っており、売上は481億スイスフランでした。ジェネンテック社(米国)は、100%子会社としてロシュ・グループのメンバーとなっています。また、ロシュ社は中外製薬(日本)の株式の過半数を保有する株主です。さらに詳しい情報はwww.roche.comをご覧ください。
本プレスリリースに使用された商標等はすべて法律で保護されています。
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