マンガ「想像してみよう いろいろな気持ち」
5年生のハルト、なつき、アキラ、ふゆかの4人の登場人物の日常のストーリー。
小学校の保健室。
小学校5年生のふゆかとなつきが保健室を掃除している。
廊下には「がん教育」のポスターが貼ってある。
保健室で養護教諭と話すショートボブの女性を目撃するふゆかとなつき。
ふゆか「ねえねえ、あの人見て見て!メイクもヘアスタイルもステキ。ネイルもきれい!指輪もかわいいし、おしゃれだね!」
なつき「先生っぽくないし、だれかのお母さんでもなさそうだよね…だれだろ?」
ふゆかとなつきに気が付いた女性が、二人に向かって笑顔で「こんにちは」と会釈をする。
焦る二人もぺこりと頭を下げる。
数日後の5年1組の教室。
担任の先生が、がん教育の講師の女性を連れてくる。
担任「今日は「がん」について学びます。特別講師の方に来ていただきました」
女性が黒板の前に立って、クラスに女性が会釈をする。
ふゆかの心の声「あれ、この人、この前保健室にいた?似てるけど、髪の毛がすっごくのびてるからちがうかなぁ?」
女性「こんにちは!みなさんは「がん」という病気、知っていますか?」
次々に答えを口にする児童に微笑む女性。
「知ってますー」「こわい病気ですー」「治らないんだよね…」
女性「こちらのスライドを見てください」
黒板前のスクリーンに「我が国における死亡率の推移」のスライドが映し出される。
女性「日本人の死亡原因の第1位は「がん」です。日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなります」
教室から聞こえてくる児童の声「ええ…マジで!?」
手を挙げて女性へ質問するハルト。「どうすればがんにならないんですか?」
女性「がんにかかる原因はさまざまあります。でも、残念ながら多くのがんの原因はわかっていません。原因がわかっているがんは、原因を取りのぞくことで防ぐこともできます。」
女性「例えば、胃がんの原因になるピロリ菌は薬でやっつけます。わかい患者さんが多い子宮けいがんの原因となるヒトパピローマウイルスの感染はワクチンで予防ができるんです。そのほか、タバコも胃がんや肺がんなどの様々ながんの原因になるのでタバコはすわないほうがいいですね。」
女性「このことはぜひ、お家に帰ってお父さんやお母さんにも伝えてね。」
ハルト「はい!」
女性「そして、もうひとつ大切なことは…がんの早期発見です。がんは進行すればするほど治りにくくなる病気です。多くのがんは早期に発見すれば約9割が治ります。だから、がん検診が重要なんです。」
児童の感想。「ええ、そうなんだ!」「知らなかった」「がん検診、大切じゃん!」
女性「今から私のことを話します。私は「がん患者」です」
驚く児童。
女性「28歳の時にがんが見つかりました」
女性は、偶然、胸にしこりを見つけて、検査を受けたこと。医師から乳がんだと告げられ、ショックを受けたことを話す。
女性「幸いにも治療が効いて、今はこんなにも元気です!」
アキラ「手術はしましたか。こわかったですか?」
女性「手術しました。手術をする前はいろいろ考えました…がんはこわいものと思われていますが、早く発見して治療すれば健康な生活を送ることができます。がんを知って、健康や命の大切さを私はみなさんに伝えたいです。」
ふゆかは、女性の指輪が保健室で見た女性と同じ指輪であることを確認し、手をあげる。
ふゆか「質問してもいいですか?」
女性「もちろん!」
ふゆか「髪の毛はどうやってのばしたんですか。」
ふゆかの唐突な質問に教室がシーンとなる。
女性「ああ…あなた…前に保健室で会いましたね。おそうじしてたわね。あの時はショートボブ、今日はロングヘアだからおどろいたのね!」
うなずくふゆか。
女性「がんを治療するくすり(抗がん剤)を使うと、副作用で頭髪、まゆげ、まつげなどが抜けてしまいます。だから、私の髪の毛は今、かつら…ウイッグです」
驚くふゆかとなつき。
女性「今日はこれがいいかな~って、毎日ウィッグやぼうしを選んで、ファッションを楽しんでいます」
なつきが質問をする。「髪の毛が抜けるの…つらくありませんでしたか?」
女性「髪の毛だけでなくて、まつげまで抜けてしまったのが、すごくショックでした…自分のまつげが長いのがお気に入りだったので。どうして私にだけこんなにつらいことが起きるの?って、落ちこみました。その時、私を支えてくれたのは、家族やお医者さん、看護師さんや友だち、会社の仲間…たくさんの人たちでした。本当にありがたかったです。自分もがんを受け入れておしゃれを楽しんだり前を向こうと思えました。」
ハルト「先生はなんのお仕事をしてるんですか?」
女性「ウェブデザイナーしています。そして今は学生時代の仲間といっしょに夢だったカフェの開店準備に大いそがしです。病気でも夢をあきらめません。毎日を大切にして…私の人生はまだまだこれからです!」
授業後に、児童ががん教育の授業について感想を書いている。
『今日はありがとうございました。今までがんはこわいものだと思っていました。』
アキラ『がん検診などを受けて早く見つけることができれば、がんは治る病気だとわかってよかったです。』
なつき『病気になっても前向きに、自分らしく生きていく、先生のすがたに共感しました。」
ハルト『がんに負けない先生、すごいです!がんは早期発見が大事だと、ぼくもいろいろな人たちに伝えます!』
ふゆか『おしゃれだし、かわいいし!――私も先生のように、どんな時もあきらめずに夢へ向かってがんばります。』
後日、女性の自宅
学校から届いたがん教育についての児童の感想を読む女性。子どもたちの顔を思い出す。
読み終わった女性がパソコンで子どもたちに返事を書き始める。
『……小学校5年生のみなさんへ たくさんの感想をありがとうございました。みなさんの顔を思い出しながら読みました…』
おわり。