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CEOレター

イノベーションを起こし続け、世界の患者さんに貢献することで企業価値の向上を実現していきます。代表取締役会長 最高経営責任者(CEO)永山 治

成長エンジンはイノベーション

INNOVATION BEYOND IMAGINATION ― 創造で、想像を超える。まさに、中外製薬の 成長エンジンはイノベーションです。大胆な事業構造改革やバイオ研究への着手、そしてロシュ社との戦略的アライアンスなど、私たちは過去90余年の歴史の中で数々の革新を果たし、成長を遂げてきました。近年も、次世代抗体技術の確立をはじめとする革新を続け、2016年は2品目が米国食品医薬品局(FDA)からBreakthrough Therapy指定*1(BT指定)を受けています。この3年間で合計5回指定されたこと、そしてロシュ・グループ全体のBT指定のうち、3分の1を中外製薬が創製しているという事実は、私たちの創薬力の高さ、イノベーションの力の証左だと思います。

イノベーションの価値の正当な評価に向けて

有効な治療法がない病気に苦しむ方々に、革新的な医薬品を届け続けることこそが私たちの使命ですが、新薬の創製は容易ではありません。成功確率の低下や技術革新に伴うコストの高騰などにより、グローバルで進む新薬の開発競争は熾烈を極めています。新薬1品目の成功には、その陰で失敗するプロジェクトのコストも含め、25億ドル(約3,000億円)の投資が必要という研究調査*2もあります。
一方で、世界共通の課題である社会保障費の増大や財政基盤脆弱化を背景に、薬価規制をはじめとする医療費抑制策が各国で進められています。医薬品開発はその専門性ゆえに、事業に伴うリスクやイノベーションが起きるプロセスおよびそのコストについて、必ずしも社会に十分に理解されているとは言えません。しかし、イノベーションが正当に評価されなければ、治療法のない病気と戦う革新的な医薬品を生み出すことはできません。イノベーションとコストのバランスに関する議論は、製薬産業全体で取り組むべき課題です。中外製薬は、革新によって業界をリードする存在として、社会に向けたイノベーションの必要性・重要性の理解促進に力を注いでいく考えです。

ユニークなビジネスモデルをつくり上げたこの15年

こうした厳しい環境下ですが、中外製薬は、連続的なイノベーションを実現しうる独自の強みを確立しています。これを支える基盤はロシュ社との戦略的アライアンスであり、ロシュ・グループの一員でありながら上場企業として自主独立経営を続けるという、非常にユニークなビジネスモデルです。
創薬面で言えば、ロシュ・グループ全体で年間1兆円規模の研究開発費を投じ、ロシュ社、ジェネンテック社、中外製薬の3社が各々の強みを発揮した活動を行える体制です。これにより、中外製薬は世界でも有数の抗体改変技術を確立し、あわせて低分子創薬基盤を獲得したほか、次世代技術として中分子医薬品の創製に挑戦するまでになりました。開発・生産面では、複数品目の開発を迅速に行う体制を整えるとともに、ロシュ社と共同での後期開発を視野に、early PoC*3と呼ばれる早期の開発段階までに経営資源を集中できるグローバル開発体制を構築。マーケティング面では、個別化医療*4の普及や地域医療への貢献などが高く評価され、国内市場におけるプレゼンスは一層高まっています。
業績面でも、アライアンスから15年を経て、売上収益、営業利益、時価総額のいずれも約3倍となるなど、確たる成長を遂げることができました。2002年当時、前例のない形でのアライアンスへの不安も耳にしましたが、現在、成功をステークホルダーの皆さまと分かち合い、高く評価していただいていることを大変喜ばしく思っています。

「海図のない航海」の進捗と成果

このように独自の強み、成長基盤をつくり上げた私たちですが、今後の課題はさらなるイノベーションの実現です。製薬産業を取り巻く環境はますます厳しくなるでしょうし、人工知能(AI)やIoTを含めた破壊的技術*5の出現や他業種の参入は、創薬アプローチの大きな変化をもたらしうるものです。
2016年から始まった中期経営計画IBI 18においても、各機能がグローバルトップクラスの競争力の獲得・発揮に向けた取り組みを進めています。私は、IBI 18のスタート時、全社員に向けて「海図のない航海に乗り出していこう」という決意を共有しましたが、初年度から事業活動の多くの場面で、新しい挑戦が行われています。
2016年の業績は、5.5%の薬価引き下げという環境下で大きな成果を収めました。今後の成長ドライバーの開発も着実に進展するほか、自社でグローバル開発を進めてきた2品目で導出契約を締結することができました。将来の成長に向けても、神奈川県横浜市に事業用地を取得し、研究開発の中核的拠点整備への布石を打ったほか、IFReC*6との包括連携に関する契約を大阪大学と結ぶという、新たな取り組みも実現しました。

人財の力をさらに高め 患者さんのための革新を続ける

今後も引き続き、IBI 18の重点テーマに積極的に取り組んでいきますが、その中で何よりも重視しているのが、革新という価値創造の源泉となる人財の強化です。この実現のため、女性、シニアや外国籍人財の活躍をはじめとしたダイバーシティ&インクルージョンの推進を加速し、自律的に革新に取り組む組織風土を確立するとともに、人財戦略も刷新し、グローバルトップクラスの人財輩出に向けスピードを上げていきます。
社員一人ひとりがアンメットメディカルニーズ*7に対応すべく、患者さんのための革新を続けること。それこそが、各ステークホルダーに高い満足を提供し、積極的に支持される信頼性の高い企業、すなわち、中外製薬が目指す「トップ製薬企業」です。
私たちはイノベーションを原動力として世界の患者さんに貢献することで、企業価値を向上してまいります。株主・投資家の皆さまにおかれましては、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

*1  重篤または致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審査を促進することを目的に、2012年7月に米国食品医薬品局(FDA)にて導入された制度
*2  米国タフツ大学の調査では、開発の成功確率を踏まえると、1品目の医薬品開発に約3,000億円の投資が必要と見込まれている
*3  研究段階で構想した薬効がヒトでも有効性を持つことを実証すること(Proof of Concept)。early PoCは「限られた例数で、安全性に加え、有効性の兆候または薬理作用が確認されること」を意味する
*4  個々の患者さんの分子・遺伝子情報に応じて治療計画を立案・実行する治療法
*5  既存技術による従来の市場を破壊し、人々の生活や経済などに大きな変化と今までにない価値をもたらす新たな技術
*6  大阪大学免疫学フロンティア研究センター
*7  いまだ有効な治療方法がなく、十分に満たされていない医療ニーズ

代表取締役会長 最高経営責任者(CEO)

永山 治